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第6節 変化の秋2

 まず最初に1vs1から始めてウォームアップをする。

 ルールは2デス、またはタワーが折れたら負け。

「アーリは?」

「おけ!」

 今日はアーリで。オーソドックスなマッチアップだ。


 もうすぐコーチングを初めて四か月、鴻乃さんのミクロはかなり上達してきている。今ではすっかり経験者の動きになっていた。

「コーチ!! この距離でフラッシュQに反応出来る人シルバーにいませーーん!」

「いるかもしれないじゃん」

「いないって!」

 それでも結果は十二分で二キルして勝ち。まだまだだね。

 CS差は112vs74。普通に1vs1として「やってる感」のある数字にはなってきているし、俺ももうそんなに手を抜いてない。

「逆に、これに慣れてくるとランクの対面は結構隙があるなって感じするんじゃない?」

「結構ソロキル出来る回数も増えてきたよ!」

「ね、そんな感じする。めっちゃいい」

「やったー!!」

「おし、今日はリプレイある?」

「あ、一個見て欲しいのがあって――」

 次に観戦モードでリプレイを見て、どの行動が最適だったのかをフィードバックする。


「あー、これはこの動きで正解だと思う。バックピンもめっちゃ炊いてるし」

「でもこれで味方壊滅してるから不正解じゃない?」

「あとTPが二十秒でしょ、でアンベにTP無くて、ボットセカンドを叩けてる。だからこれは二十秒味方が絶対に待ちたいよね……っていうのが最適な動きで、じゃあこれ自分もバロン向かうべきだったのかだけど、ちょっともっかいリプレイ見して。あー……えこれ……はーレナータのフェイスチェックね。W撃たずに死んだー。何やってんねん。これさあ……一緒に行ってもデスが増えただけじゃない?」

「……でもバロンは止まった可能性ない?」

「あるけどさ、そもそも相手こんなCCの無い構成で何キャッチされてんねんって感じだよね。このリプレイに対する回答なんだけど、まず味方がキャッチされる確率が高くて、自分がいたら勝てる場合は行くのが正解。今回どうだったかわかんないけど、割とピンを聞いてくれて、時間作れそうなら下押すのが正解。バロン触ってても相手遅いし全然間に合いそうだったね。実際どうだった?」

