裏組織
世界は数多くの権力者たちによって支配されていた時代があった。
彼らは共に手を取り、国際連合なるものを設立させ、世界と人々を管理し、支えて来た。
だが、その絆と団結力も時代が流れるにつれて失われていくこととなる。
国際連合設立から百年後。多くの国々は頭を悩ませる事態が起きていた。政治家たちの腐敗。国家主席たちの恣意活動。世界各地の国々が彼らの行いに振り回され、衰退と混迷に陥っていくこととなった。
この事態に対し、国際連合は何も動かない。当然そうであろう。何故なら、私利私欲にまみれた彼らこそが、この国際連合の指揮者たちの大部分を占めているからである。
人の勝手気ままな行いに、世界が堕ちていく。これに嘆き悲しんだ者たちがいた。彼らは言語も文化も社会も違いながらも、今の世界を変えなければならないという使命のものに結集する。
王明令という朝鮮人女性をリーダーとして結成した彼女たちは、道中で人々の手を取り仲間に引き入れて行き、ついには三千万を超える大軍勢へとその姿を変えていった。
力を付け、寄る辺を手に入れた彼女たちはついに堕落した国際連合を打ち倒し、再び平穏なる時代を獲得することに成功する。
国際連合を滅ぼした王たちは、これ以降の歴史的事実には登場することはなく、表舞台から姿を消して伝説として名を残す事となった。
しかし、それは王たちによる謀。彼女たちは表舞台から姿を消してだけであり、その後の世界状況に貢献して来なかったわけではない。
英雄とまでなってしまった自分たちが、公けに世界を動かす事となれば、それをよしとせず、自分たちを恐れるあまりに殺しに掛る者たちがいずれ現れる。それではまた堕落した時代が訪れる事となってしまう。
彼女たちは、自分たちの身の安全。そして世界の安寧を少しでも長く保つために公けの舞台を降り、裏方に回る事で世界を指示する道を選んだ。
王たちは、自分たちを裏組織と名乗り、公けに活躍する政治家や大統領などの国のトップ、そんな彼らを影で支え、動かしている組織たち全てを取り囲む存在へと姿を変える。実質の最高権力者となったのだ。
あれから二百年余りの時が経った。現在の裏組織は六つへと分割しており、州や大陸ごとに自身たちの所轄する国々を守っている。王たちのように一つの組織によって管轄される事はなくなったが、彼女たちの存在は今なお大きく存在しており、位となって形を変えていた。
極位。裏組織たちはそのくらいに座する者たちの下で己が国々を守っている。彼らが争わず互いの均衡を保つに至るのは、極位の存在が抑止力となっているため。権力を無闇に振るわないのは、後の報復を恐れるが故なのだ。
その極位の座に現在いる者は二人。彼らは朝鮮で起きた事件に薄気味悪いものを感じ取った。そこで、自身の傘下の青年――桔ヶ也一刀に、この事件を調べさせて解決する任を命じる。
一刀はこの任に頷くと、すぐさま朝鮮へ出兵。友人であり、共に二極傘下である漆原彰と自身を兄として慕う王輝も彼について来ていた。
一刀は、先に入国させていたシャーレイに現在の状況を知らせるよう電信を送る。これに応じた彼女は、支度があると返し、一時間後に彼女が仮住まいとしていた家のすぐ近くの公園へ来るよう三人へ言った。
朝鮮で起きている不穏な事件。これが、後の大きな争乱へと発展することを、誰もわからないままでいた。