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005⇒乗車


キィィィィーッ



眩しい光と大きな音。

勿論、それは走って来た車だった。

私が思わず道路に飛び込み、

車は私を轢く寸前で停まってくれた。

私はただびっくりして固まって動けなかった。



「こらぁー!危ないだろーが!…って…え?」



運転手さんは全裸の私を見て目を丸くしていた。


「…どうした?」


車からおりて近づいて来る。


「……あ……」


私は裸だった事もあり、男の人に声をかけられるのが恐かった。そして背後からママがやって来た。


「はぁ…はぁ…アンタ何やってんの!ママと家に戻るのっ!」


「おじさん怖いっ!助けてっ!私殺されちゃう!」


私はとにかく苦手なこの男の人に助けてもらおうと甘えた。


「何だって!?本当なのか?」


私はただ首を縦に振った。


「違うんです!この子はオーバーに言ってるんです!

第一、私の子供ですよ?他人のあなたには関係ないでしょ?」


「おじさん助けて!私…ママに…ママに殺されるっ!」


私は必死に訴える。

だけどおじさんは困惑しているだけだった。


「もう…この子ったら…ワケのわからない事を…」


「本当だよ?私…今、連れ戻されたら殺されちゃう!」


おじさんはしばらく私の顔を見つめ、そして手を引っ張り車の助手席へ誘導した。

それを見たママが慌てる。


「ちょっとアンタっ!うちの子を何処に連れて行く気?

アンタのしてる事はりっぱな誘拐だよ?」


助手席のドアが開く。


「さっ…乗って…」


私は遠慮なくすぐに飛び乗った。


「ちょっとアンタ!」


ママが怒鳴るのを無視しておじさんは運転席に乗り込む。


ママは助手席の窓を叩き出した。


バンバンバンバン


「アンタうちの子をどうしようっての!?アンタも早く降りて来なさい!」


ママは凄い声で強く窓を叩いていた。

私は怖くなって後ろの席に逃げ込んだ。

そして車のエンジンが鳴る。


「ちょっとアンタ!本気で逃げる気?

ママとまさきを残して生きて行くの?

そんなのアンタの幸せじゃないよ…!

ここで死ぬのが私達の運命なんだよっ!」


バン!バン!バン!バン!バン!バン!


「…ママもうやめてえぇぇぇ…うわあぁぁぁん…」


バン!バン!バン!バン!バン!バン!


「泣いたって何も変わらないんだよ!

早く車から出て一緒に−…」


ブウゥゥゥゥゥゥーン


車は凄い早さで動き出した。

あっという間にママが小さくなって行く。

ママが走って追い掛けてるのが見えた。

私はただジッと見つめるしかなかった。

ただ泣くしか出来なかった。


「ぅああああ〜ん…うぅぅ…ひっく…えっく…」



「…もう大丈夫だから…泣かないで…」


「ぁぁぁあんんっ…ひっく…だって…」


私は左手で涙を拭いた。

すると妙な感覚があった手に赤いモノが付いてるのだ。


「…何だアレ…」


運転手のおじさんがそう言うので私は泣きながら前を見た。

道の向こうで立っていたのはあのお兄さんだった。


「…怖い…停めないで…」


「…え?」


運転手さんは不思議そうに私を見たが、すぐに


「−じゃあ殺そうか…」


…と言った。


「…え?」


と、今度は私が驚いてると、


ゴンッッ。



と音だけが聞こえ、目の前にいたお兄さんの姿は見えなくなった。



ブゥゥゥゥゥーン



車はブレーキをかける事なく進む。


「…今…の…あの…お兄さんを轢いたの?」


私は恐る恐る聞いて見た。

運転手さんは少しの間の後、


「…ははは…まさか…

車の停まる気配無いのを感じて逃げて行ったよ…」


「………そう…」



私は車の前の部分がヘコんでいるのに気が付いたが、あまり考えないようにした。

どっちにしろあの場から逃げたかったから…



ブウゥゥゥゥーン



「………。」



「−なあ、君のパパとママは仲良かったかい?」


突然の質問。

私は普通に答えた。


「仲悪かった。だから離婚したよ…」


「…そっか…」


私は手に付いてる赤いモノを思いだし、

ティッシュを探し始めた。


「…あの…すいません…ティッシュありますか?」


「−あるよ、はい。なんで?」


「…手に赤いモノが…」


「赤いもの?」



私はティッシュを一枚取り出すとゴシゴシと左手を拭いたが、

渇きかけていたのか中々落ちない。



「…ん?」



よく見たら、

私の隣には大きな白い布で覆われていた何かがあった。


「………。」



左手の赤いモノと隣の白い布。



……嫌な予感がする。



「…今日…妻と喧嘩したんだ…ほんと…些細な事で…」


突然に喋り出す運転手。

嫌なタイミングで…。


「…自分は割と冷静だったんだが…

妻が凄く怒っててね…

しまいにはキッチンから包丁を取り出して…

この私を刺したんだ…」


「……え!?」



「その左手の赤いモノは多分…

私の血だろう…

最初に抱き着いた時に付いたかもしれない…

ちょっと右側の脇腹を刺されたからね…

それに出血も激しくて…」



ブウゥゥゥゥーン。



「………。」



「…それで…おじさんの…おくさんは?」



「…キミの隣にいるだろ?」


「……っ!?」


私はその白いモノからすかさず離れ、窓際に寄った。



「…キミもずっと裸で寒いだろ…?その白い布を使うといい…」



「……えぇ?」



私は怖くて、白い布を取る事は出来ない。

だから無視して外側の景色を見てた。


ブウゥゥゥーン


キキッ


車が急カーブをした。



バサッ



隣の白い布が私に覆いかぶさって来た。


「きゃっ!」



私は払いのけようとするが、重みで中々戻らない。



「…やっ…やだ…」



手や足を使って乱暴に払ってると布の中から女の人の頭が出て来た。


「いやああぁぁぁぁっ」




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