「割とちゃんと聞いてくれてはいたから、なんでファイト起きた?って感じだったけど……」

「まあ味方がやらかしたね。でも、それなら下押して有利広げるのが正解だと思う」

「んーおっけー……。でも、なんかダルくないこういうケース?」

「ぶっちゃけマスター帯でも普通にあるから、まあしょうがないよね。ボイス繋いでるわけじゃないし」

「そっかー……」

「基本自分に何が出来たかで考えた方がいいって言ってるけど、ここはこの行動で正解だと思う。他に疑問ある?」

「んーまあ分かった。これレートあがっても付きまとうってこと?」

「もちろん少なくはなってくよ」

「まあ、そっか。ならいいや」


 鴻乃さんのランクがはじまったので、ようやく佐鳥と会話する。

「なんか……思ってたよりガチじゃん……」

「そうだよ。なんだと思ってたの? いちゃいちゃでもしてると思ってた?」

「思ってた」

 なわけないだろ。

 佐鳥は少し引いていた。まあ、そりゃそうなるわな。

 それにしても鴻乃さんの佐鳥に対する当たりが凄い。けど、それが逆に仲の良さって感じがして少し嫉妬します。

「LoLは今日知ったんだっけ?」

「そう」

 まじの初心者だなあ。

「ぶっちゃけどう? 少しだけ見て、面白そうな感じはした?」

「なんかむずそうだけど、普通にアクションゲーだよな? 面白そう」

「普段はゲームとかすんの?」

「全然するけど、PCゲーはしたことないわ」

「なにすんの?」

「割と色々。BFとかもするし、エペもやってたし、スマブラとかもやる」

「PSもスイッチもどっちも持ってんの?」

「あたぼうよ」

 お、意外とめっちゃゲーマーかこいつ? まさかの親近感が湧いてきた。

「パソコンって触る?」

「全然触らん。授業で触るぐらい」

「なるほどねー……。まあ、まずは鴻乃さんの試合見て解説していくか。鴻乃さん、ディスコで画面共有いい?」

「むー……なんか、こんな感じで見られるの恥ずかしいんですけど。……はい、共有した」

 鴻乃さんの画面をスクリーンで映しながら、簡単なゲームの解説をする。


「——一旦説明としてはこんぐらいかなあ。まあ、大体こんなもん」

「むずくね?」

「むずい」

「おすすめのロールは?」

「まあぶっちゃけ、面白そうなところに行けばいいよ」

「ゆずはミッドだよな? 射手場は?」

「俺はADC」

「じゃめっちゃ操作に自信あるってこと?」

「いや、たまたま触ったエズが楽しくてやってたらそのままランク盛れてADCになった、って感じ」

「ほーん……てかゆずミッドってめっちゃ花形やんな?」

 ちょうどリコールしてレーンに戻る最中で暇な鴻乃さんが答える。

「そだよ~」

「へー……ちょっと意外」

「ね?」

 本人のその返答は何。でも佐鳥にとってもやっぱ意外なんだな。

「ロールだけど、キャラで選ぶのも丸いかもな。鴻乃さんもアニビアっていうやりたいキャラがいたし」

「キャラ多過ぎね? これ全部覚えてんの?」

「やってるうちに覚えてく感じだよ。最初は分からん殺しされまくる」

 とりあえずでJP Wikiとyoutubeを行き来する。

「えーーーこいつかっこよ。……うわ、これもいいな」

 どうやら佐鳥はファイター・アサシン系に惹かれているようだった。

「うわ、やっぱこいつやりたいわ! ゼド!」

 うお。

「え? 陽くんゼドやんの?」

「えダメなん?」

「べつにー」

「えなんで?」

 集団戦が始まる前で鴻乃さんからの返答が途絶える。

「たぶん、同じミッドだから反応したんじゃないかな」

「あ、こいつミッドのキャラ?」

「最近ジャングルに来たりもするけど、まあミッドだな。とりあえずこれ?」

「いいっすかコーチ?」

「いいんじゃない、ピンと来たなら」

「強い?」

「強いよ。強くなれば強くなるほど強くなるから」

「すまん、日本語で頼む」

 そうですよね。

「……このゲーム、基本的にはどのキャラにも強みと弱みが設定されてるわけよ。序盤強い、後半強い、とか。あと敵に触られなければ強い、逆に敵に触られると強い、みたいなね? 大体二週間に一回、バランスをうまく調整するためにキャラのステータスとかを強くしたり弱くしたりするんだけど。で、強さの種類の一つに、『そもそも上手くプレイするのが難しいけど、かわりにうまく操作出来たらめっちゃ強い』、みたいな上級者向けキャラクターがいるのよ。ゼドもそれ」

「えーなにそれ、めっちゃ燃えるやん」

「まあ、前置き長くなったけどまずプラクティスで触ってみるか」

 鴻乃さんの時と同じように、プラクティスモードを起動して一通り説明する。


「まずは動きとしてはこんな感じかなあ。じゃあどうぞ」

「ほい。……うおーすげえ、ゲーミングなんちゃらって奴だ」

 俺は光り物が鬱陶しく感じるタイプなので、あんまりデバイス類は光らない方ではあるが、それでも光っちゃうんだねえ。マウスとか。

「とりあえず適当に動かしてみて、でそのダミーでコンボ練習が出来るから」

「WEQ、だっけ?」

「そうそう。シフトXとシフトCでスキルのクールダウンとマナ自動回復があるから、それでどんどん練習出来るよ」

「はい先生、シフトXってなんすか!」

 PC初心者やりづれえ……。


 大体一時間後。

「よっし、勝ったー!」

 鴻乃さんは快勝。特に気になる点も無し、完勝ですね。

「GG、ナイス。フィードバックなしです」

「いぇーい! 陽くんは?」

「CS練習してる」

 すると、画面に向き合う佐鳥が拳をあげる。

「うっし! できた! CS71!」

「えまじ?」

 画面をのぞき込む。本当だ、CS71とれてる。

「え……うそ」

 鴻乃さんも左からのぞき込んでいた。

「俺天才か?」

「まじで天才かも」

 実際普通に凄い。最初マウスクリック速度があまりにも遅すぎた人と同一人物とは思えない。

「えー陽くんすご、めっちゃセンスあんじゃん」

「あざすあざすあざす……」

 褒めつつも、鴻乃さんの表情は固く見えた。悔しい……んだろうなあ。出たな意外と負けず嫌い。

「んじゃ佐鳥、最後に1vs1やってみる?」

「え射手場と?」

「うん。でも、ガチでやるんじゃなくて、動く相手にスキルを当てる練習で」

「え、やるならガチでやろうぜ」

 お、調子乗ってるなこいつ。

 ちらりと鴻乃さんと目が合うと、やっちゃってくださいよみたいな悪い笑みを浮かべていた。ギャルの貴重な暗黒微笑だ。

「……いいよ、どのチャンピオン相手がいい? 同キャラとか?」

「ならいい感じの勝負になる奴で!」

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