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006⇒下車

「いやああぁぁぁ」



女の人の顔が私の目の前に現れた。



「…ぅうう…もぅ…やだ…やだよおぉぉ〜」



私はバシバシと白い布を叩きまくった。

すると突然、その女の人の目が開いた。


「…え!?」



「…彼女は…まだ生きている…」


おじさんが言った。


「…いっ…生きてるよ…だって今、目を開けてるんだもん」


女の人は周りをキョロキョロと見渡していた。



「…お嬢ちゃん…悪いが車から降りてくれないか?

その彼女の白い布を持って行って構わないが…」


「…出るっ出るよ…だってこっちも怖いモン…車…停めて…」


私は女の人をゆっくりと押し、

何とか元の配置に戻した。

女の人は口をヒモで縛られ私に何かを訴えていた。


ブウゥゥゥゥゥーン



だが、車は一向に停まる気配がない。


「……?あの…おじさん…車…停めて…?」



「…はぁ…ははは…ははははは…」


いきなり笑い出すおじさん。


「…停めてよっ!」


「…はは…無理な話しだ…さっきも言ったろ?

こう見えても出血が激しいんだ…

すでに下半身はほとんどマヒ状態で動かないんだ…

ブレーキを踏む事が出来ない……」


「…じゃあどうやって…私は降りるの?」



「ドアを開けて道路に飛び込め。

こうなる事を予想して車の少ない港に来たんだ。

飛び込んでも後ろから車が来たりしないから

怪我は少ないはず…」


私は窓の外を見た。

暗くてよく見えないが、

確かに海らしきモノが奥に見える。


「元々二人で死ぬ気だったんだ…

だから俺達の事は心配するな…

はあっ…はあっ…やばい意識が遠退いて来た

…はぁ…はぁ…」



ブゥゥゥゥゥーン



私は女の人を見た。

目から涙を流し、私に助けを求めていた。


…だけど私にどうしろと?


私は女の人に包まれている布を全部剥ぎ取った。

案の上、体もロープで縛られている。

解こうと試みたがきつく縛られ子供の私には無理だった。



「お嬢ちゃん…はぁ…はあ…

そろそろ降りて貰わないと…

この車はあと少しで海へドボン…だ…

はぁ…はぁ…はぁ…」



ブゥゥゥゥゥゥーン



前方を見ると道が奥で途切れてるのが見える。

私は焦った。


「おじさん!お願いだから車を停めて!停めてよ!」


「…はぁ〜…はぁ〜…はぁ〜…はぁ〜

…む…り……む…り……はぁ〜…は……」



ハンドルを握ってるおじさんの手がガクッと膝に落ちた。

私はすぐに女の人に向きを変え、


「おじさん…死んじゃった…どぉしよう…どうしよう…」


ブウウゥゥゥゥーン



女の人は首を斜めに振って目はドアを見ていた。


「…このまま…車から…飛び降りるの…?」


その質問に勢いよく首を縦に振る。


ブウゥゥゥゥーン。



だんだんと海が近づいていく。


「わかった…ドアを開けて外に突き落とすから…」


私がそう言うと女の人は首を思いっきり縦に振った。


ガチャッ。



ブウゥゥゥゥーン。



「行くよ…」


女の人は何回も首を縦に振る。

私は少し呼吸をすると両手に力を入れた。


ドンッ。


女の人はゆっくりと倒れ込む様に

車のシートから離れて行った。



「………。」



ブウウゥゥゥゥーンッ



ドザアァッ



「……え?」



……ロープが続いてる。


私はシートの下にあるロープを視線で追うと

運転席へと続いていた。



「……これって…」


ブウゥゥゥゥゥーン



「…あっ」


もうほとんど目の前が海だった。

私はすかさずドアを開け、外へ飛び込んだ。



「………っっ!!」



ドッ。



ゴロン ゴロン

ゴロン ゴロン



「きゃああぁぁ」



ゴロン ゴロン ゴロン



グルグル回る視界が治まった瞬間、

今度は車が海へ落ちる音が聞こえた。



バッジャアァーン



「……っっ〜う…」



私はゆっくりと上半身を起こした。

裸である為、体中擦り傷だらけだった。



「…はぁ…はぁ」



私は周りを見渡す。

奥の方で女の人が転がってるのが目に入ったので、

私は立ち上がるとヨタヨタと女の人の元へ歩き出した。


「…はぁ…はぁ…」


ザッ…ザッ…ザッ


「…はっ…はっ…」


ザッ…ザッ…


「…あ…あの…おばさん……おばさん!」



私は女の人の肩を揺らした。


「おばさん!起きて!起きて!ねぇ!」


女の人は私の声に反応して目を開いた。


「…良かったぁ…生きてたんだぁ…」



女の人は首を縦に振った。

…−その瞬間、

女の人は凄い早さで海の方へ移動し始めた。


「……え?」



彼女に巻き付いたロープの一部が車に巻き付いていたからだ。


みるみると彼女は小さくなり

そしてあっという間に海へ引っ張られた。


ボシャン。


「おばさあぁぁん!」


私は海の方へ走り、下を見た。


「………。」



ゴボゴボと車からの空気の漏れる音と波の音しか聞こえない。女の人の姿はとっくになかった。



「………な……」


私は座り込む。


「…な…なんで…」



そしてまた涙が溢れ出す。


「…うぇ…うえぇぇぇん…もう…いやだあぁぁぁぁぁあ…あああああああんん…うわあぁぁぁぁぁん」


私はとにかく泣いた。

そして泣きながら歩いた。

夜の港は本当に暗くて寂しくて…

人ひとりも姿が見えないのだ。



それでも私はただただ泣いた。



「ぁぁぁぁぁぁぁぁん」



しばらく泣きながら歩いていると、

黒い大きな影の様なものが動いてるのが見えた。

私は人だと思い助けを求めながらその影へ向かって走り出した。



「あああぁぁぁぁぁぁん」


だが、近付くにつれ その黒い影が人間でない事に気付く。


「ぁぁぁ……あ?」



『…グルルル…』



それは大きな黒い野犬だった。

私に牙を向け、今にも襲いそうだった。


私はただ固まったまま動けなかった。




だんだん有り得ない展開ですな?

だから楽しい(笑)

次回ももっと有り得ません。

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