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001⇒朝


夢を見た。


それがどんな夢か忘れちゃったけど、とても楽しかった。



だから覚めたくない。



ずっと夢の中にいたい。


けど…起こされた。

ってより、何故か自然に目が覚めた。


目を開けるとママがジッとこっちを見ていた。


「……ママ?」


「…おはよう。学校の時間よ…あそこにパンとミルクがあるわ…」


「…う・うん。」


私が身体を起こすと、ママは少し離れたトコに寝てる弟の『マサキ』のトコへ行った。

マサキは生まれつき喘息でよく発作を起こしていた。

どうやらゆうべも発作を起こしていたようだ。ママの顔を見ればわかる。

疲れ気味のママの顔。


私はすぐにミルクを飲みパンにかじりついた。


「……んぐっ」


いつも朝は食パン1枚と一杯の牛乳。



いつもってより、パパがいなくなってから…


半年前、パパは別の女の人とママと私と弟を捨てて出て行った。

あまりの突然にママは狂った様に泣いては暴れた。

私も弟も一緒に泣いていたらうるさいと殴られた。

凄い痛かったけど我慢した。

だってママの気持ちわかるし…子供の私にはどうする事も出来ないのだ。

その事もあって弟の喘息もよく発作を起こす様になった。

ママが怒ると弟は発作を起こす。するとまたママは怒り、殴られる。

ずっとその繰り返し。

でも最後にはママから折れて謝って来る。


泣きながら…。


泣きながら謝られると、つい許しちゃう。


ママだって本当は辛いんだ。

苦しいんだって…



寂しいんだって…



「ほらっ!いつまでモグモグしてんだいっ!!さっさと食べないと遅刻しちゃうだろっ!!」


その声が聞こえた瞬間、視界が揺れ、頭に振動が襲った。

ママが私の頭を殴ったのだ。


「……っっ!!」


私はびっくりしつつ、頭を押さえた。


「もう何やってんだい!!さっさと歯を磨いて準備しなさいっ!!もぅ〜アンタがいつまでもこんなだからママはこんな苦労して…!」


私はすぐに洗面所に向かい歯を磨いた。さっさとママの言うことを聞かないとまた殴られるし…怖い。



「あ〜あ!アンタとマサキがいなければ何とかなったのにねっ!!こんな時子供なんて何の役にも立たないんだからっ!!」


ママはそう言いながら私の食べかけのパンをごみ箱に捨て、ミルクを流し台へ流した。


「ほらぁもう!どんどん時間が過ぎちゃってるだろ?早くしないかっ!」


私はタオルで顔を拭くとすぐに走りだし鞄を手に取った。


「いいかいっ!?ちゃんと勉強だけはしなさい!そしてうんと稼げる仕事をしてママを楽させて!今は女も稼がないといけない。だからその為にも勉強を…」


「行ってきまぁ〜す」


ママが言い切らないうちに私はすぐに家を出た。



時々家が嫌いになる。


ママの事も嫌いになる。


唯一、弟だけが私の支えだ…。

けど喘息持ちの弟は正直頼れない…。

やっぱり自分の身は自分で守らなければいけない。



私は毎日、学校へ行く前に寄り道する場所がある。

それは家から5分くらい離れた大きな一軒家である。

そこに大きな白いワンちゃんがいて、毎日なでなでするのが私の日課だった。


ワンちゃんは私を見るや否や舌を出して尻尾フリフリしていた。お返しに笑顔で抱き着いた。


「あはは…もう〜くすぐったいって…」


「おはよう。今日も元気じゃな。」


窓から身を出したおじいちゃんが声を掛ける。

おじいちゃんは去年、奥さんを亡くし、今は一人でこの家に住んでいる。


「おはよー!おじいちゃん!」


私は笑顔で挨拶をした。


「最近…この近くは物騒じゃ…あんまり遅くならない様にしなさいよ。」


「…物騒って何?」


「…アレじゃ…」


おじいちゃんはテレビを指差した。テレビにはワイドショーがやっていて遺体発見って字が見えた。


「何のニュース?」


「最近、君と同じ小学生が三日間行方不明じゃっただろ?今朝発見されたんじゃが…残念ながら生きて帰れなかった…可哀相に…何て世の中じゃ……同じ目に遇いたくないなら学校終わるとまっすぐ帰りなさいじゃよ。」


「…うん…」


私はテレビの画面に目をやると今度は別のニュースがやっていた。母親が実の子供に暴力を振るって死なせた事件…。



「…まったく世の中は狂ってる…ワシらの時代は戦争で生き残るのに必死じゃった…だからこそ命を粗末になんか出来ない。虐待などもってのほかじゃ…」



「私のママも虐待してるよ。」


…って言いそうになった。勿論、言えるワケがない。いくらおじいちゃんが戦争を生き抜いたからって私やママは戦争を知らない。時代は変わるんだよ…。素直にそう思う。

私ってひねくれ者だな…。


「じゃっ、またね」


私はおじいちゃんにペコリと頭を下げると犬の頭を撫で、学校へ向かった。


「帰り道は気をつけるんじゃよ〜」


おじいちゃんは私が見えなくなるまでずっとそう言っていた。



ついに初投稿です。

宜しければ感想をお願い致します。

勉強になりますので。

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