第6話
「アンジー、積もる話もあるだろうが後にせよ」
「ジョウタロウに会わせる」
「はーい。待ちます」
十兵衛が鷹刀を連れて塔の背後にある建物へと向かう。
建物はそれほど大きくなく4人でいっぱいの広さだ。
その部屋の真ん中で一人の男が座っている。
胡乱な目つきで見つめてくる。
「城太郎、子供たちは間に合ったか」
「いや…一歩遅かった」
「そうか…」
「その男は何処で拾ってきた?お前と一緒にいるのだから、はぐれた住人か」
「はたまた…ブレスドか」
城太郎の胡乱な目が、鷹刀を上から下まで舐める
十兵衛がニヤリと笑う。
全てわかった、というように頷く。
「俺は城太郎、笛吹城太郎という」
「鷹刀忍」
「俺は十兵衛と同じだ」
「同じ?」
鷹刀が首を傾げる。
「なんだ聞いてないのか」
城太郎が十兵衛を責めるように見る。
「儂は説明がうまくできん」
「城太郎に任すわ」
「よいか、鷹刀」
「ここはイミルという」
「死んだ者がここに来る」
「当たり前じゃがイミルで生まれたものは前の記憶はない」
「だがアンジェリーナ、いやアンジーか。彼女のように前の世界の記憶をもつものも稀におる」
「イミルにはブレスドと呼ばれる者が外から呼ばれ、争っておる」
「ここで最後まで残ったブレスドは願いが叶うという」
「ブレスドはまたチャンピオンと呼ばれたものを外から呼んで戦わせる」
「さっき攻撃していたのがチャンピオンじゃ」
「チャンピオンは死なぬ。一定のダメージを負うと元の場所に戻るだけじゃ」
「チャンピオンはイミルの者たちには影のように見える、会話が出来ん」
「俺たちには、あの下卑た奴らがはっきり見えておるがの」
「十兵衛と俺みたいなのは別の世界からイミルに迷い込んだものじゃ」
「例外者とか呼ばれておる」
「ま、そう呼ぶ奴に会ったことは無いがな」
「この塔には子供しかおらん」
「大人たちはみな他を守ってる」
「ここは塔があるから彼らでも問題ないとされたんだろうが」
「裏目に出た」
「この国は魔法が発達している。攻撃されても回復が出来る」
「そのせいで奴らは責めあぐねておる」
「だがな…」
城太郎は気持ちを切り替えるようにグラスの酒をあおる。
喉への刺激が城太郎を励ます。
「子供たちの魔法は強力だがその分代償は大きい」
「魔法は限りがある」
「使うほど生命を削る」
「…簡単に言えば使えば死ぬ」
鷹刀が目を見張る。
「だから俺らは彼らを戦わせたくはないのだが」
「十兵衛や俺らと違ってここに親も友もいる」
「守りたい気持ち痛いほどわかる」
「俺も守れなかった身だからな」
「さっきの奴らは別の村のアンジーの仲間を拉致した」
「おそらくこっちへの攻撃に使う気だろう」
鷹刀が出ていこうとする。
「何処へ行くんだ?」
「子供たちは…もう手遅れじゃ」
「もう助けられん」
「子供たちは薬で自由を奪われ、ただ魔法を使わせられるんじゃ!」
城太郎が乱暴にグラスを置く。
鷹刀が再び出て行こうとする。
「何処へ行こうというのじゃ」
十兵衛が声を張り上げる。
あまりの声量、迫力に鷹刀が振り返る。
「戦えないお主に、いや儂らに出来ることは無いのじゃ!」
「それでも行くというのなら、あとは地獄じゃ」
「俺は凛堂に頼まれた」
「娘を助けてくれと」
「このままでは良子は壊れる。助けなければ」
十兵衛が目を見張る。
「お主、まさか友の死んだ娘を助けるためにブレスドになったのか!?」
鷹刀が頷く。
「これは愉快じゃ。城太郎!聞いたか!?」
十兵衛が嬉しそうに城太郎の肩を叩く。
城太郎は驚いた表情だ。




