「私が貴方の理解者よ!」とおっしゃっていますが、殿下が私を慕っている事は知らないのですね?
辺境伯家に生まれた私は家の付近の森へ狩りに向かう父や兄についていくような幼少期を送っていた為、他の令嬢よりもお転婆に育った。
泥で汚れる事や虫に嫌悪を抱く事もなく、よく泥まみれになってはお母様に叱られたものだ。
森を駆け回るような生活は流石に幼少で卒業したけれど、そんな私が次に興味を持ったのはお花だった。
庭園のお花を丁寧に手入れする庭師の後ろ姿や、その手裁き、そしてすくすくと育つ小さな命を見るのが大好きだった。
故に、庭師からこっそりお花の世話を教わったり、小さな手伝いをするようになり……いつしか両親を説得して堂々と花の世話をするようにもなっていた。
この園芸の趣味は私が成長し、王立魔法学園へ通う事になっても続いていた。
入学から程なくしたころ。
今は使われていない旧校舎に迷い込んだ時、旧校舎裏の比較的大きな花壇に多くの花が植えられているのを見つけた。
その花は、明らかに誰かが育てた痕跡があった。
とても丁寧に世話していたことが分かるからこそ、勝手に手を出すべきではないと思った。
だから、もし学園側から庭師の役割を持つ人が指名されているのならばお手伝いを申し出たいし、また個人的に育てている人がいるなら無暗に手を出さない方がと思って、私は暫くの間、旧校舎の花壇を茂みの中から見張る、傍から見れば不審者のような動きを続けていた。
しかし何週間経っても、花壇に人が現れる事はない。
不思議に思った私がある教員に話を聞くと、どうやら旧校舎の花を育てていたのは私と入れ替わりで卒業した生徒だったとの事。
つまり今は世話をする者がいないという話を聞き、私は食い気味で旧校舎の花を代わりに育てさせてはくれないかと申し出た。
結果はあっさりと許可が下り……それ以降私は昼休憩や放課後になると一切人気がない旧校舎裏へ駆け込み、せっせか花の世話をするようになった。
私には婚約者がいたけれど、生憎折り合いはそこまでよくなかった。
婚約者のシュテファン・マウアーは爵位こそ伯爵家ではあるが今政界で勢いづいている家の一つであったこともあり、我が家を田舎貴族として見下し、傲慢な態度をとっていたし、そもそも政略的な繋がりとしての婚姻でしかなかったから、私もシュテファンに対して思い入れがなかったのだ。
とはいえ流石に貴族女性として、定期的な顔合わせや夜会に同行するという婚約者としての義務は熟している。
寧ろその義務を放棄し……浮気の噂を流しているのはシュテファンの方だった。
そんなこんなで、噂によるとどうやら学園で出会った侯爵家の令嬢に浮気しているらしい彼と顔を合わせる頻度は徐々に減ってきている。
私としては自分の非がないところで自由時間が生まれるのは都合の良い話でもあったし、そもそもこの婚約はマウアー伯爵家が我がバルヒェット辺境伯家へどうしてもと強く頼んだからこそ成立した婚約。
彼が勝手に自滅する分には私としても知った事ではなかった。
なので私は日々幸せを噛み締めながら学園生活を送っていた。
そんなある日の事。
放課後、お花の世話をしていた私は突然大雨に降られる。
あまりに雨の勢いが強かったので、流石に花を守らなければと花壇に大雨対策を施してから、私は走り出した。
向かった先は旧校舎のガゼボ。
旧校舎の表まで出てすぐの場所――現在地からは雨が凌げる最も近い場所だった。
既にびしょ濡れだったのであまり意味はないかもと思いつつ、私はガゼボへ駆け寄る。
「はぁぁ……いや、雨強すぎ……」
屋根まで辿り着いて安心した私は大きな溜息を吐く。
そして大きな独り言を呟いてから……ふと、自分の目と鼻の先に人影がある事に気付く。
「君は……」
「ひゃあっ!」
まさかこの場に別の人間がいるなどとは考えてもいなかった。
驚いて、飛び退いた私は顔を上げ、私に声を掛けた人物を確認する。
