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第2節 ノマデビュ2

 少しプラクティスツールでブライアーを動かす。センスが良い。操作に関してもたつくことがないので、多分LoL以外のゲームをやっても普通にうまいんじゃないだろうか。そもそも、キーボードもマウスも全然触ってないであろう人間がこんなまともにキャラを動かせるものなの? 俺はもっと手際悪かったよな……。

「そうそう、WQで入って、五回殴ってWもっかい、いい感じ」

「あーでも確かに簡単かも……アニビアより簡単じゃない!?」

「うん、簡単だと思う。両方癖はあるけど、ブライアーは分かりやすいよね」

「癖ってちなみにさ、何のこと指してるの?」

「アニビアはWが壁を生やすっていう唯一無二のスキルで、これはうまくいけば相手の退路を断ったり出来てめちゃくちゃ強い。一方で、これミスるとめっちゃ味方に迷惑かかる。これは知ってるよね?」

「うん。レーンではガンク合わせでWからのウルトQE、集団戦はむずいので頑張る!」

 鴻乃さんは人差し指を立ててドヤ顔で解説する。良いポジティブさだ。

「そうそう。あと、死んでから発動するパッシブなのとかもね、直接戦闘に役に立つわけじゃないから。で、ブライアーの癖はWを使うと操作不能になるってのが癖。Eでキャンセル出来るけど、クールダウンが長いから、Eがないままタワーの中に突っ込んでったりする事故がある」

「ふむふむ、なるほどね。味方に迷惑がかかる可能性があるからアニビアの方が癖強い、よね?」

「強い」

「りょーかい!」

「ちょっと話変わるんだけど、鴻乃さんって他の人とゲームするときも結構褒められる?」

「んー……」

 めっちゃ微妙な顔をしてる。苦そうな表情だ。

「褒められ……てるのかなぁあれ。あの、めっちゃくちゃなんというか……キモいこと言うんだけど」

 キモいこと?

「ガチでやっちゃうと結構か……いい勝負しちゃうから、普段は抑えてるよ。それで一回空気微妙になったことあって」

 言い直す前なんて言おうとしたんだ? 結構勝ちまくっちゃう、とか?

「まじか……」

「あっ、慧くんとか陽くんはそんなこと無いと思うよ! りりとか大人だし、はるとか結構負けず嫌いだけど。これ中学の話だから」

 具体的な名前が出てきたのは普段彼女がつるんでいるメンバーだ。男二人女三人とかいう、高校青春ドリームパックみたいな集団。

「そんなこと無い、ってことはそのメンバーとやる時は舐めプしてるってこと?」

「言い方わっっっる……! んーなんだろ、楽しくやりたいよね! みたいな?」

 鴻乃さんが少しダークな雰囲気を纏う。

「なんていうか……苦労してるね?」

「ねー。……これを苦労と思っちゃうのが、向いてないんだよなー……」

「向いてない?」

「あ、ごめんこっちの話」

 お、いいぞいいぞ。彼女の闇の一面を垣間見た感じがしてウキウキする。

「……なんでそんなこと聞いたの? もしかして私センスある!?」

 どう答えたものか。一瞬褒めすぎは良くないのかな、とか思ったが、俺は基本的に褒められて伸びたいタイプだ。そもそもLoLはメンタルゲーであり自信ゲーである。過信は禁物だけど、適度な自信は実力を引き上げる。

 無理に褒めることはしないけど、素直に良いと思ったことは良いと言おう。

「うん、あると思う。ゴールドを目指すってのも良い目標だと思う。普通にいけそうだけど、簡単に行けるとも思わないし」

「まじかー……え、やばいめっちゃ嬉しい」

 そういい彼女はぱたぱたと顔の前で手を煽る。こういう、一挙手一投足が可愛いのが洗練されてるよなぁ。最初こそからかわれてるのかな、とか、何か裏があるんじゃないかと緊張していた。今も緊張感はあるけど、それより彼女の人となりが何となく分かってきたし、人生観みたいなものも共感出来るところがあると分かって、素直に彼女のことを対等に見られるようになってきた。改めて、魅力的な人間ってこういう人のことを指すんだろうなと思う。羨ましい、という感じではないが、尊敬の気持ちが出てくる。


