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《5》 散歩と競争

ちょっとしたテーマパークですよ、お姉さん(誰に言った)



生垣であらゆる所を囲ってあるけど、囲いすぎて出口が見つからない!

腰丈だから、奥まで見渡せるけどどのルートを通ったら戻れるのだろう。

まぁ、迷ったら2人に聞けばいい話なんだけど。


花一面に咲いていて、広大過ぎて一日じゃ見きれないわ。

毎日の日課にしようかな、ここの散歩。


「花が綺麗ね。こういうところでお茶できたらいいなぁ」


「今日の午後は、そうなさいますか?」


「いいの!?」


「もちろんでございます。何かお好みのものはございますか?」


「好みって…昨日来たばかりでわからないから。

だったね、代表的なお菓子をいくつか作ってもらえないかな。

お菓子のことを教えてもらいながら食べてみたいし…」


「畏まりました。料理長にはそのように伝えておきます」


「飲み物もいくつか知りたいなぁ」


「はい。」



「失礼いたします。巫女姫様でいらっしゃいますか?」



艶のある声で呼ばれたのでそっちの方を見ると、

おおぅ、異世界ものの定番グラマー美女。

ウェーブブロンドヘアに、真っ白い肌と大きくまつげががっつりカールして

ローズレッドのぷっくり唇に、豪奢な宝石たち。

極めつけは、口紅と同じ色の真っ赤なドレス、

V字カットに開いた胸元がセクシー!って、解説がなんかオッサン。

そして、取り巻きもなんかスパンコールのようにまぶしい。


「はい。柿原恵子と申します。昨日召喚されてきました」


「私は、ヴィアレッタ・ラトバリアス。

ゲジン侯爵の娘で、国王陛下の正妃候補筆頭ですの」


「ほー。正妃になる人は、すごい美貌の持ち主って本当なんですね」


私の世界での二次元話だけどさ。そして、決まって性格が…ゲフンゲフン。


「お褒めに預かり光栄ですわ。

巫女姫様は、陛下ととても仲睦まじくしていらっしゃるとお聞きしましたが、

本当のところはどうなのでしょう」


ほぅ、情報収集とその目は牽制ですね?レディ。


「全ッ然。どなたにお聞きになったか存知ませんが、

私と陛下は、ただの国王陛下と巫女。ただそれだけの関係です。

陛下となんてマジ勘弁です」


いや、あんな面倒な立場の面倒な男と仲がいいとか何の拷問だ。

どちらかというと、宰相や後ろの警護長のような裏方に徹する男がいいな。

一心不乱に仕事に励む、縁の下のなんとやらだよ。


「ホホホホ…そんなにはっきり否定されては陛下がおかわいそうですわ」


「ふふふふ、内緒ですわよ。さすがにそれで不敬罪に問われるのも勘弁ですもの。

ヴィアレッタ様は、朝のお散歩ですか?」


「ヴィアレッタで結構ですわ。

こちらを巫女姫様がお通りになると聞いて会いに参りましたの」


「まぁ、それはありがとうございます。私もお逢いできて嬉しいですわ」


「ホホホホホホホ…」

「ふふふふふふふふふ」



「ケイトー!どこにいる!?あ、ケイトそこにいるのか!!」



ギャー!なんか聞こえるー!急いで逃げなくちゃっ!!


「では、ヴィアレッタさん。私はこれでっ」


「えっ!?あ、巫女姫様!?えっ、陛下?」


すたー、と逃げるものの、ちょっ!生垣ハードル越え卑怯!!

あっという間に陛下に抱き抱えられてしまった。


「何故逃げる」


「ハァハァ私は、まだ散策の途中です。邪魔しないでいただけません!?」


「ならば、俺も…」


「ハァ…私は、ゆっくりっ、一人で行きたいんです!

まだ探検していないのに、終了フラグ立てないでくださいよ!」


「フラグ?

一人というが侍女や兵士も居るだろう。そこに俺が加わっても何も問題…」


「あるに決まってます!

陛下が加わると護衛の数が半端なくなるんですよ!

ロープレパーティじゃなくて大名行列じゃんか、それー」


「ロープレ?ダイミョー…何?」


「もぅいい。今日はゆっくりさせてください。

せっかく美貌のヴィアレッタさんがいるんだから遊んでらしてください。では!」


陛下が、ヴィアレッタさんを見ようとするのを確認して全速力ダッシュ。

彼女が居てくれて助かったー。今度お礼言わなくちゃね。


庭を抜けると、厩舎。お馬さんがたくさん!臭いけど可愛いわね。

ブラッシングされて気持ちよさそうな顔に癒されるわ~。

なんて、きゃっきゃしてたら当然調教師・飼育師に気づかれて会釈された。


「黒髪ってよっぽど珍しいのね。なんか怯えられているかも」


「そんなことはございません。

黒髪は、月光の巫女様だけが持つ特別な御髪でございます。

皆は、伝承でしか知らない黒髪の女性が目の前にいらっしゃるので

少し驚いているだけですわ」


そっか、黒髪は私だけしかいないのか。日本ではそれが大半なんだけど。

黒髪で、皆と距離感感じるのはなんか嫌ね。


「あとは、どちらに向かわれますか」


「うーん、決めていないの。

何処に何があるのか知りたいって好奇心で動いてるだけなの。

鍛錬場か、鍛冶場とかあったら面白いな。

あー、でもお昼過ぎちゃうかなー。鍛冶場にしようかな」


「そうか。では、行くぞ」



はぁ!?



