激動の勇者たち 第一話
どうしようかと迷いましたが、結局こちらに投稿しました。
「父さん……っうぅ」
「ファースト……もう寝なさい。疲れているでしょう?」
机に伏せって泣きじゃくる少女ファーストを母親であるリダが心配そうに見つめる。
しかし、ファーストは嗚咽を漏らしたまま動かない。
「いつまでも泣いていてもお父さんは戻らないのよ」
少し厳しい声で諭すが、リダの目元もまた赤く腫れている。
彼女とて大切な人を亡くしたのだから悲しくて当然なのだ。
それでもリダは全てを堪えてファーストの体を優しく包んだ。
「っ……お母さん」
「いつまでも泣いてはいられないことくらい……あなたもわかるでしょう? お父さんは私たちが悲しむことを望んではいないわ」
幼いファーストにとって残酷なことかも知れないが、今は父親の死を悔やんでいる場合ではない。
なぜならファースト自身に王室からお呼びがかかっているからだ。
ファーストの父レインはとても勇敢で歴代最強と言われた勇者だった。
だが、そのレインが数日前に魔王によって殺されてしまった。
亡骸はなく、捜索隊によって遺品として発見された黒焦げの剣と盾、そして小さな魔法石のようなものだけが彼の死を裏付ける僅かな証拠であった。
多くの人々が彼の死を嘆き、そして焦燥した。
彼が健在していた時でさえも魔王の兵隊たちによる甚大な被害があったのだ。
最後の砦であった彼が亡き今、希望はその娘であるファーストに向けられた。
ファーストは、次代の勇者に選ばれたのだ。
「わ、私はっ勇者になんかっなりたくっないっ……!」
「わかってる。私だって貴女に勇者だなんて危険なモノになって欲しくない。でも、でもね?」
リダはファーストからスッと離れると涙をこらえながら力強く言った。
「あの人が命をかけて守ろうとした世界を、易々と魔王なんかに渡したくない。愛する人が最も愛していた世界を終わらせたくはないの」
「……」
一言で言えば、彼女の言葉は傲慢以外のなにものでもない。
しかし、ファーストはおさまらない嗚咽を押し込めてただ頷くだけだった。
「ごめんね。結局、私は娘であるあなたよりもあの人を選んでしまったの……最低な母親よね」
リダは唇を噛み締め俯く。
しかし、それと相対してファーストはゆっくりと口を開いた。
「……私も、お父さんみたいにお父さんが好きだった世界を守れるのかな」
「……っ!」
涙をぬぐい去り、不思議な色をした瞳で呟くファーストの姿にリダの眼からはとめどなく涙が溢れてきた。
その瞳は、顔は紛れもない最愛の人のものだった。
その少女、幼くとも勇者。
宿命付けられたその運命。
復讐という力を糧に、大切な人の思いを紡ぐために。
今、勇者ファーストの物語が幕をあける。
>>つづく
読んでいただき有り難うございます。
名前の由来は一作目だから。
どっかで訊いたことありますが気にしません。
お父さんがレイン(零)で娘がファースト(壱)。
なんとありきたりな。
さらに言えばドラクエⅢに似ているような。
まあ、初めはだいたい同じような始まりかたですよね。
勝負は2話からなのですよ。
その2話を書いていないんですが。