《4》 巫女様の職場見学
というわけで、ロラと私と陛下が神殿へ向かった。
そこで、何故だかすべて脱がされ冷たい水で身を清められ
また1から着なおすというものすごく面倒くさい作業をさせられた。
清浄の間から出ると、陛下と神官さんが待っていて
神官さんの案内で神殿奥へ。重厚な扉の奥からは、
陛下と2人きりで行くことになり奥へと進んでいくと
美しい白亜の像が建っていた。
「これが、女神サラフィーナ様?」
7-8メートルはあるであろう女性の白い像は、
慈愛に満ちた微笑を浮かべ、流れるようにうねる長い髪を腕に絡ませながら
右手に葉のついた枝?あ、実がついてる。左手には器を持っている。
ギリシャ神話に出てくるような古代人が着るような服を着ている。
これが、女神サラフィーナ様。私がお仕えする方?
「そうだ、我々農耕民族トイルシュ人を御守りくださる方だ。
で、お祈りの仕方だが、男女とも両ひざをついて、手を肩幅ぐらいに広げながら
上にあげて、女神の胸元くらいまで上げたら手を握り合わせ
自分の胸元まで持っていく。という感じだ」
えぇ…覚えきらないよ。
手、を、上に広げてあげて…結んで胸元に……
ヤバイ、童謡を思い出して笑えてくる。
結んでもいいけど、手を打っちゃダメ!!
危うく静寂な空間で大きく手を叩きそうだったよ!あぶねー。
なんて思っていたら、陛下もお祈りをしていた。
私は、この女神様のお力を借りるのよね。
(女神様、この土地が安全で豊かになりますように)
というのがお仕事なのでお仕事用の祈りを。そして、
(いつか、私が元の世界に帰れますように)
私の願いも、勤務中に私的用件だけど願わずには居られない。
どうか、心配している両親とお兄ちゃんの元に帰れます様に。
“いくつまで”っていう回数制限がないから勝手に祈らせてもらおう。
帰りたいよ、平凡だけど温かい…私の場所。
「ケイトは、何を祈った?」
「この国の平穏を…」
ウソは言っていない。プラス何かがあるだけだけど。
「………、そうか。では、帰るぞ」
そう言って、陛下が帰ろうとなさるので私もついていった。
出口には、ロラさんと50代くらいのおじさんが居て
この人が神殿長ルトワンです。と紹介された。巫女“様”ってくらいだから
へりくだってお辞儀するのはいけないかなと、スカートをつまんでかがんで
アニメでしか見たことない欧州風の会釈をした。これでいいのかな?
別室にて、神殿での仕事の内容説明があるとのことなんだけど…
「陛下、お仕事はいいのですか?」
「お前も、俺を馬車馬のように働かせようとしているのか?」
「私を、サボるための隠れ蓑にするのはやめてください。って言ってるんです」
なんっで、この人が一緒に居るのよ。
「俺が、一緒にいてはいけないのか?」
「というのを言い訳にしてサボる気でしょう。まったく。
私は、これから仕事の説明を受けるんです。“仕事”です。“しーごーと”
いいから、帰って陛下のお仕事をなさってください」
「いい、帰らん。神殿長、さっさと説明しろ」
「は、はい。巫女様のなさることは、ただ一つ。
神殿にて、女神サラフィーナ様にお祈りを捧げるだけです。
ですが、朝夕と一日に2回あるのと、お祈りの前に身を清めていただき
お祈りの言葉が少し長いので大変かとは思いますので、
今からこれらのことについて学んでいただきます」
「今から!?」
「ってなんで、陛下が驚かれるんですか?
それが召喚された理由なのだからしかたないでしょう。
それと、これから神殿長から講義を受ける予定なのでお戻りください。
ガンバッテクダサイネ、陛下」
「そこは、昨日みたいに可愛らしく言う所だろうが」
「えー、ヤダ。そういうのは、お妃様にやってもらってくださいよー」
「妃などおらん。他でやってもらうより、お前がいい」
「ほっほっほ。朝から、おアツイですな」
「!?陛下、奥さんいないんですか?