そしてより素っ頓狂な声を出してしまった。
「お、王太子殿下……ッ!?」
銀色の髪に金色の瞳という、珍しい特徴を持つ麗しい男性。
フリードリヒ・ルートスティラ様――我が国の王太子であられるお方だった。
髪から雨水を滴らせる彼もまた、驚いたように私を見ている。
「も、申し訳ありません、お休みのところ……」
「あ、いやいやいや、待った待った」
先客、それも相手が王太子ともなれば、場所を譲るべきだろう。
そう考えた私は慌ててガゼボを飛び出そうとした。
しかしフリードリヒ様はそんな私の手を掴んで止めた。
「この大雨で出て行けという程鬼じゃないよ、俺は。それにそもそも、ここは誰のものでもないだろう?」
だからここにいるといいと諭された私は、その気遣いに甘える事にした。
「ところで、君は一体どこからやって来たんだい? ここは殆どの生徒がやって来ないはずだけれど」
「えっと……校舎の裏にあるお花を育てていて」
「花を? ……ああ、だから手に少し泥が付いているんだね」
掴んだ手をまじまじと見られ、漸く私は自分の手が汚れていることに気付いた。
「わぁっ、申し訳ありません! 殿下の手が……っ」
「ああ、そうじゃない。別に気にしていないよ」
殿下から手を離し、私はハンカチで手を拭う。
そんな姿を見ながら彼は興味深そうに私を見ていた。
「けど……貴族令嬢が庭師のような事を。随分物好きなんだね」
「あはは……よく言われます。でも自分の手で育てたり、守れる命があるんだって思うと、嬉しくなるんです。お花は香りも見た目も綺麗ですし、努力の末に美しい花が開いてくれた時の達成感とか……!」
気付けば熱く語ってしまっていた私は、突然ハッと我に返る。
王太子ともあろうお方が園芸にお詳しい訳もあるまい。
興味のない話を長々としてしまうのは迷惑でしかないと言う考えに至り、私は顔を強張らせた。
しかし……そんな私を、金色の瞳がとても優しく映していた。
「も、申し訳ありません……」
「はは。全然。本当に好きなんだろうなっていうのが伝わって来たよ。それにしても……君は謝ってばかりだね。まぁ、王族相手ともなれば気を遣って当然か」
そう言って彼は静かに目を伏せる。
その視線が少し憂いているように見えて気掛かりだった。
「雨が降って来たから、じきに迎えも来るだろう。近くに護衛を控えさせていたからね。そうしたら馬車まで送っていくよ」
彼がそう言ったのも束の間、大雨の中から男性が姿を見せる。
「殿下」
「早かったね」
「お風邪を引かれます。早く馬車へ」
「ありがとう」
そう言って、フリードリヒ殿下へ外套を渡す護衛の方はふと私に気付いて会釈をした。
彼は外套を頭の上に広げてから、私へ視線を向けた。
「君もどうぞ? アデーレ・フォン・バルヒェット辺境伯令嬢」
「わ、私の名前を……?」
「当然だろう? 君の家は代々名を連ねる大貴族の一つなのだから。それに、君の噂もちらほら耳にしていたしね」
「噂?」
殿下の言葉を聞き返せば、彼はハッとしたような顔をしてから首を横に振った。
「すまない。気にしないでくれ」
不思議に思いながらも、私は頷き、それから彼の厚意に甘えて外套の下に潜らせてもらった。
それから私達は足早に馬車へ向かい、その後はあっさりと解散する。
あの日は偶然の出会いだったのだろう。
フリードリヒ殿下は尊きお立場のお方であり、忙しいお方でもある。
あのようにお話しする機会もきっとこれっきり。
……そう、思っていたのだけれど。
「やぁ」
その日も雨だった。
雨宿りにガゼボへ向かった私は当然のようにいるフリードリヒ殿下のお姿に驚いた。
「何故ここに……?」
「旧校舎の近くにいたからだろうね」
「何か御用でもあるのですか?」
「うーん、そうではないのだけれど。……ああ、そうだ。軽食にと持っていたクッキーが残っていてね。迎えが来るまでの間、よければ話でもしないか」
