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《8》 爆弾投下

「あ゛ー、疲れたー」



「温かいお茶をお持ちします」


「ありがと。はー、恋敵なら相手が巫女でも突っかかってくるのね」


「恋は盲目。と申しますが、あれはあまりに無礼でございましたね」


「ホントよ、関係ない他人を巻き込むなって感じよ」


「いえ…関係なくはないとは思いますが」


「ないの。私は、こっちでは彼氏作るつもりないの」


「巫女様…」


「今の内緒ね」



そう、私は元の世界に帰るの。

ここで、変に情の通った相手なんて作ったら帰るとき大変じゃん?

だから…誰も好きにならない。



「ヴィアレッタの件、聞いた」


食後、自室でお茶していると陛下が突然やってきてこう言った。

この国の人たちは、他人のプライベートに配慮とかそういうのないわけ!?

っていうか、おでこに口付けないでよ!!


「そうですか。では、私を神殿に住まわせてください」


「許可しない。」


「何でですか!?これ以上そちらの都合で私を巻き込まないでくださいよ!」


「だが、お前が俺の前から離れるのだけは許さん。

ヴィアレッタには、二度と登城しないよう侯爵にも厳命しておいた」


「そう…それなら安心しました」


「後、来週国王主催のパーティを開く。お前も参加しろ」


「嫌です」


「皆がお前を見たいといっている」


「見世物じゃないです。嫌です」


「国内の貴族達に巫女を見せなければならないんだ。これは、命令だ」


「嫌ですって、んもー、陛下!!」


なんで、命令して去っていくのよ!!

そして、3日後には見事なドレスと小物一式が届くし。

もう!嫌なんだってば!!


そして、パーティ当日。


「お迎えに上がりました。巫女様、とてもお綺麗です」


「ア、アリガトウゴザイマス」


……何で、宰相来たし。


本当は着るつもりなかったんだけど、2時間前に大挙して侍女軍団が

押し寄せて拒絶の声を軽くスルーして手馴れた動作で着替えさせるし。

この人たちが男に生まれ変わったら、

とんでもなく女に慣れたタラシになりそうで怖いわ。脱がすの慣れすぎ。


次は、女か別の生き物に転生しなさいね。


「宰相殿は、お忙しいのではないのですか?」


「いいえ、今日の仕事の中で一番大切な仕事ですよ、巫女様」


「女を、エスコートするだけの仕事がですか?」


「ただの女性ではありません。陛下のご寵愛を一身に受けた大切な女性です」


………どの辺が“ご寵愛”でした?


「陛下も大切にしすぎて少々空回り気味ですからね。

わかりづらいですね。では、参りましょうか、陛下に嫉妬されに」


「余計な波乱起こすのやめてください」


「あはは!冗談です。

しかし、嫌がられず寄り添って歩いてくださるのだから、

陛下が勘違いされたりして。そうなったら、大変だな~」


本当、マジ勘弁。

宰相は、優しい童顔の長身眼鏡さんなんだけど、

常識人で奔放な陛下に冷静に突っ込むけど、たまにこんなお茶目(?)な事を言う。

でも、余計な騒動起こさないで。あの方本当に面倒なんだから。


宰相は私の歩調に合わせながら廊下をゆっくり歩き、色々話してくれた。


「陛下は、本当に貴女に夢中で

頼られたい、甘えられたい、願いをかなえてあげたいと思っているんですよ」


「えー、神殿に住みたいって言ったら即拒否されました」


「当たり前ですよ。四六時中貴女のお顔を眺めていたいのに

手放す馬鹿はおりません。あれでも、かなり必死なんです。

色々酌んでやってくださいませ」


「えー。そのせいで私が色々巻き込まれるのはゴメンです」


「誠に申し訳ございませんでした。ヴィアレッタ嬢の事を仰ってるんですね。

私どもも、あまり人を近づけないようにしているのですが

彼女の父親がこの国の重鎮でしてね。断れなく通してしまったようです」


「重鎮だからって、他人を傷つけていい理由にはなりませんよね」


「ごもっともです。もっとも陛下が彼女とその家に処罰してくださったので

もう、ヴィアレッタ嬢に会うこともないでしょうが。

他にも現れるかもしれません。今後そのことがないよう注意いたします」


「お願いします」


会場に着くと、名前を呼ばれる。

教室で名前を呼ばれるというより、卒業式に名前を呼ばれる感じ。

中に入ると、



卒業式よりまぶしさがハンパないんですけどぉぉぉぉぉ!?



