表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【完結・番外編投稿中】正体不明の転生毛玉、人間嫌い皇帝の溺愛ルート入りました  作者: はなまる


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

61/67

第56話 異形のバケモノ

《準備完了。実装します》


 無機質なアナウンスが響いた瞬間、ミーヤの小さな体が内側から爆ぜるような衝撃に見舞われた。


「ピギィィィッ……!!」


 悲鳴とも、肉が裂ける音ともつかない異音が、静まり返った草原に響く。

 まだら模様の毛並みが内側から、突き破るように生えてきた赤黒い筋肉の繊維によって、無残に剥ぎ取られていく。


 ギチ、ギチギチィッ!


《表面積、補完します》


 まん丸だった身体が不自然に膨張し、歪な形へと形を変える。頭のすぐ横からは、肩も肘も無視したような、節くれだった「腕」が三本、肉を割って唐突に突き出した。


 背中からも、お腹からも、節足動物のような硬い節を持った「尻尾」が、節操もなく何本も生え、石畳を鞭のように叩いている。


「ミー……ヤ……?」


 ヒューゴの腕の中で、愛しい毛玉が、みるみるうちに変貌していく。


 肩口からは太い「足」が逆さまに生え、可愛らしかった琥珀色の瞳は、肥大化した頭部のあちこちに、複眼のようにいくつも増殖し、狂ったドラゴンを多角的に捉え始めた。


(ごめん、ね……。へーか……。かわいくない、よね……。でも……!)


 バキィッ! と骨が外れるような音がして、ミーヤの体躯は三メートルを超える異形へと膨れ上がった。


 もはや、どちらが前でどちらが後ろかもわからない。いや、それは元からか。


 全身から生えた腕が、足が、尻尾が、それぞれ独立した生き物のように蠢き、周囲の空気を威嚇するようにかき回す。


 たったひとつ。


 かつて頭だったと思われる場所には、ヒューゴが引っ張るなと叫んだ、あの「花」だけが、何事もなかったかのように、揺れていた。


「ギョエェェェェェーーッ!!!」


 ミーヤの口があったはずの場所が裂け、重低音の混じった、おぞましい咆哮が放たれた。


 バルガスが腰を抜かし、尻もちをつく。


「な、なんだ……! あの化け物は! 毛玉が……毛玉が化け物になったのか!?」


 ドラゴンが、本能的な恐怖にたじろぎ、一歩後ずさった。

 理性を失ったドラゴンの目にも、目の前の『それ』は、この世のことわりから外れた、正体不明の暴力そのものに見えたのだ。


(生えた! いっぱい、生えたよ! これなら、へーかを……!)


 琥珀色の複数の目が、ドラゴンをキッと睨みつける。


(お父さんを……、守れる……!!!)


 異形と化したミーヤの身体のあちこちから、『ポン』という、『生やす』に対応した効果音が鳴る。


 それはあまりにも場違いで、生えたものに相応しくなかった。


 ミーヤは四方八方に生えた腕と足を同時に地面へ叩きつけ、凄まじい速度でドラゴンへと突っ込んだ。


(わたしの、お父さんを、いじめるなー!)


   * * *


 ドォォォォォンッ!!


 漆黒の塊と化したミーヤが、ドラゴンの懐へ入り込む。

 増殖した複数本の腕が連続して、ハンマーのようにドラゴンの巨躯を叩く。


 バルガスは腰を抜かしたまま、ガチガチと歯を鳴らして後ずさりした。


「な、なんだ……なんなんだ、あの……あの出来損ないのバケモノは……!」


 ミーヤは構わなかった。


 自分がどれほど醜く、おぞましい姿になっているか。今はそんなことは少しも考えられない。


 バキ、ボキィッ!


 ドラゴンの強靭な鱗が、圧倒的な質量攻撃に悲鳴を上げた。

 反撃しようと鋭い牙を剥くが、ミーヤの背中やお腹から生えた「足」が、その顎を強引に蹴り上げた。


 だがその時、筋肉の奥に埋まったミーヤのケモ耳が、ぴくりと動いた。

 狂ったような咆哮の奥に、かすかに別の声が混じっているのだ。


 叩くたびに、その声は少しずつ大きくなっていく。


(……怒りが、制御できん……)


(……どうにもならん)


(……身体が勝手に動く……)


 ミーヤは動きを止めた。


(ドラゴンさん……?)


 以前、遺跡で会った時、ドラゴンは金色の美しい瞳をしていた。今は、赤い。

 赤く染まったドラゴンの瞳をじっと見つめると、その奥に、かすかに、金色が揺らめいている。


(いる……! ドラゴンさん、まだそこにいる……!)


 ロボの目も、あの大猿の目も、虎の目も……。みんな同じだった。苦しみと怒りの奥に、かつての『森のボス』がいた。


(みんな、苦しんでたんだ……)


 胸が、痛かった。


 ドラゴンも、森のボスたちも……『悪者』なんかじゃなかった。


 ミーヤは叩くのをやめ、代わりにドラゴンの巨大な頭部を、無数の腕でギュッと包み込んだ。


 暴れるドラゴンの下敷きになり、ミーヤ自身の体からも骨の折れる嫌な音がする。それでも、絶対に離さない。


(ドラゴンさん! 聞こえる?! わたしだよ、毛玉のミーヤだよ!)


 ドラゴンの赤い瞳が、ミーヤの至近距離で揺れる。


(あの時の、森の遺跡で話したじゃない! 「また会おう」って、言ってくれたじゃない!)

 

 目の前で苦しんでいる、大きな生き物が、悲しくて、悔しくて、仕方がなかった。


(正気に戻って! ドラゴンさん、お願い、思い出してよ!)


 ドラゴンの赤い瞳が揺れる。奥の金色も、ゆらゆらと揺れる。


(ドラゴンさん、優しかったよ! 他の毛玉を探してくれるって言った! わたし……うれしかったんだよ! 森で、はじめての、友だちだった! こんなのやだよ!)


 ミーヤの魂の絶叫は、果たしてドラゴンに届いているのか……。


 パンパカパーン!


 突然、ファンファーレが鳴り響いた。


《種族を超えた深い友情を確認しました》


《新要素『マブダチポイント』が発生しました》


《対象の『ドラゴン』の精神汚染を確認》


《これより『マブダチポイント』を消費して、対象者の『精神浄化』を実行します》




読んで下さりありがとうございます。


ドラゴンの言葉は、交流可能なケモ耳を持つミーヤ以外には、『***、**!』みたいに聞こえています。

SAN値がピンチですね……。ですがネタバレするので次回予告はやりません!

次話は3/31 12:10投稿です。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