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003⇒夕闇

「…お兄さん?」


「……くく…くくく…うひ…うひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃ…」


お兄さんは鼻水を垂らし、涙目で笑ってる。


けどさっきとは雰囲気が違う。


どこと無く…私を殴る前のママに似ている…。


私は息を殺し、更に後退りをした。



「あっ そうだ」


お兄さんはまたリュックをガサガサし始めた。


「…コレを忘れちゃ話しにならんなぁ〜」


そう言って鞄の中から大きなハサミを取り出した。



「……!?」



「コレはねぇ…植木バサミって言ってね。伸びた木の枝とかチョン切る道具なんだ…」


「…?…そう…」


私の身体は恐怖を感じ震え出して来た。




「コレはどうやって使うか知りたい?」


「…ううん…いい!」


「遠慮しなくていいよ」


「ううん!いいっ!」


「…なんで?」


「何でもいいからっ!」


「…まあ聞きなさいって…」


「ううん!絶対嫌だっ!!」


「こうやって使うんだよっっ!!」


お兄さんは私にハサミを突き出したその瞬間、

私は石に躓き、尻餅をついた。



バシャン!!


「きゃっ」


  ドスン。



 「………。」


「………。」



私は倒れた体勢で上を見上げた。

私達を電柱の上からのライトが照らし、お兄さんの顔は影になって見えなかった。

ただはっきりとハサミだけが光りを反射して眩しく見える。



「うひひひひひ…」


「やだぁ!」


私はすぐに立ち上がり走った。



「…待てっ!!」



私は走った。


相手は高校生らしいし、足の速さでは到底叶わない。


だけど走った。


必死に走った。



タッタッタッタッ


「は〜っは〜っ」


タッタッタッタッ


後ろを見るのも恐くて…


ただまっすぐ走った。


「足の速さでは勝てないよぉぉ。んふふふ…」



タッタッタッタッタッ



後ろから聞こえて来る足音がだんだん大きくなって来た。近づいて来てるのがわかる。


「はあっはあっ」



私は走りながら前方をよく見た。どうにかして逃げ切る事は出来ないのか…。



ガシャァァン



  「…え?」


後ろを振り返ると、お兄さんは横からやって来た自転車とぶつかっていた。


「…はあ…はあ…」



私はそのまま走って逃げた。



タッタッタッタッ



勿論、お兄さんはすぐに走りだしていた。

私はこの辺りの家並みは大体わかっているので、小さい身体を利用して人の家の敷地を通りながら家へと向かった。

だが、家まで走り切る持続力が続かないと判断した私はどこかへ隠れる事にした。


「はあっ…はあっ…どうしよう…はあっ…あっ…そうだ!」


私は人の家の間を通りながらある場所へと向かった。

そこは今朝行った大きな白い犬がいるおじいちゃんの家へ…。


タッタッタッタッタッ



「はあっ…はあっ」


裏から入ると警戒していたのか大きな白い犬こと『シロ』がいきなりやって来た。

だが、すぐに私と気付き尻尾フリフリしながら寄って来た。


「シッ〜静かに…動かないで…もっ…舐めないで…」


それでもおさまる事なく、私をど突き倒しそうな愛情表現。


「シッ〜お願いだから静かにしてて…」


タッタッタッタッタッ



奥から足音が聞こえて来た。


「……怖いっ!」



私はすぐに『シロ』の家へと逃げ込んだ。

大きな犬だから私も簡単に入れた。


「はあっ…は……」


そして息を必死に殺した。



タッタッタッタッタッ



足音は確実にこちらへ向かって来た。『シロ』も人の気配に警戒している。



タッタッ……タッ…



『ゥワン!ゥゥワァン!』



『シロ』の吠える声が聞こえた。



「…………。」



私の目には犬小屋の出口とその外側の芝生しか見えない。

『シロ』は少し離れた門のトコにいるはずだ。


『ワン!ゥワンッ!』



「………。」


『ワン!ゥワンッ!』


 「………。」



『キャウゥゥゥゥ〜ン』


 「………!?」



『シロ』の声が変わった。



『キャイィゥゥゥン…ゥゥィィィン……クゥ〜ン』




『シロ』の泣き声が暫く続くと、今度は逆に全く声が聞こえなくなった。


私はゆっくりと唾を飲み込んだ。

そしてずっと目は外側の芝生を見つめている。


「………。」



しばらく全く声も音も聞こえない。



お兄さんはどこかへ行ってしまったんだろうか?


その時である。



ボトッ。



何かが上から芝生に落ちて来たのだ。



「……!!」


私は両手で自分の口を塞いだ。

思わず声が洩れそうだったから…。

上から落ちて来たものは『シロ』の生首で、

綺麗に切られた後、

乱暴に投げられ、

落ちて来たのだ。


薄暗くてわかりにくいが…

『シロ』の目がこっちを見てる気がする。



「…っっ!!!」



そして次に、芝生にお兄さんの足が現れ、

生首を素手で掴み上げた。


「………!!」



「バカ犬め…」



お兄さんはそう言うと、『シロ』を私の隠れている犬小屋へと投げ込んだ。

『シロ』の顔が私の膝にゴロンと乗り、更に目が合ってしまった。


「−−!!」



私はすぐに目を閉じ、口を塞いでる腕を更に強くした。あまりの衝撃に泣き叫びそうだったからだ。



「…あの子はまだ近くにいるはずだ…ひっく…絶対…ひっく…絶対見つけてやる…!」


独り言を残して、お兄さんは何処かへ走って行った。


「……。」



「…………。」



 「……………。」



どれくらい時間が過ぎただろうか…もしかしたらまだ1分しか過ぎてないかも知れない。


暗闇と芝生と膝にある重みがだんだんリアルに感じ、私は膝からゴロンと落ちた『シロ』を踏みながら勢いよく芝生へ滑り込みをした。



「………ひぃぃ〜」



ズササッ。



「はぁ…はぁ…はぁ…」



私はすぐに立ち上がり、走りだしたが、何かに躓き、また倒れる。


  ドサッ。



「…はあっ…はあっ…」



そこには『シロ』の胴体が転がってた。



「…はあ…ひっ…ふぐ…ふぐえぇ…ひぇぇ…」



私の目から大量の涙が溢れて来た。



「…ふぐっ…んぇぇ…ひぇっく……」



どんなに我慢しても声が洩れる。

ただただ恐怖が体の底から溢れ出し、

体がそれに反応しているだけだった。


それでも私は真っ直ぐ家へと向かってた。

あんなに帰りたくない家でも体は自然と家を求めていた。


母親を求めていた。





何だかグロいね。

ぜひ、感想下さいな♪

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