フリードリヒ殿下はそういうとクッキーの包みを取り出し、ガゼボの中央にあるテーブルを示した。
私はそれに従い、椅子に腰を掛ける。
そうして二人でクッキーをつまみながら本当に他愛もない話を交わして時間を過ごした。
気付けば、そんな習慣が当たり前になっていた。
雨が降ったら旧校舎のガゼボで待ち合わせ。
どちらかが約束を取り決めたという訳でもないのに、自然と私達はそうして顔を合わせるようになった。
何度も顔を合わせ、談笑するうち、その話題は自然と互いを深く知るきっかけとなるものへ変化していった。
薄っぺらい世間話が尽きたのだ。
そうして心を開いて話をし、互いをよく知っていく。
そんな時間がいつしかとても心地よいものとなっていった。
気が付けば私達はお菓子を持ち歩き、雨が降るのを心待ちにするようになる。
そして雨が降ればガゼボで会い、『今日はたまたまお菓子を持っているんだ』などと、見え透いた嘘を互いに吐きながらお菓子を見せ、笑い合う。
雨の日の、雨宿りの間だけ許された僅かな時間が私にとっては心地よかった。
「そういえば、殿下はよく旧校舎に足を運ぶのですよね」
雨に降られた時、旧校舎のガゼボで雨を凌いでいるという事は少なくともその直前には旧校舎を訪れているという事だ。
しかし学生が旧校舎を訪れる理由は基本的には存在しない。
故に私は疑問に思い、そんな言葉を投げた。
するとフリードリヒ殿下はマドレーヌを口に運んで瞬きした後、困ったように微笑んだ。
「……そうだね。まぁ、大した理由ではないのだけれど」
私は小さく相槌を打つ。
話の続きを待っていると、彼は小さく肩を竦めた。
「……少し、疲れてしまうんだよ。王族という立場を意識し続けていると」
「疲れる……」
「王太子として国の未来を託されている事。それ自体はありがたい。けれど……自分は常に数え切れない程の国民の命を背負っているんだ、と気を張り詰めているのは、息苦しくてね。だから、身分を忘れて一人になれる場所でのんびりする時間を作っているんだよ」
護衛も気を遣って少し離れていてくれているから、室内では何かあった時に迷惑が掛かるという事もあり、校舎の脇に備えられているベンチで休んでいる事が多い、とフリードリヒ殿下は話した。
「だからこそ、俺にとってはここでの時間は少し特別でね」
金色の瞳が優しく細められる。
「ここでなら俺の事を見ているのは君だけだ。そして今の君は……俺を王太子ではなく親しい友人として見てくれているだろう。最初は、意識させてしまったようだったけれど」
彼の言う通りだった。
初めてガゼボで鉢合わせた頃から、私達の関係は大きく変わっていた。
「ありがとう、アデーレ。君のお陰で俺の心は確かに軽くなっている」
「い、いえ……私の方こそ」
「もし、困ったことがあれば君を助けると誓おう。君は俺の大切な人だからね」
彼の言葉が嬉しくて、私は思わず頬が緩んでしまうのだった。
***
それから程なくして。
私は自分に流されているという悪評について気付く事が出来た。
私が、ドーリス・ヘルツェルという侯爵令嬢を虐げている、というような噂。
空いた時間を園芸に費やしていた私は自分の悪評に気付くのがずいぶん遅れてしまったようで、私が気付いた頃には既に半数程度の生徒は私に疑念の視線を向けていた。
因みにドーリス様というのは、シュテファンの浮気相手だ。
わざわざ私と彼女に絡めた悪意あるうわさが流れているという事は……十中八九、シュテファンとドーリス様の仕業だろう。
そう気づいたのも束の間。
「アデーレ・フォン・バルヒェット! お前との婚約を破棄する!」
雨が降ったある日の翌日の事。
大勢の生徒の前で、シュテファンは私にそう言い放った。
彼の傍では泣いているドーリス様がいる。