王様の世継ぎを作るのも責務の一つなんじゃないですか?」
「そうだ。だから、お前と作るか?」
「は?神を祀る神殿内で何たわけたこと言ってるんですか!?
私は、巫女ですよ、巫・女!巫女さんって純潔を護るんじゃないですか?」
「そんなことありませんよ。
歴史上の中には、月光の巫女様が当時の国王陛下とご結婚されて
その間にお子をなした人もいらっしゃいましたよ」
神殿長ぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!!!!!!!
もう、そういうことこの場面で言わないでよ!!
ほら、隣の変態がニヤニヤ私を見ているじゃない。
つーか、下心満載な目で私を見ないでよ!!
「わっ、私は、陛下のお嫁さんとして召喚されたのではありません。
女神様にこの国を何とかするよう呼ばれたのであって…たぶん。
だ、だから、陛下とそういう関係になるつもりはありません!!」
もー、なんでここに来てから恥ずかしい思いばかりするのー!?
「なんだと!?」
「お、お二人とも女神サラフィーナ様の御前です。
どうか、お気を静めてください」
神殿長と近衛隊長が、私らを押さえているところに宰相が来て
陛下を連行して行ったので、私にロラと神殿長(他に神官と私の侍女もいる)が、
一日の巫女としての仕事と、生活の注意事項を教わった。
朝、起きてすぐに神殿に向かいまずお祈り。(もちろんお清めしてから)
夜は、夕暮れ直前に朝と同じことをして一日が終わる。
日中が非常にヒマだということですね、わかります。
そして、立ち位置だけど国王のすぐ下、宰相の上というポジションで
さっきも聞いたけど、結婚はOK。恋愛も自由。だけど国王の許可が必要。
他国に住むことはNGで、出国の際も国王の許可が必要。
街へみだりに降りることも許されず、基本神殿内暮らし。
「…ということは、これからこちらで住むことになるんですか?」
「そのはずなのですが、
陛下が王城の1室を巫女様にあてると仰られたので
巫女様の居室は、今お過ごしになっている王城ということになります」
「は!?起きてここまで降りて、城に戻って食事とか
朝からハードな動きを強要されるんですか!?
巫女の居住は、神殿なんじゃないですか!?」
「ほっほっほ。巫女様のお怒りはごもっともですが、
たとえ“巫女様”といえど、国王陛下のご命令に従っていただくのが
大前提ですので、今回は陛下の許可が下りなければ無理ですな」
「あとは、お召し物ですが陛下が用意してくださったもので結構ですが
あまり、華美な色や飾りつけは好ましくない。とだけ申し上げておきます」
「それは、私があまり好きじゃないので大丈夫ですが。部屋が…」
「そればかりは、私どもではなんともなりませんので
陛下に直接進言なさってください。以上ですが何かご質問は」
「今のところ、何も思いつきません。何かあったら聞きに来ていいですか?」
「はい。いつでも、巫女様のご来訪をお待ちしております」
早くに終わっちゃったけど、ロラが城内を散策していいというから
(祈りの言葉は、明日実践しながら覚えていくということになった。
こっちの文字、読めないんだもの)
侍女のスイリと警護長のチェランドが同行してもらって散歩に行くことにした。
とりあえず、庭っぽい所へ探検しに行ってきます!
巫女様の職務内容と、生活注意事項の話でした。
一応、神に仕える女性なので慎ましやかに静かに暮らしましょう。
と、大まかに言えばそんな感じです。
ただ、現月光の巫女は寄ってくる男がアレなので、
“静かに”というのは無理な話でしょうね(笑)
陛下、面倒くさい上にウザいアピールです。
彼なりに真剣なんですが、完全に空回りですね(汗)
そして、私のお気に入りキャラ・チェランドが名前だけ登場!
活躍するのは数話後ですが、いい感じに不憫です(笑)