第3話
その夜、鷹刀は夢を見た。
暗闇の中に立っている。
音はない。
足元も見えない。
ただ、立っている、ことは感じられる。
どこからともなく、声がした。
「お前は願うか」
問いは静かだった。
強制でもない。
試すようでもない。
鷹刀は小さく息を吐く。
凛堂の顔が浮かぶ。
酒の匂い。
ポスター。
そしてあの、強がった声。
「娘を助けてくれ」
「ああ」
短いが、嬉しさが感じられる声。
その瞬間世界が揺らいだ。
最初に目に入ったのは、正面に見える石の塔だった。
ところどころに穴が空いており、煙が燻っている。
夢にしては、匂いが濃い。
塔の前に人の集団が見える。
鷹刀が向かおうとした瞬間、轟音が響いた
石片が降ってくる。
鷹刀が音の方を振り返ると、小高い丘のような所から
円筒状の武器を肩に担いだ集団が降りてくる。
丘を降りきると、円筒状の武器を上に向けた。
どうやら目標は石塔のようだ。
再び、空気が裂ける。
砲弾が石塔近くに迫ると、薄緑色の幕が現れる。
衝撃が弾かれる。
石塔の頂きに白い外套が揺れるのが見えた。
「回復しやがった。おい、向こうは未だか」
「未だ合図はありません」
「何をやってやがる。もう弾はねえぞ」
「例の騎士が邪魔されて」
「またあいつか。あと何回やれるんだ」
「あと2回かと」
指揮官らしき男が、鷹刀の方を見た。
少し考えるふりをした後、手に下げていた銃を鷹刀に向け、再び横の男を見る。
「おい、敵だ。それもウサギじゃねえ」
「う、見えますね。確かにウサギじゃないようです」
「これは久しぶりに楽しめそうだ。逃がすなよ」
指揮官らしき男の後ろから3人が現れる。
手にはそれぞれナイフと呼べないような刃物を持っている。
全員が鷹刀を見て嬉しそうに迫って来る。
「逃げるなよ。久しぶりの獲物だ」
刃が迫る。
鷹刀が半歩下がる。
速い。
次の瞬間腕を引かれた。
たたらを踏む。
鷹刀を引っ張ったのは左眼に眼帯をした男だった。
左で鷹刀を腕を掴み、右手には日本刀ほどのサイズの刃物を無造作に下げている。
「大丈夫か。ぼうっとしているとやられるぞ」
おどけた声だった。
隻眼の男が無造作に右手の刀を振ると、迫ってきた一人の男が吹き飛ぶ。
吹き飛ばれた男が一瞬立ち上がるが、直ぐに崩れる。
男が光に消えた。
隻眼の男が肩に刀を担ぐ。
「下がれ、消えるぞ」
敵の一人が鼻で笑う。
次の瞬間、刃が走る。
男は光になって崩れる。




