表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【完結・番外編投稿中】正体不明の転生毛玉、人間嫌い皇帝の溺愛ルート入りました  作者: はなまる


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

63/67

終話 お城へ帰ろう!

(ほら見て見て、へーか、少し高く飛べるの!)


 ミーヤが得意そうに羽ばたき、ヒューゴの周囲を旋回すると、ヒューゴはうんうんと頷きながら、手を叩いた。


「ほう、すごいな! 立派になって……!」


 それよりも怪我の具合や、宝剣が折れたことを心配した方がいいのではないだろうか。


 しばらくすると、砦の中から足を引きずったザックが現れた。黒装束のあちこちが破れている。


「ザック!」

(さいぞうさん!)


 同一人物である。


「陛下、毛玉様、ご無事でしたか!」


 ザックを含め全員が、ご無事ではない。


「報告致します。パニックを起こした研究員が、動物を狂わせる薬……狂化薬の散布装置を作動させておりましたが、無事に破壊。沈黙を確認しました」


「そうか。ご苦労だったな」


「こちらは薬と散布装置の資料です。毛玉様を保護出来なかったこと、誠に申し訳ありません。ご無事で何よりです」


 重ねて言うが、全員がご無事ではない。


 資料に目を通したヒューゴがため息をつく。


「ヴォルガ帝国もバルガス少将も、碌なことをせんな……。いっそ、滅ぼしてしまうか?」


「陛下、ヴォルガルド帝国です。いい加減、覚えて下さい。それと、滅ぼすなら、一応は議会を通さないと……」


 ザックがギリリと歯を鳴らした。この男が声に感情を乗せるなど珍しいことだ。それだけ腹に据えかねているのだろう。


「それより、全員が酷い怪我だ。城へ帰ろう。ローマン姉弟はどうしている?」


「助け出して、近くの猟師小屋へ避難してもらいました」


「無事か?」


「弟は抵抗したらしく、派手にやられていましたが、命に別状はないかと」


 毛玉がヒューゴの肩にとまり、心配そうに琥珀色の目を瞬かせた。


「では荷馬車でも調達して、迎えに行こう。ミーヤの大切な友だちだからな」


「わかりました。馬と荷馬車を見つけて参ります」


(さいぞうさんも怪我してるから、わたしも探しに行く!)


 ザックがシュパッといなくなり、毛玉もパタパタと飛んで行った。


   * * *


 その後、ローマン姉弟を荷馬車で回収し、すぐに獣医師の診療所へ向かった。

 獣医師は「何ですか! この怪我人の山は! 私は獣医師だってわかっているんですか?!」とブツブツ言ってはいたが、適切に、手際よく治療に当たってくれた。

 ヨシュアの肋骨は折れておらず、ひびが入っていただけだった。若いからすぐに治るだろう、とのことだ。


 ドラゴンがくれた薬草を渡して経緯をヒューゴが話すと、獣医師はちょっと引くほど興奮していた。どうやら、薬草にもドラゴンにも、並々ならぬ思い入れがあるらしい。


 そのドラゴンはといえば、約束通りミーヤに会いに来てくれた。森でいちばん美味しい果物をくれて、二人で並んで一緒に食べた。

 ヴォルガルド帝国には『もう二度とアウステリア皇国と森に手出しはしない』と、帝王が泣いて謝るまで、キツイお灸を据えたらしい。

 バルガスがどうしているか少し気になったので、今度ヒューゴと一緒に「見物」に行こうかとミーヤは思っている。


 イレーヌの父は、姉弟に付き添われて出頭した。少し刑期は伸びたが、今度こそ真面目に罪を償うと、二人に約束していた。体調も徐々に回復しているらしい。


 折れた宝剣アウステリアは、一応鍛冶屋に頼んでみたが、元には戻らないそうだ。

 側近たちは卒倒したが、ヒューゴは「もう二度と使わずに済む」と、あっけらかんとしていた。


 洗濯室には、ミーヤは今も週に一、二度は顔を出している。

 最近はアイロン掛けが上達したと、マルタに褒められて上機嫌だ。


 大猿もロボも森へ戻って来ている。ヒューゴにあれほど叩きのめされたのに、さすが森のボス。逞しく、そしてしたたかだ。

 けれど、ヒューゴの匂いのするミーヤに会うと、ものすごく嫌そうにしているのでミーヤの森での生活は少し安全になった。

 虎も時々ロボと縄張り争いをしているのを見かけるので、元気にしているのだろう。


 ヒューゴは相変わらず、毎日惜しみなく『愛されポイント』をくれる。ミーヤの『だいしゅきポイント』も順調に増えているので、いつかまた、あのファンファーレが鳴り響く日も、あり得る未来だろう。


 ミーヤは今も『タイプA汎用毛玉』のままだ。何者でもない。けれど『汎用』は『凡庸』と似ているけれど違う。様々な用途や分野に、広く使えることを意味している。


 つまり、汎用毛玉は全ての子供たちと同じ存在なのだ。


 子供と毛玉は、大した根拠がなくても、自分の未来を信じて良い生き物だ。


 ミーヤが城の中庭で、無邪気に過ごすのを見ていると、ヒューゴはふと思う。


 かつての自分には許されなかった、子供と毛玉のあまりにも甘く、貴い特権。


 いつかは現実と向き合い、厳しい冬を越えねばならない日が来るのかもしれない。だが、その日こそが、ヒューゴの出番なのだろう。


(その時までは……どうか健やかに、ただ明日を信じて笑っていてくれ)


 それが守護者としての、自分の役割なのだと、誇りにすら感じている。


 ヒューゴは最近庶民に『人間嫌いの毛玉好き皇帝』と呼ばれているらしい。その『人間嫌い』が取れる日も、案外遠くはないはずだ。


『なりたいわたしには、自分でなる』


 システムとのその約束通り、ミーヤは今日も、少し高く羽ばたき、少し素早く転がり……そしてアイロンがけに精を出している。


 ミーヤはチョンチョンと跳ねて、けもの道を横切り、茂みの中をコロコロ転がっていく。


 ミーヤは今日も、森で最弱の毛玉だ。




                       〈完〉



読んで下さりありがとうございます。

これにて本作は完結です! 最後までおつき合いいただき、本当にありがとうございます。

完結とは致しますが、まだまだ書きたい場面がたくさんありますので、ぼちぼち書いて投稿していくるつもりです。どうかブクマはそのままで! そして――。

☆評価を入れていただくなら、まさに今が最高のタイミングですよ! 完結直後の評価は、作品の今後と作者の、とても大きな力になります。どうかポチッと応援していただけると励みになります。感想もお待ちしてます!


またお会いしましょう!


作者 はなまる


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
完結おめでとうございます!毛玉様とへーか、これからも何があっても幸せに暮らしていけると信じられる、素敵な結末でした。完結後の色々も楽しみにおりますよ〜。
良いほのぼのと山場の塩梅でした! 鉛が入ってそうな白粉の回収…
お疲れ様でした! 番外編?拾遺集?も楽しみにしてます
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