第13話
スキーズブラズニルが去った後の鈍色の空を見上げていた。
ほぼ一瞬の出来事だった。
アンジーには夢のように思えた。
あの光った時の音しか気付かない者もいたようだ。
「あれは…なんだったんだろう」
アンジーの呟きに応えたのはジョルジーヌだった。
「外からの救けだ」
「外から侵してくる者もあれば」
「外から救ける者がいても不思議は無いだろう」
ジョルジーヌがアンジーと鷹刀を見る。
鷹刀は何も言わなかった。
「とは言ってもだ…自分達の国、町は自分達で守らないとな」
「周囲の状況を確認せよ」
「港側には依然としてポインシャの子供たちと数人の敵がいます」
「橋の方は十兵衛様が向かったので少しづつ押し返していますが、敵は健在です」
ジョルジーヌが周囲からの報告に頷く。
「ポインシャの子供たちがもう一度攻撃してくれば終わりだな」
「さてどうする?」
ジョルジーヌがアンジーと城太郎を見る。
その目は問い質すかのように鋭いものだった。
「子供たちの様子はどうだ?」
「動いているようです。再開までそれほど…時間はないかと」
「わたしはあの子たちを…救けたい」
「じゃがな、アンジー。彼女たちはもうミードに侵されとる」
「元には戻せん。たとえマウダーの御子でもな」
「でも…」
「救えなくても…苦しまずにすることは出来る」
アンジーが驚いたように城太郎を見る。
「じゃが。ちと間に合わないかもしれん」
アンジーが祈るように手を組む。
右手に透明の指輪があるのに気付く。
それは母から贈られた指輪だった。
指輪が僅かに熱を帯びたように感じられた。
『…アンジェリーナ…』
母の声が聴こえた気がした。
優しく頭を撫でる手も、懐かしい温もりも。
アンジーの目に涙が浮かぶ。
『私たちの魔法は…指輪魔法』
『大事な人の魂でしか…使えない』
『強くて…残酷な力』
声がだんだん遠ざかって行く。
『あなたにもきっと想いに寄り添ってくれる人がいる』
アンジーは指輪を愛おしく抱きしめた。
一度、目を閉じる。
そして涙を拭った。
その表情は厳しく、決意に満ちていた。
「鷹刀おじさん」
「わたし…みんなを救けたい」
「だからね…」
アンジーが一度言葉を切る。
「だから…」
「わたしに力を貸してください!」
アンジーが鷹刀に頭を下げる。
鷹刀がアンジーの頭を撫でる。
「俺は親友に頼まれた」
鷹刀は静かに言った。
「娘を助けて欲しいと」




