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【完結・番外編投稿中】正体不明の転生毛玉、人間嫌い皇帝の溺愛ルート入りました  作者: はなまる


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第51話 悪の研究所

投稿には間に合いませんでしたが、追ってあとがきに《次回予告》を入れています。『○話に入っていないよ!』と、教えて下さると助かります。




 軍服の男たちは、問答無用でローマン姉弟を馬車から引きずり出した。


「姉上に触るな!」

「ヨシュアに乱暴しないで!」


 二人が同時に叫んだ。


 だが、男たちは聞く耳を持たない。

 イレーヌ上着のボタンを引き千切ると、毛玉ミーヤを乱暴に引き剥がし、小さな檻の中へと放り込んだ。


「やめて! 毛玉様を連れて行かないで!」

「毛玉様をかえせ!」


 ヨシュアは必死に暴れたが、十歳の腕力ではどうにもならなかった。腹を蹴られて地面を転がる。


「ヨシュア!」


「なんだよ毛玉様って……。笑えるよな。こんな、ちんちくりんに“様”だってよ。アウステリアは、だから気持ち悪いって言うんだ……!」


 ヨシュアを蹴った軍人が、ペッと唾を吐きながら言った。


(イレーヌ! ヨシュア!)


 ミーヤは檻の中でメチャクチャに跳ねた。檻の天井板がゴンゴンと音を立てる。


「おいおい、暴れるなよ。お前さんにはちゃんと役割があるんだ。大人しく眠っててくれよ」


 そう言って、注射針を毛玉の身体に突き立てた。


(……あっ、これ……、麻酔だ……)


 以前、獣医師の治療を受けた時に、ヒューゴのシャツの中でプスリと刺されたやつだ。


 ミーヤは急速に意識が遠ざかった。



   * * *


 獣の唸り声で、ミーヤは目が覚めた。


 暗い室内には動物のにおいが充満している。太い鉄格子の付いた大きな檻がいくつも並んでいる。


 その中には、森の動物たちが閉じ込められていた。


(あっ、あの大猿、知ってる……!)


 大きな群れを率いた、森の奥の大ボスだ。ミーヤは時々感じる気配だけで震え上がっていた。


(あっちの虎も知ってる……!)


 以前、ミーヤの住む森に入り込んで来て、狼たちと大立ち回りを繰り広げていた。狼の襟首を咥えて、ブンブンと振り回していた姿が忘れられない。


(あっちは……! ロボだ!)


 毛玉ミーヤの天敵の、灰色狼のボスだ。他の狼よりひと回りも大きくて、片耳が千切れている。ロボは毛玉には興味を示さなかったけれど、群れの中には毛玉を追い回す狼もたくさんいた。


 ちなみにロボはミーヤがつけた名前だ。もちろん、シートン動物記に出てくる、狼王ロボからもらった。


(ロボまで捕まっちゃってる……。帝国は、何をしようとしてるの?)


 ふと、健康診断の時の、獣医師の話を思い出す。


――――


『実験の内容は?』


『動物を従わせる薬を研究しないかと……』


『動物……兵器、か?』


――――


(せんせい、悪いやつらに悪い研究をしないかって、誘われたって言ってた! きっと、ここがその『悪の研究所』なんだ)


 森の最弱毛玉のミーヤにとって、檻の中の猛獣たちは、確かに驚異だし危険な存在だ。


 だからといって、いなくなればいいとは、思ったことはない。もちろん出会いたくはないけれど、お互いのテリトリーで関わらないで暮らせるならば、同じ森の住人として認めてもいいと思っていた。

 ……なぜか、上から目線だが、野生動物としては正しいスタンスだ。


(みんな、どうしちゃったの?)


 檻の中のボスたちは、とても正気とは思えない様子だ。ダラダラと涎を垂らし、ケージに何度も何度も体当たりして、血だらけになっている。

 ミーヤの知る彼らは、もっと冷静で優秀なボスだった。


(悪い薬を使われちゃったの? も、もしかしたら、わたしも……?)


 ガチャンとドアが開いた。隣の部屋の明かりが暗闇に慣れたミーヤの琥珀色の目を眩ませた。


「さてと、どのくらいで効くかなー。小さいからなー。あんまり多くすると壊れちゃうかも知れないから……」


 汚れた白衣の研究員は、銀色に鈍く光るトレーを持っていて、中の注射器がカタカタと鳴っている。

 ――そしてとても怖いことを言っている。


(いやだ……! いやいやいやーっっっ! 痛いのも、怖いのもいやー!)


 ミーヤは暴れて抵抗した。研究員の手に噛み付いたりもした。だが、研究員は分厚い革の手袋をしていて歯が立たない。


 あっという間にプスリと針を刺されてしまった。


(うぎゃぁー! 刺された! どうしよう!)


 ミーヤは縮こまってフルフルと震えた。あのロボでさえ狂わされてしまったのだ。ミーヤはどうなってしまうのだろう。


「おや? あれ? 暴れない……?」


 研究員が訝しげに言った。


「もう少し、量を入れるか?」


 ミーヤは慌てた。さらに変な薬を打たれては、堪ったものではない。


「プシャー! プイプイ! プシャー!」


 ミーヤは鳴き声を持たない毛玉だ。威嚇する場合は『プイプイ』か『プシャー』の二択だ。


 ミーヤはとにかくプイプイ言いながら暴れた。思い切り跳ねて、ゴンゴンと天井に体当たりもした。


(こ、これで、大丈夫かな? 薬、効いてるみたいに見えるかな?)


 もう、必死だ。コロコロ転がって、ガシャンガシャンと四方の壁にぶつかる。


「ああ、効いてきたみたいだな。よしよし……。あとは1時間ごとに経過観察だな……」


 研究員は満足そうに言って書類にメモを書き込み、部屋を出て行った。



読んで下さりありがとうございます。


ミーヤの『プイプイ』や鼻歌、鳴き声を持たない動物が出すことは可能なのか問題。色々検索して調べた結果、可能です。プシャーとプイプイは猫の威嚇と同等のものです。鼻歌は口の中の空気を吐き出す際に、口の形と大きさを調節して音階を作っています。口笛みたいなものと思っていただけば、そう遠いものではないです。

さて、続きが気になる方はブクマを、面白いと思ったら☆評価を、作者に伝えたいことのある方は感想をお願いします。

《次回予告》

舞台はヒューゴ側へと変わります。

次話『第52話 ミーヤの門限破り』

ここから物語は、駆け足で進んでいきます。



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