最終節
黄金に輝くエンブレムと、昇格しましたという文字。
それは、四年前に憧れた最高位への到達を意味していた。
チャレンジャー。上位五十名の証。
ゲーム終了画面で一分ほど、勝利の余韻に浸った。
画面をスクショして、鴻乃さんに画像を送る。
『チャレンジャーにあがりました。明日、鴻乃さんのことを教えてください』
0時半だったが、鴻乃さんから返信が来る。
『すごすぎ!!!おめでとう!!』
そして、シマエナガがびっくりしてるスタンプの連投。
『わかった!明日楽しみにしてるね!!』
土曜日、待ち合わせ場所は俺の最寄り駅。
迎えるよりも遥かに送ることの方が多いこの場所で、本日は鴻乃さんを迎える。
「はろ~」
駅のすぐ外で待っていると、鴻乃さんが手を控えめに振りながらとてとてと駆け寄ってくる。可愛すぎるな?
電車が暑かったのか、ファー付きの白いダウンは開いており、下に青い厚手のワンピースが見える。外が寒かったのか、すぐにダウンを閉めると、もこも鴻乃さんの完成。肩に下げてるちっちゃい鞄はオレンジ色で、靴は厚底の黒いブーツ。なんか洗練されてる感じ。俺は靴と上が白だけど、ダウンを閉めるとほぼ黒だ。色彩の圧倒的ギャップ。
「チャレ!!おめでとう!!!ございます!!すごすぎ!!!」
「あざっす……」
にやにやしながら鴻乃さんが尋ねる。
「射手場くんって、LoLうまい?」
少し考える。
「まあまあかなりうまい」
「え~!? なんでまあまあ!?」
「……このゲームの最高ランクがなんでチャレンジャーって名前なのか、知ってる?」
「えっ確かに! なんで!?」
「一つは、プロに挑戦できるランクだから」
実際はチャレじゃなくても挑戦できたりはするけど。
「もう一つは勝手な解釈だけど、上達には上限がなくて、どこまでも挑戦だから。その最も高みにいるから、挑戦者」
「えーーーなにその……めっっちゃかっこいい!!」
鴻乃さんはこの話を気に入ってくれたみたいだった。良かった。俺も、このゲームの最上位の名前は凄く気に入ってる。
「その話も今日たっぷり聞くぞ~。てか厚着して正解だ~、まだまだ寒いね!」
「ね。十五分ぐらいの喫茶店だからちょっと遠いけど、よろしくお願いします」
「全然だいじょぶ! 厚着して来たから!」
道中、まずはチャレンジャーになったゲームの話をする流れになった。
「結局ムニエルゲーでした」
「えっ、昇格戦ムニさんとだったの?」
「あの人がいる方が勝つゲームと言っても過言じゃない」
「流石だね~ムニさん」
夏休み以降、鴻乃さんもムニエルさんの活躍を動画とかで追うようになってるみたい。ちょっとしたムニガールである。
喫茶レフュージに辿り着いた。彼女と来るのは二回目である。
「アイスのキャラメルマキアートで」
「あ、私も同じので!」
「……まだ冬なのにアイス?」
「え、なんで射手場くんが聞くの……? だって室内暑いじゃん」
「同じ理由だった」
飲み物が届くまで会話が途切れる。
なんだろう。……緊張してきた。
ここで気の利いた話題でも振れればいいんですけどね。できないんですよね。てか、そういえば――口を開こうとして、鴻乃さんに先手を取られる。
「……そういえば、あの時もアイスのキャラメルマキアートだったね」
「……初めて会った時の喫茶店?」
そう言うと、鴻乃さんは嬉しそうに口角をあげる。
「すごーい、よく覚えてたね?」
「そっくりそのまま返しますよ?」
ふふ、と鴻乃さんが笑う。
「あれは、私のチャレンジだったからね」
「知らない人に声をかけるのが?」
「ぶっちゃけそうだよね?」
「ぶっちゃけなくてもそうだね」
急に照れ臭くなる。鴻乃さんのあははと笑う声を聞いて、微笑んだ顔を見て、自分の気持ちを自覚して、恥ずかしくなる。ああ、恋するって、こんな感じだったな。
「最初の時にさ――」
喋ることは用意してきたけど、それよりも素直に話したいことを話す。だからどうしてもテンポは悪くなってしまうけど、鴻乃さんは少し緊張したような、けれど優しい顔で、俺の言葉を待ってくれていた。
「俺が学園生活を捨ててることに負い目があるって話したの、覚えてる?」
「うん。覚えてるよ」
「俺はLoLに集中してるから、学園生活を捨ててる。取捨選択だって。その選択が間違いだったとは思ってない。なぜなら、そのおかげでチャレンジャーになれたから」
「うん」
「で、そのおかげで、LoLの方はひとまず、一つ成し遂げたって思っていいかなって」
「それは、間違いなくそうだね」
「だから、今度は学園生活……っていうとあれだけど。……いや、もっとアレな言い方するんだけど、リアルライフの方を、チャレンジしたいなって思ってる」
「……うん」
「俺にとって、鴻乃さんはリアルライフのチャレンジャーだと思ってる」
「……ほうほう?」
「こ、今度こそ最初に言っておくと! この流れでおかしいかもしれないけど、告白ってわけじゃなくて!」
「う、うん?」
なんか、次のセリフ大丈夫か? 一息いれる。
いけるかわからないときは、いくんだよ。
「俺のリアルライフへの挑戦の、コーチになってくれませんか?」
鴻乃さんは大きく目を見開き、めちゃくちゃまばたきをする。しかも全然言葉が返ってこない。多分めっちゃ色々考えてはくれてると思う。
やばい、慌ててきました。な、なんてフォローすればいいだろ。――あたふたする俺に、少しボリュームのあがった声で鴻乃さんが口を開く。
「だから、私の色んなことを教えて欲しいってこと?」
「……そうです」
にまにまとした笑いが、抑えられず、という感じで笑い声に変わる。
「あはっ、あはははははっ!」
この笑いイズ何。
一通り笑い、カフェラテを飲んで、きりっとした笑顔で鴻乃さんは言う。
「いいよ、任せて!」
色々と頭の中をぐるぐるしていた言い訳がどっかに飛んでいく。
鴻乃さんの笑顔が。
はじめてCSが70を越えた時の、あるいはゴールドに昇格した時のような、眩しくて弾けるような笑顔が。
美しくて見とれてしまうなんて、人生で初めてだった。
LoL、チャレンジャー昇格。目標完了。
恋愛、プレイ開始。
こっちでも目指すぞ、チャレ。
終
あざした。
LoL関連の知識をまぶしつつの青春ラブコメ、作りて~~~~ってなって書きました。
あとLoLプロ日本勢に希望を……。
俺のレートと知識が大幅に足りてないので、ディテールの描写とか間違ってたりするかも。
そういうの見つけたら教えてください。
読んでくれてありがと!!




