第三聖域 これがありふれた日常です
今は数学の授業だ。五階建ての校舎の三階に位置するこの教室。その窓際の席から窓の外の風景をぼーっと眺める。おそらく隣のクラスの女子だろう。このクソ暑い炎天下のなかブルマ姿の体操服で体操をしている風景。今時ブルマって…いやいや、グットチョイス!
ま、別にブルマ姿の女の子を見ていたつもりはない。ただ、少し考え事をしていた。
そう、昨日出会った亜麻色の髪をした無愛想な天使のことを。
昨日突如俺のもとへ落ちてきた天使。いや、追われてるとか言ってたよな。
しかし、気になるのは何故魔族がウラノスを付け狙うのかってことだ。そもそも魔族なんて本当にいるのかどうかも不明だ。ま、現にここには一人いるけど、俺は俺以外の魔族を見たことがない。それに天魔ってなんだろう? (天の使い魔―――略して天魔なのだろうか?)
そんなことは置いといて、その天魔という魔族結社? の連中はどうしてウラノスを付け狙うのだろうか?
昨日ウラノスが言っていた言葉が脳裏に浮かんできた。
『私は――――世界を滅ぼす力を持っている』
…………一体何のことだ?
正直俺は全然全くこれっぽっちも信じちゃいない。だが、もし仮にそうだとしてそのウラノスが持つ力が狙われる原因なのだろうか?
ウラノスは今、この瞬間も逃げ続けているのだろうか?
考えても考えても俺の頭の中には、『?』マークしか浮かんでこなかった。
あいつ……今何してるのかな。
「先生~」
先生を呼ぶ誰かの甘ったるい声が聞こえる。
「神木リオ君が女子のブルマ姿に夢中になってま~す」
「な……………ッ!」
そのふざけた言動に俺の体はびくっと反応する。
そしてその声の主は、俺の右斜め後ろに座っているバカ女のものだ。
クラスの連中の視線が一気に俺の方に向き。教師は、やれやれと言った表情を浮かべ頭を抱えていた。
恥ずかしさからか、顔が赤くなる。
「み、見てねーよ! バカ! 何誤解を招くようなことを言ってんだ! 零奈!」
言い訳も虚しく、クラスのバカどもの意識は、俺に注目している。
うげ……なんだよ。この変なものを見るような目は! 何を勘違いしているんだこいつら。
クラスのバカどもは俺を煽るようにからかった感じでゴソゴソと何かを言っている。
零奈はというとツインテールに結われた薄いピンクの髪を小刻みに揺らしながらクスクスと笑っている。
思わず俺は自分の拳を怒りを込めて握った。
この野郎が………
御伽零奈―――自称学園のアイドルと言っている俺のクラスメイト。その容姿、スタイル、アニメみたいな甘い声、そしてデカい胸。このことからして男子にはかなり人気があるらしい。
今年のクラス替えで同じクラスになったのだが、何かと俺にちょっかいを出しては楽しんでいる。かなりいけすかねえ女だ。
そして前髪に着いているコウモリの形をしたヘアピンからわかるように小悪魔的な奴だ。
「はいはい。みんな静かに!」
先生の声によって騒ぎが落ち着く。先生…ナイスアシストです。
「授業を再開するわよ! それと神木ちゃんも女の子に見惚れる気持ちは分かるけど、授業はちゃんと受けて頂戴。いいわね」
「は、はい…」
先生…誤解ですってば~
俺は半泣きの状態で渋々席に着いた。