「お前は昼休憩や放課後、人目を掻い潜って毎日ドーリスを虐めていた! 心優しくも気弱である彼女が、俺の友である事に嫉妬したのだろう! 時に暴行を加えるような事もあり、それにより彼女は命の危機すら感じたというではないか! お前のような悪女との婚約など願い下げだ! よってお前との婚約を破棄する!」
高らかに、用意していたのであろう台詞を並べた彼は更に、私が彼女を虐めたという具体的な例を列挙した。
いつ、どこで、どの様な事をしたのか。
その全ては偽りだったけれど……残念な事に、それを証明する術はない。
何故なら提示された時間は全て、私は旧校舎にいたから。
この時ふと、フリードリヒ殿下の事が過る。
昨日の雨でも、彼と顔を合わせていた。
きっと彼の名を出せば、アリバイの証明にはなるだろう。
けれど……話せばきっと、旧校舎には多くの生徒が集まり、殿下が心を休められるような場所ではなくなってしまうだろう。
彼が背負うものの大きさと、何を思って旧校舎で身を潜めていたのかを考えれば、簡単に彼の名を出す事は出来なかった。
けれど、その時。
「待て」
何と野次馬の中から、フリードリヒ殿下が姿を現した。
「ふ、フリードリヒ様……!?」
驚きの声を上げたのはドーリス様。
フリードリヒ殿下は彼女へ冷ややかな視線を浴びせる。
「ドーリス。君が俺の気を引こうと敢えて俺の耳に届くよう、異性と距離を詰めていたのは知っている」
彼のその発言を聞いた時、私はふと思い出した。
ドーリス様は、フリードリヒ殿下の幼馴染だった。
フリードリヒ殿下の婚約者候補として最も有力と囁かれるお方。故にドーリス様は社交界でもフリードリヒ殿下に選ばれるのは自分以外にいないと豪語していた。
けれどその一方で、フリードリヒ殿下は一向に婚約者を定める気配がないというのも事実。
殿下の言葉が正しいのであれば、自信に満ちていたドーリス様はフリードリヒ殿下を焦らせ、自分への婚約の声掛けを急かそうとした……というのが事の顛末のようだった。
そしてこの言葉を聞いたドーリス様の顔がカッと熱くなる。
「な……どういうことだ! ドーリス!」
かたや、私と縁を切ってドーリス様と結ばれる事を信じて疑っていなかった哀れな男、シュテファン。
彼は慌てた様子でドーリスに詰め寄っていた。
そんな二人の意識を自分へ向けさせるように、静かでありながらも良く通る声でフリードリヒ殿下が告げる。
「結論から言おう。君達の主張は全て偽りだ。何故なら彼女の姿を――昨日の俺は見ている」
「な……ッ!」
「他の日時に関してもそうだ。以前から彼女の悪評については耳にしていたし、空き時間になると旧校舎の方へ姿を消す彼女を見た俺は、彼女を怪しんで遠目に監視していた」
殿下の言葉には偽りが混ざっていた。
しかし最も大切な『旧校舎でアデーレを見た』という事実だけは揺るがない。
そして何よりも彼は王太子。
フリードリヒ殿下の言葉を疑う者など存在せず、仮に嫌疑に掛けるものがいれば、そのものの立場が危うくなるだけである。
「故に君達の発言が、彼女を意図的に陥れようとしているものである事は俺が証明出来る」
「そ、そんな……っ!」
「さて……そろそろ素直に吐いた方が身の為だと、忠告をしておこう。――王太子である俺の前でこれ以上虚言を吐く事はやめろ。これ以上……不愉快な現場は見ていられない」
「ひ、ヒィ……っ」
フリードリヒ殿下が二人を冷たく見据える。
シュテファンが引き攣った悲鳴を上げた。
しかし一方で、ドーリス様は……。
「ど、どうしてその女を庇うんですか!? 貴方を一番に理解しているのは私! ずっとずっと、昔からお慕いしていたというのに――」
「一番に理解……? はは」
ドーリス様の必死の訴えに、フリードリヒ殿下は乾いた笑いを零す。
「そう思っていないからこそ、俺は君を婚約者として選ばなかったというのに」
「――な」
「君は俺の容姿と地位……表面上のものでしか俺を見ていない。君などに比べたら――」
フリードリヒ殿下が私を見て笑みを深める。
「……彼女の方が、よっぽど俺を理解してくれている事だろう」
