第三章:仲間たちの反応と雉の悲劇
3-1. 猿の困惑
猿飛三郎は、二通のメールを受け取って首を傾げました。
「なんだこれ?川上太郎と田中太郎?同じ内容なのに、文体が全然違うぞ」
IT に詳しい猿は、すぐにこれがスパムメールか、あるいはフィッシング詐欺の可能性を疑いました。
「川上家と田中家、どっちに行けばいいんだ?時間も違うし…」
しかし、猿は桃太郎の二つのSNSアカウントを両方フォローしていたため、どちらも本人であることに気づきました。
「ああ、あの選択的別姓で生まれた桃太郎か。なるほど、二つのアカウントを使い分けているのか」
猿は状況を理解し、とりあえず川上アカウントに記載されていた集合場所(川上家前)と時間(午前6時)をカレンダーに登録しました。
「フォーマルな方が正式っぽいからな」
こうして猿は、メールを受け取ったものの、若干の混乱を抱えながらも参加を決めました。
3-2. 犬の誠実な対応
犬山一郎は、川上太郎からの丁寧なメールを受け取りました。
「ふむ、鬼ヶ島討伐プロジェクトか。村のためになる、立派な志だ」
犬は真面目な性格なので、メールの内容を何度も読み返し、条件を確認しました。
「集合場所は川上家前、時間は午前6時。了解だ」
犬はすぐに返信メールを書きました。
川上太郎様
鬼ヶ島討伐プロジェクトへの参加を希望いたします。
村の平和のため、微力ながら貢献させていただきます。
当日は遅刻のないよう、5時45分には到着する予定です。
よろしくお願いいたします。
犬山一郎
犬は田中太郎からのメールを受け取っていなかったため、何の疑問も持たず、川上アカウントの情報のみを信じていました。
律儀な犬は、さらに持ち物リストを作成し、装備の準備を始めました。彼の参加は確実なものとなりました。
3-3. 雉の大失敗
一方、雉田花子は、田中太郎からのカジュアルなメールのみを受け取りました。
「鬼退治の仲間募集?一緒に大冒険?」
雉は、このメールを見た瞬間、怪しいと感じました。
最近、SNSでは「簡単に稼げる副業!」「あなたも冒険者になれる!」といった詐欺まがいの勧誘メールが横行していました。雉は以前、そうした詐欺に引っかかりそうになった苦い経験があったのです。
「また来た。こういう怪しいメール、最近多いのよね」
雉は、差出人の「田中太郎」という名前にも覚えがありませんでした。桃太郎が二つの名字を持っていることを知らなかったのです。
「田中太郎?知らない人だわ。しかも文面が軽すぎる。『やる気と勇気を持ってこい』って、完全に怪しい宗教勧誘じゃない」
雉は、メールをスパムフォルダに移動させました。
「こんなの相手にしている暇はないわ」
さらに悪いことに、雉はその日、スマートフォンの通知設定を変更していて、重要なメール以外は通知が来ないようにしていました。そのため、スパムフォルダに入れたメールのことは、すぐに忘れてしまったのです。
桃太郎からの「重要な仲間募集」は、こうして雉には届かないまま、出発の日が近づいていきました。
雉は後日、この判断を深く後悔することになるのですが、この時点では何も知らず、いつも通りの日常を過ごしていました。
「明日は天気がいいから、空を飛んで村の上を散歩しようかな」
雉は、自分が歴史的な冒険から除外されようとしていることに、まったく気づいていませんでした。