 で、ようやく本題の鴻乃さん初ノーマルは、普通に勝利で終わった。

「やっっっ……たーーーー……。勝った射手場くん!!」

「初勝利おめー」

 試合はアニビア対アーリのマッチアップ。試合中に色々言うのも混乱すると思ったので、アドバイスは最小限に留めた。

 このアカウントで最初のノーマル戦だからか、相手も初心者っぽい動きだった。レーン戦では最初こそCSに集中して結構ハラスを貰っていたものの、次第にスキルドッジが出来るようになってきたのにセンスを感じる。そして、QEコンボも上手く当てて、レーン戦は勝利。その後のマクロの動きも基本的には悪くなくて、最終的に3キル1デス4アシスト。素晴らしい勝利だ。

「あ~~~全然CSとれない~~~」

 試合を通しての分間CSは4.6。ただ、10分終わり時点は6切るぐらいまではあったはずだ。それでも、彼女はもう分間CS7を取れるようになっているので不満だろう。

「最初だしね、だんだん慣れてくるよ」

「まあそっか~~。んー、アドバイスありますか、先生!」

「この段階でのアドバイスはとにかく試合に慣れましょうって感じではあるけど……そうだな」

 正直、100試合ぐらいやった方がとにかく早いとは思う。まずは何よりも経験して、その上で何が出来るようになって、何が出来ないのかを明らかにする。基本的なゲームの動かし方は分かってるので、あとはミクロ面での学びを伸ばしていけばまずはランクはあがっていくはず。

「そうだな、相手のスキルドッジもできるようになってたし、良い感じだった。ミクロ面に関しては突き詰めるとこのゲームどれだけ回避出来るかってかなり大事だからね。まあまだ始めたてだし、後々これが出来るようになってくと良いね、ってアドバイスをするね」

「はい!」

「まず一つはマップを見る癖。これはもう常に意識しておくようにして、操作画面とマップを交互に見ることの抵抗を無くす。これも一朝一夕では身に着かないから、最初の頃から意識しておくといい練習になると思う」

「先生、質問があります!」

「はい、鴻乃さん」

「マップぜんっっっぜん見れません!! 見る暇無くない!?」

「そう、俺も使い慣れてないチャンピオンを使うとそうなる。とにかく慣れて、自分のチャンピオン操作に意識を割かずに動かせるようになるのが大事。レーン戦だと、CSとるとき敵ミニオンのHPがまだラストヒット圏内じゃなくてちょっと時間空くみたいな時あるじゃん? そういう時に見るとか、あとは通常攻撃を振ってモーションが出てる間にちらっと見るとかね」

「えーーーそんなタイミングでも見てるの!? 動体視力良すぎじゃない!?」

「最初は敵JGが写ってないか確認するだけでいいと思う。慣れてきたら味方JGがどこにいるかとか、他のレーナーの動きも見れるといいね。味方JGがリコールしてるなら、敵JGに襲われた時2対1になっちゃうからちょっと引き気味でーとか、逆に味方JGが相手の斜め後ろ陣取ってるから今ちょっとアグレッシブにいってもいいなーとか。まあでも最初のうちはとにかく敵JGが写ってないかを見る、って感じでいいと思うよ」

「ほえ~~~なるほどね。このゲームむずくない?」

「難しめだと思う。だから、努力がめっちゃ必要。e-sportsって良い表現だなって思うよ。そういう点はスポーツって感じするし」

「確かに! おっけ~。あとは?」

「あと二つ目は、一番早く成長するのに大事なのがリミットテストね」

「リミットテスト?」

「そう。どれぐらいのHP状況なら相手を倒せるのか、あるいは自分が死んじゃうのか。それって結局、試してみないと身に着かないじゃん」

「うんうん」

「だから、積極的にダメージ交換だったりオールインをして、キルラインとデスラインを見極めるのはまじで大事」

「あー、なるほどね……でもそれって誰だってそうしてるんじゃないの?」

「日本サーバーは結構みんなCS重視で、結構ファイトが少ないみたいには言われるね」

「あーね……でも、CSって大事だよね?」

「めっちゃ大事。ただ、ゲームがうまくなればなるほど操作量と知識が増えて、CSの合間に色んなことが出来るようになってくる。あとCSも結局お金稼いでファイトで勝つためだからね。まあ、色々と状況次第な面が多いから、今は相手と積極的にダメトレしてく心持ちってぐらいの理解でいいよ」

「なるほどねー、了解。委縮してちゃだめってことだね!」

「そうそう、そんな感じ。伝えたいのはこの二点ぐらいかな」

「了解~! で、まずは数回さなきゃって感じだよね? 」

「そうだね。細かいテクニックとかはまた見る時にフィードバックしていくよ」

「おなーいしまーす!」

 と同時に、ガチャ。玄関の扉が開く音。……あ、やべ。

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