第8話
少年が行ったり来たりしている。
もう何回往復したかわからない。
周りの男たちが疲れたように見ている。
「コウキ、いい加減落ち着け」
「お前の気持ちはわかるがお前がいくら歩いてもイミルには着かんぞ」
「あと10分ほどだ」
「だって、半さん!」
「父さん危ないかもしれないんだよ!」
「急いで行かないと!」
「城太郎もいるんだ。そう簡単にやられはせんよ」
「でもわからないじゃないか!父さんは普通の人なんだよ!」
コウキが半蔵に食ってかかる。
目には涙が浮かんでいる。
「イミルへの接続5分前。イミルへの接続5分前」
「戦闘要員は至急ブリッジへ集合せよ!」
アナウンスが流れる。
コウキたちは駆け出した。
ブリッジにはこの船の船長ニール・クィーンと、副長のマリー・ベルフィンが待っていた。
「船長、揃いました」
マリーが隣の男ニールに言う。
先ほどのアナウンスの声だ。
ニールは一度頷くと、揃ったコウキたちを見渡す。
「これより本船はイミルへ突入する」
「今回はあくまでも通過だけなので滞在時間は10分である」
「それを超えるとイミルに呑まれる。呑まれたらいつ出れるか分からん」
「コウキ、10分で必ず戻れ。お前がいなければ世界移動出来ん」
「わかったな」
コウキが頷く。
「イミル突入1分前!耐世界衝角最大!」
船体の奥で低い唸りが響く。
スキーズブラズニルの船体に刻まれた古い文字が、ひとつ、またひとつと淡く光り始めた。
直線だけで形作られたその文字は、古いルーンだった。
船首が白く輝き始める。
前方の空間に、幾重にも重なる虹の膜が現れていた。
それは空でも海でもない。
世界と世界の境目だった。
「突入する!」
ニールの声と同時に、スキーズブラズニルが虹の膜へと突き進む。
触れた瞬間、世界が軋んだ。
船体が激しく震える。
視界の星々が糸のように引き伸ばされる。
虹の膜の向こう側で、光が走った。
魔法の閃光だった。
コウキの拳が震える。
「父さん……!」
次の瞬間、スキーズブラズニルは虹の膜を突き破り、イミルへと滑り込んだ。




