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第1節 ゲーマー・ミーツ・ギャル3

 前略、家にギャルが来た。三階まであがるエレベーターの時間は人生の中で最も秒針の進みが遅かった。いい匂いするし。


 そして自室へ。

 母は多分八時ぐらいまで帰ってこないので、あと一時間半ぐらいは二人っきりである。

 そんなことある? どういう展開?

「えーすご! ゲーミングチェアじゃん!」

「お年玉で賄いました」

「PCは?」

「中学の時に親にねだっていただきました」

「へ~~いい親御さんじゃーん」

 家で友達とゲームをするのなんて小学生ぶりだ。そもそも彼女とは知り合って実質一日だし、そういう意味では、というかこんなん当たり前に初めての経験だ。

「えーっと……とりあえず触ってみる? LoL」

「やる!!」

 PCを起動し、LoLのクライアントを開く。

「どこのレーンをやりたいとかある?」

「んー……MID」

「MID」

 花形である。意外と勝気な性格なのか? 意外でもないか。LoLやりたすぎて知らん男の家に上がるぐらいだから。……この言葉はちょっと語弊があるか?

「えーと、やりたいチャンプは?」

「んー……アニビア!」

「アニビア」

 意外性の鎌足とはこのこと。鳥をモチーフにしたメイジキャラだが、派手なところがなく普通に不人気よりのチャンプである。

「なぜアニビア」

「え、鳥可愛いじゃん」

「鳥扱い」

「それにCCあるし」

「ん゛んっ」

 流石にストリーマー推しからゲーム本体の知識まで吸収しただけあって、普通にガチな知識を披露してくる。ガチすぎてむせた。

 このゲームは回避ゲー。相手のスキルをかわして、自分の攻撃を当てれば勝てる。

 裏を返せばCCクラウドコントロールゲーでもある。相手が避けられない行動不能にできるスキルをいっぱい持ってる方が強い。

「なるほど……。けどこいつ……まあいいか。いきなり実戦だとあれだから、まずプラクティスツールでちょっと動きを確認してみよっか。それでいい?」

「おけ。CS(金稼ぎ)練習ね?」

 いきなりCS練習すか!? なんか、普通に教える必要無くない?


「ああー! んんんん! えーーーーー今のダメ!!??」

 と思ったけど、ありそうだった。ガチで初心者だった。

「まあそうだよね。アニビア、ラストヒットむずいもんね」

 このゲームはネクサスという建築物を攻撃して、そのライフをゼロにすることで勝利するゲームだ。そして、その建築物を攻撃するには、相手を倒して復活するまでの間か、相手が生きている間に強引に建築物を殴るかしなければならない。めちゃくちゃひっくるめて言うと、相手より強くならなければならないということだ。

 もちろん自分の操作ミクロがどれぐらい上手いかもそうなのだが、一番手っ取り早く強くなるのは、金を稼いで装備で殴ることだ。

 金稼ぎの最も基本となるのが、三十秒に一回沸いてくるNPC・ミニオンのトドメの一撃を自分でとること。倒した敵の数を指すCSクリープスコア、あるいはトドメなのでラストヒットと呼ばれる。トドメの一撃というのがキモだ。

 アニビアは鳥モチーフのチャンピオンで、DPS(継続火力型)メイジに分類される。このゲームにはダメージの種類がAD(物理)AP(魔法)の二つあり、魔法系のチャンピオンはスキルの威力が高くなる反面、通常攻撃の威力は低い。一方、物理系のチャンピオンなら装備が整うにつれて通常攻撃の威力が大きくなっていく。

 そもそも、魔法系の遠隔レンジドチャンピオンは通常攻撃をクリックしてから相手に攻撃が届くまでの時間も長めだ。

 ならばスキルでラストヒットをとる――となると、序盤はマナの上限が低いためすぐに枯れてしまいスキルが撃てなくなる。そうすると敵チャンピオンから攻撃されてもスキルで反撃できなくなってしまい、そうすると相手より先にリコールしなければならなくなり、結果的にCSを失うと。

 経験者はどうするかというと、基本的には通常攻撃でラストヒットをとり、どうしてもとれない奴にだけスキルを撃つ。メイジはラストヒットが難しいため、初心者からすれば難易度が少し高い。


 わーきゃー叫んでいる鴻乃さんに時々アドバイスを出している間に、目安となるゲーム時間十分を過ぎた。CS26。

 アニビアは通常攻撃のモーションがあまり良くないチャンピオンの一体で、当然初心者が使うとまあこうなるわな。目安は70とれるように頑張ろうね、なのでその半分以下である。

「……まあ、最初はこんなもんかな」

「むううう……なんか普通に悔しい……もっかい!」

「おお……」

 序盤こそ全然うまくいかなかったが、後半は経験値も積み、集中して通常攻撃でラストヒットをとれるようになっている。出来るようになってくると楽しくなるよね。

 とはいえ、こんな地味な作業を続けたいと思える地球人がそう多くいるとは思えないので、少し驚きだ。

「……おっけ、じゃあプラクティスだと巻き戻して最初に戻れるから、もっかいやるか」

「りょかい。……ってかごめん! これまじで何の会!?って射手場くんなっちゃうよね?!」

「ああ大丈夫、その段階はもうとっくに過ぎたから。今は鴻乃さんがどこまで続けるのか賭けをしてる」

「誰と!? いや、ごめん……冷静に考えて私ヤバいよね……」

 冷静に考えないとヤバいって気付かなかったんだね。多分鴻乃さんじゃなかったらそもそも家に上げてないぞ。俺の下心とあなたのヤバさで今成り立ってる会だよ。

「でもやってみたかったんでしょ?」

「そうなんだよね! 全然まだまだやりたい!」

「変わってるね……。鴻乃さんってゲームとかするの?」

「え、するよ! FIFAとか、カタンとか、太鼓の達人とか!」

 陽キャゲー……。ていうかカタンとかやるグループなんだ。うらやましいんだが。

「それ皆で集まってる時だよね? 一人でゲームすることある?」

「あー……あんまないね。なんかたまにスマホのオウム世話するみたいなアプリはやってる」

 ゲーマー基準だとゲームに入らん……。

「ゲームする習慣無い子がLoLやろうってなってるの、多分ちょっとした奇跡だな……」

「確かに。プラウドさんのおかげだー」

 プラウドさんすげえ……人気ストリーマーすげえ……。

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