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第二話:夏の羨望

「あ〜、たりー」


日曜日の朝は、夏雄兄ちゃんの怠そうな声で始まる


「おう恭介、コーヒー入れろや。にっげーの」


リビングのソファーでテレビを見ていた俺の頭を夏雄兄ちゃんはわしづかみし、左右に降った


「や、やめろって、入れてくるから」


「3分以内な。お、宮田アナじゃん。結構いい女だよな」


夏兄は、立ち上がった俺の代わりにソファーへドカッと座り、くつろぎモードに入る


「…………はぁ」


ため息をつきながら、俺はキッチンへと行く。いつもながら夏兄は理不尽だ


「……いつか反乱を」


ぼそりと呟いてみるが、実際起こした所でアッサリ制圧されるのがオチだろう


沸いたお湯を、コーヒーの粉が入ったカップに入れ、砂糖も入れずそのままリビングに戻る。夏雄兄ちゃんは、超怠そうに天井を見上げていた


「お待たせ」


「おう。……あ〜うめぇ。やっぱお前に容れさせんのが一番だ」


迷惑な話だ


「つかよ、この間、秋が容れてくれたんだけどよ」


そこで夏雄兄ちゃんは、左右を警戒し、声を潜めて言いづらそうに言葉を続ける


「……ビビったわ。コーヒーが緑色になってたんだぜ? 意味分かんねーよ」


秋兄は、ほぼ完璧な人だが、唯一料理だけは壊滅的に下手だ。コーヒーなんて料理じゃないと言われるかも知れないが、事実こうして失敗をしている


「……で、飲んだの?」


「……飲まない訳にはいかないだろ。その後、気付いたら病院のベッドで寝ていたけどな」


「…………ああ、あの日ね」


そう言えば、突然倒れた日があったな


「あいつは本当すげぇ奴なんだけどよ。料理だけはな……」


苦笑いだが、どこか誇らしげに夏雄兄ちゃんは言う


「……夏雄兄ちゃんも秋兄には勝てないか」


「勝てる奴なんか、居ないだろ。……あ〜でも、雪や春達、弟には甘いよな。特にお前」


「そう?」


秋兄は夏雄兄ちゃん以外には優しいから、良く分からない


「そう? じゃねーよ。ちょっと俺がお前をからかうと、直ぐ飛んで来るし……。たまには俺も庇われてぇっての」


なら俺をからかうのを止めろよ! などと言えない俺が可愛い


「まぁ夏雄兄ちゃんは、秋兄が庇わなくても十分強いんだし、別に良いんじゃない?」


皮肉が精一杯です


「分かってねぇな。強すぎるからこそ、更に強い奴に守られてみてーな感覚があんだよ。家康が本多忠勝に頼る的な?」


複雑な性格してるよな、この兄


「でも夏雄兄ちゃんがそこまでリスペクトするなんて、やっぱり秋兄は凄いんだな」


「当たり前だろ? 俺の弟だぜ」


俺も弟ですが?


「なんとか俺の味方になんねーかなー」


貴方の中身を全部変えれば、なるかもしれません


「さてと、うまいコーヒーも飲んだし出掛けてくっか! と、その前に礼してやるからちょっと来い」


お! 珍しく小遣いでもくれるのか?


期待しながら夏雄兄ちゃんの側に寄ると、顔も寄せろとジェスチャーして来た


「う、うん」


んで、実際寄せると


「サンキューな、愛してるぜ」


チュっと俺の頬にキス


「あ……お、お兄ちゃん……って意味分かんねぇよ!」


「俺のキスは万札の価値があっから。釣りはいらねぇ取っときなってな」


「俺にとっては一円の価値もねぇよ! 馬鹿じゃないの!? つか馬鹿でしょ!」


「なっ! て、テメェ、偉大なる兄様に向かって二度も馬鹿だと? 良い度胸してんしゃねーか」


「うっ!」


「今日の予定は中止だ。可愛い弟とゆっくり会話してぇからな!」


立ち上がり、微笑みながら俺に近付く夏雄兄ちゃん。中々怖いが、やはり詰めが甘い


「い、良いのかな? そんな高圧的な態度をとって」


「あん?」


「今日は居るんだよ?」


「は?」


「今日は昼からなんだ、部活」


「…………ごめんなさい」




今日の勝者


俺>>>>>>>夏


つきじ


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