「そ、そんな……っ、嘘、噓よぉぉぉ……っ!」
髪を掻き毟り、泣きじゃくりながらドーリス様は崩れ落ちるのだった。
その後、フリードリヒ殿下の言葉に従い、主にシュテファンが私に関する悪評が全て偽りであり、私を陥れる為のものであったと自白した。
また、シュテファンの行いを知った私の両親はカンカンになってこちらから婚約解消を申し出る事となる。
以降シュテファンは家の信頼を失墜させたとして廃嫡され、社交界に姿は見せなくなったし、ドーリス様も同様に家を怒らせ、辺境の修道院に送らされたとか。
こうして……私の悪評や婚約破棄の騒動は、フリードリヒ殿下の手によって一瞬にして片がついてしまったのだった。
「あ、あの……ありがとうございました」
騒動が落ち着いた頃。
その日は珍しく、晴れの日であったけれど私達はガゼボに集まっていた。
旧校舎の花壇にいた私のもとへ、フリードリヒ殿下がお茶を誘いに来たのだ。
こんな事は初めてだった。
婚約破棄の騒動の時はバタバタとしていたので、この場を借りて改めて礼を言う。
するとフリードリヒ殿下は微笑みながら首を横に振った。
「いいや。大切な人が謂われない罪を擦り付けられるのが耐えられなかっただけだ」
そう言ってフリードリヒ殿下は私の髪をすくう。
「言っただろう。俺は君に感謝している。それに……君との時間をあんな偽りの言葉で汚されるのも、許せなかった」
「……殿下」
嬉しかった。
心がじんわりと温かくなるのを感じる。
「それに……君、俺を庇おうとしたね」
「……え?」
ぎくり、とする。
顔に出てしまったのだろう。
フリードリヒ殿下は笑いながら眉を下げた。
「俺のせいで君に迷惑が掛かったり、傷ついたりするのは嫌だと思ったんだ」
「迷惑だなんて、そんな事……っ」
「うん。分かってるよ。君はそんな風に思わないだろう。だから……ただ、俺が気になっただけだ」
あくまで自分が選んだことで、それに対して殿下が何かを思う必要はない。
そう私が言いたい事も、彼は理解しているようだった。
「でもありがとう。君が俺の事を尊重し……想ってくれた事が、とても嬉しかった」
「そ、そんな」
「君は大袈裟だと思うかもしれないけれど、本当に嬉しかったんだよ」
美しい顔に見つめられ、私は少し恥ずかしくなってしまって視線を落とす。
するとフリードリヒ殿下は席を立ち、私の隣まで近づいた。
「君の婚約の話もなくなったし、これからは……晴れでも会えるようになるかな」
「え?」
「俺は、あの時間がもっと長く続いて欲しいと、そう思っているのだけれど……君はどうかな」
とくん。
鼓動が少し大きく動く。
私が思っている事を全て的確に突いたような言葉。
それが、殿下の口から零れた物である事。
それが本当に嬉しい。
「……う、うれしい、です」
「よかった」
あまりに素直に答えてしまうと、殿下もまた喜びを隠そうともしないような無邪気な笑みで応えた。
「これからもよろしくね。アデーレ」
「こちらこそ。フリードリヒ殿下」
「いいよ、フリードリヒで」
「で、では……フリードリヒ様」
「うん。……そうだ、アデーレ。今度、君が花の世話をしている姿を見学してもいいかな? 君が楽しそうな姿をもっと見たくてね。それに、君が好きな事をもっと知りたい」
「え? は、はい、それは勿論……」
こうして、私達の関係は今も、少しずつ、けれど着実に変わりつつあり……。
私の趣味には――
――『園芸』の他に、『旧校舎での秘密のお茶会』が追加されるのだった。
最後までお読みいただきありがとうございました!
もし楽しんでいただけた場合には是非とも
リアクション、ブックマーク、評価、などなど頂けますと、大変励みになります!
また他にもたくさん短編をアップしているので、気に入って頂けた方は是非マイページまでお越しください!
それでは、ご縁がありましたらまたどこかで!