みんな、男も女も色とりどりの服を着て女性は当然ごとく宝石や刺繍で

光を乱反射させているので、ミラーボール大量投下状態。

視力落ちたら、コイツらのせいだ。


「ケイト、こちらへ」


つーか、何で壇上へ上がらなくちゃいけないの!目立つじゃない。


「巫女様、どうぞ」


宰相に、階段下まで連行されたよぅ。

渋々上ると、陛下が立ち上がり私の腰に手を添えてこめかみに口付けて(ぎゃー!)

壇上前の端まで連れて行く。ちょっと、何するつもり!?

とりあえず、腰に手を回したまま歩かないでっ、離しなさいよ!


「皆の者、よく参った。

この少女が第61代 月光の巫女ケイトだ。

このケイトが、わが国の平和と安寧をもたらしてくれるであろう。


ケイト、皆に挨拶してくれるか」


「はい…うー、緊張するよぅ。

み、皆様初めまして。このたび召喚されましたケイトと申します。

国民が安心して暮らせる気候になるよう、女神サラフィーナ様に

お祈りしていきたいと思います。よろしくお願いします。…これでいい?」


なんだか、初歩的な大人の挨拶もできない(私、まだ高校生なりたてだからね!?)

ことに大きく不安を感じ、隣で悠然と立つ陛下に小声で聞いた。

陛下は、この程度なら大丈夫だろう。という意味なのか軽く頷いた。

これで帰ってよくね?私。階段下をチラチラ見ていたら、

陛下ぁ!肩を抱かないでよ!!




「そして皆に報告したいことがある。このケイトを王妃とすることにした」




はぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!?



どよめきを耳にしつつ、私はこの世界に来た以上に混乱した。

はぁ?私を王妃!!?正気ですか?気は確かか、陛下。


「お、お待ちください陛下。

お見かけした所、巫女様も大変戸惑っておいでのようですが、

巫女様は了承されたのでしょうか」


階段下をみると、大貴族そうな仰々しい格好のおじさんが

体を折り曲げ、礼を取りながら陛下に訴えていた。

そうよ!!私何も聞いてないわ。っていうかそんなんだったら参加してないわよ!


「巫女には、今教えた。だが、そういう心積もりで接するから

ケイトも、お前達もそのつもりで。という意味で宣言した」


「勝手に決めないでください!私は、陛下と結婚するつもりはありません。

ってお伝えしたはずです。それを、勝手に決めるなんてなんて暴君なの!?」


「お前のことは、離すつもりはないと伝えたはずだ」


「それが、いきなり王妃なんて話し飛びすぎでしょう!?

私は、この国の気候を安定させて国民全体が安心して農業などに勤しめるよう

神のお力を借りるために、連れてこられたんでしょう?

王妃になるために来たんじゃないわ!」


「落着け、ケイト」


「落ち着けるわけないでしょ、勝手に人の将来決めるなんて!!」



「陛下、あまりに唐突過ぎます!巫女様も落ち着かれませ」



もうちょっとで、陛下と巫女による取っ組み合いの喧嘩が始まろうしたところで、

宰相が、慌てて入ってきた。


「陛下、独断専行過ぎます。結婚とは陛下だけでなくお相手である

巫女様の問題でもあるのですよ。それを、巫女様に相談なく勝手に

決められるなどと…巫女様に対する配慮がなさ過ぎます。

巫女様を御覧なさい、陛下を見る瞳を」


「…………。」


「ましてや、陛下の御成婚は両院の了承が必要なのですよ。

それを無視して決定されるなど、議会を混乱させるおつもりですか!?」


いつも、うすく重いオーラで怒ってる(主に政務をサボる陛下に)

宰相が、顔を赤くして激しく怒っている。

とりあえず、この件は保留(私は廃案にして欲しかったのに陛下が…)

にして、私は部屋に帰ることにした。

こんなムカムカしたままここにいたくないもん。


行きはなし崩し的に渋々といった顔で行ったのに、

帰ってきたときはプリプリ顔で怒って帰ってきたのでスイリが心配したけど

申し訳ないけど、口に出すのもむかつくので無視した。

その辺の人に聞いて。



もぅ、イヤあんな身勝手国王!!

やっちゃいました、陛下(笑)


あまりに思い通りにならないので、陛下ヤッちゃいました。

折角、安定した天候で国民の生活を安定したものにしようと召喚されたのに

その国の国王が、国の天候を荒らしています

(実際荒らしているのは巫女。しかし、原因は国王)


宰相がいなかったら、今頃既成事実作られているんです。怖っ。

巫女の安全を護っているのは、国王でも警護兵でもなく宰相なのかもしれませんね。

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