いつの間にか、私の後ろに陛下がいて行き先が決まると

私の手を取りそこに口付けるとか!!

あまりに自然な流れで拒否るの忘れたじゃないの!

振りほどこうと思っても握る力が増すだけだし~~!!


「っ、陛下!ヴィアレッタさんはどうしたの」


「用がないから帰らせたに決まっている。鍛冶場など面白みもないぞ」


「私はあるの。私は興味あるから陛下はお帰りください。

っていうか、国王の職務ってそんなに暇なわけ?」


だって、お話だと何日も寵妃(ヒロイン)に逢えないほど忙しいとか、

夜だけしか通えないとか多忙な王様の話しがたくさん出てくるのに。

なんて言ったら、すごく睨まれた。また、私を隠れ蓑にした気だ。

“来てすぐの巫女が心細そうでかわいそうだから”

的な感じで宰相を丸め込んだんだわ。チクショー。

利用されないためにも早く生活になれなくちゃ。


って考えていたら、肩を抱かれて1つの石造りの小屋に案内され…暑っ。

この熱気は間違いなく、刀を作るのに使う火の暑さだわ。

中では、作務衣みたいなのを来た男たちがトンカントンカンしていた。

そして、私たちに気づくと一瞬動きを止めみんなが挨拶してくれた。


だから、こっそり来たかったのに!作業邪魔してごめんなさい!!


「こんな単調な作業見て面白いのか?」


「面白いよ。私のいた国はね、ここと同じ農耕民族で手先も器用だから

産業も発展してて、この人たちみたいな職人さんがいーっぱいいたの。

日本刀っていうのがどんなものでも切れるすごい刀だって

世界で絶賛されていたのよ。物を作る仕事っていうのが好きだから

こういう作業は何日見ても飽きないんだ」


わずかな誤差までこだわり、細部にありえなく細かい技を仕込み、

妥協せず自分の信念をすべて注ぎ込んで作っていく人たち。

美しい仕上がりの品を作る人たちの顔はどんなイケメンよりもまぶしい。

だから、警察24時の次に職人ドキュメンタリーを見るのが好きだった。


「そうか…」


あれだけ騒がしかった陛下も、私の話を聞いて黙って作業を見ていた。

全身全霊をこめて刀1本が完成したころ、私はその部屋を出た。

やっぱ、職人さんの現場は独特の緊張感と人の熱気が伝わって興奮するわ。


「私は、一生懸命働く人の顔を見るのが好きなんです。

まだ、召喚された理由に納得いきませんが、

ああいう顔で皆さんが集中して仕事できるよう

安定した平和になるようお祈り頑張りますね」


「俺は、お前さえ居れば真面目に仕事するぞ」


「はぁ…。

では、私は陛下がしっかりお仕事してくれるようお祈りしなくてはですね」


「………。そこまで鈍いのか、この女。で?この後どうするんだ」


「これから、お昼ごはんの時間でしょ。

それから、神殿に寄った後お庭でお茶するんです」


「神殿には、さっきも行っただろうが」


「この国の歴史とか神話とか知りたいから、教えてもらおうと思って。

準備もあるだろうから明日か明後日位からでいいと言いに行くつもりなんですよ。

何にも知らないのもどうかと思うし、ここの文字読めないみたいなんですよね」


「なるほどな。案外真面目なんだな」


「案外は、余計ですっ。

そうそう!陛下、私の部屋神殿に移っちゃいけないんですか?」


「ダメだ」


「なんでですか!私は、神殿に仕える巫女なんでしょう?

だいたい、朝食前にお祈りするんですよ?

今の部屋から神殿までどれくらいの距離があると思ってるんですか!

それに、食事するたびに王城のホールに戻るの大変だから、神殿に住まわせて!」


「ダメだ。」


「だから、なんでですか!説明してくださいよ!」


「王城の部屋があまり使われてなくて寂しいだろうが」


「知りませんよ。なら、お妃様を娶ればいいでしょうが。

綺麗なお嫁さんと、可愛いお子様がたくさんいればそんなこと思わなくなります!

スイリ、私何処で食べるの。部屋?相談しがてら神殿長と一…」


「俺と一緒に食べるに決まっているだろう」


「決まってません!

大体テーブルマナー習ってないから、ものすごく食事が緊張するんですってば!」


「そんなことを気にしていたのか。

ならば、明日から習うか。今日は皆大目に見てくれるだろ」


とか言いながら、私を担ぐなって!

スイリやチェランドに助けを求めたのに、苦笑するだけだった!

笑ってないで助けてよ!!


それから、昼食もなんとティータイムまで一緒とか!

陛下直々に教わって仲睦まじいですわね。とか陛下の侍女にも言われるし。

違うから!勘違いしないでくんない!?





もー!ヤメテェェェ!!

いつ仕事しているんだと聴きたくなるような陛下の行動。

うん、夜にはしています。夜は巫女によって拒まれて時間はありますからね。

そして、生垣をハードルのように越えて早くたどり着きたいほど

陛下は巫女に夢中。巫女は陛下に恐怖した(笑)


そんな噂を聞きつけて、正妃候補のヴィアレッタ嬢登場。

ここには側室制度ありません。その上巫女を俗物貴族から護るため

プライベートエリア(今いた庭園がそれ。厩舎や鍛冶場は外)は

立ち入り禁止なので、あまりに大切にされている巫女の存在に

候補者は必死なのでしょう。

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