《6》 世界のケンカ
戦争や紛争の関心の薄さはケイト個人のもので若者全体がそうだとは思いません。
この回で不快に思われたら、スミマセン。
あの怒涛の2日から早2週間。
ここから程なくの国で、不穏な動きがあるとかで
陛下のお姿を見ていなかった。外国は不穏でも、私は平穏だわー。
不謹慎か、すみません。
まだ、城下町に行ったことがないのでわからないけど
城内の人間の動きで、世情の一端を窺い知る事が出来た。
ここと、隣接国家は大丈夫だけど隣国の同盟国がどうやら突入するようで
戦争には参加しないけど、難民や脱走兵など衛生や治安の問題が懸念されるので
非参加国と連携して、難民の対応にあたるみたい。
戦争、か…
日本が戦争をしなくなって、70年近く。
私が生まれた時には、映像か歴史書の中での話し状態で、
人づての体験談は、物語のような他人事に考えていた。
戦争は、人の業と業とのぶつかり合い。殺し合い。
知らなかった、他人事のように聞いていた辛い体験を
私がお世話になっているこの世界の誰かが、特に女子供が体験するのだ。
テレビで起こる紛争は、金持ち・権力者の強欲な衝突から
宗教を絡ませて複雑に絡み合った憎しみの連鎖による殺し合いで
力のない私には、ただ早く終わるよう祈るしか出来なかったけど、
今回は、私は神の力を借りて天候を左右できる。
その力が、何処まで及ぶのか判らないけどもしかしたら他国にまで
力が発動できるかもしれない。
戦争は、金持ちのボードゲームじゃないんだから!!
「ねぇ、チェランド」
「…はい」
チェランドは、滅多にしゃべらない人。了承なんかは頷きで済ませてしまう。
ちょっと、物騒なことを聞きたかったので、中庭の見晴らしのいいところまで
彼一人を連れて行った。スイリは、ちょっと遠くで待機。
見回せる場所なので、誰かが来たらすぐわかるし。
「あのね、少し聞きたいんだけど
この世界ってどんな武器使ってるの?魔法は使うの?」
「…何故そのようなことをお聞きになるのか、お尋ねしてもよろしいですか?」
うぉっ!出会って2週間の間に聞いた台詞より多いかも!
低音重厚で耳に響く声。由梨が「耳が孕むわぁ!!」とか言ってた声かしら。
ヤバイ。全身ぞわぞわするかも。
「あの…」
「何をしている」
地を這う重く低く邪悪な声がしますっっ!!!
後ろを振り返…近い!!近い近いから!!
陛下が、私の腰に腕を回して何故かチェランドを睨んでいる。
見晴らしのいい場所なのに、何で気づかなかったんだ!
あれか?忍者みたいに気配が消せる的な話か!?
いっつも存在感たっぷりのブリザード吹かせてるのに、
あれ出し入れ自由なんか!?しまった。その辺気付かなかったぁ。
「何をしていた」
「巫女様から、お聞きしたいことがあるとこちらに呼ばれました」
「ケイト、何をしていた」
「チェランドに聞きたいことがあって、ここまでついてきてもらったんです」
「聞きたいこと?スイリにも俺にも聞かせられないことか?」
「…、陛下は今まで、今でもお忙しいでしょうが!
スイリは、…聞きたいことが軍事的な話なので聞いてもしょうがないかなと。
なるべく聞く人を少なくしたかったんです」
「何故だ」
というか、一つ一つ聞くたびに顔近づけるのやめてくれない!?
と、顔を手で押しのけると陛下の機嫌がさらに急降下に。怖いから!
「変に誤解を招きたくないからです。
単に興味もあって聞きたいのに、余計な推測立てられるの困るんです。
っていうか、顔近いから!…あ、すみません。顔近いです」
「俺は、もっとお前を見たい。それで?聞きたいことは?
これぐらいの近さなら小声でも聞こえるぞ。ところで、チェランド」
「は」
「いつまで、そこにいるつもりだ。警護に戻れ」
えぇぇぇぇぇ!!!だめだよ、変態と2人きりにしないでぇぇぇぇぇぇぇ!!
チェランド、臣下の礼をして立ち去らないでよぉぉぉぉぉぉぉぉ。
「…で?」
いーーーーーーーーーやーーーーーーーーーぁぁぁぁぁ!!
耳元でしゃべらないでよ!!くすぐったいじゃん!
顔押しのけようとしたら、手首つかまれるし!!
ぎゃああああああ、耳元で笑わないでぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!
「いやっ、いや!離れなきゃ事情しゃべらないから!
離れなさいよぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!」
ゴロゴロゴロゴロ…
「ひっ」
「ほら、しゃべろ。俺には言えないことか?」
「も、もぅ!この世界の攻撃アイテムは何か聞こうとしたの」(小声)
「何故そんなことを聞く」
「…銃やバズーカ、重火器系なら雨降らせば紛争終結に有効になるから」(小声)
「!?」
「戦争は、嫌です。私の住んでいた日本は戦争しなくなってから
ずいぶん経ちますが、映像記録で戦争の悲惨さを見てきたつもりです。
どんなに大義名分があっても、一番被害に遭うのは女子供です。
子供のころ体験した話を涙ながらに話す老人も見ました。
戦争の悲劇は、大人になっても…死ぬまでつづくんです。
私の居た国では、私はただの一世界の中の一人で何も出来なかった。
でも、今は違う。何かできることがあるんじゃないかって、思って…(小声)
えっ!?」
おお、大きな体にすっぽりはまりました。抱きしめられています。
鍛え抜かれた陛下のお体は、硬く熱くびくともしない。そして、いい匂い。
妙に安心してしまった、私は寄りかかってしまった。
ナニシテイルンダ、ワタシ。
という答えが出るまで約十秒。何しているんだぁぁぁぁぁ!?
「お前の想いは、わかった。
だが、お前は何をする必要もない。これは、俺の仕事だ」
「でも…」
何もするなといわれでも。何かできるなら何かしたい。
「国王という、職人技をお前は見ていろ」
「はい…」
“国王”が、職人職なのかは知らないけれど私は陛下を見ることにした。
この国は、巫女を保護する国で国の規模は中規模です。
ですが、国として成り立っている以上世界に存在する国家としての責任を
果たさなくてはいけません。フラフラ巫女をストーキングしている陛下も
一応国王なので(私が一番不敬)世界に異変が起これば仕事が忙しくなりますね。
戦争・紛争・暴動などなくなればいいのに。
と思うのですが、中々なくなりませんね。
ただ不満が破裂したのではなく、その感情を利用して裏から操る勢力のせいで
いつも何処でも複雑化するのかなと思っています。
争いは、キライです。…とか言いながら次争いますハハ。