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ローゼンカヴァリエの見えない傷と結晶  作者: 木村 巴


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8話




 そうして、隣国で無事に出産した。



 出産までも色々な事があった。



 私は隣国に到着してから、メアリーの侍女として仕事をする様になった。

 侍女の仕事と言っても、メアリーの話し相手と隣国の言葉を教えるのが主な仕事だった。

 メアリーは一応はこの国の言葉を話せたが、流暢に話せる程では無かった。


 さらにメアリーの嫁いだ大商家は、今年は爵位を受けられそうだという。そのため、旦那様も彼女もそして使用人達もマナーを学び直したいというので、マナー講師としても働きだした。



 私はメアリーと同じ男爵令嬢だったが、そもそも辺境伯家で高位貴族教育を受けて育ち、さらに王妃様にマナーもみてもらっていた。


 こんな時に、あの王妃様のお茶会が本当に役に立った。


 高度な貴族マナーを教えて貰えると、私の噂を聞きつけた他の貴族からも講師依頼を貰うが、出産を控えているためと言って全て断っていた。

 ……本当は私の素性がどこかでバレてしまうのが心配で、なるべく人に会いたく無かったからだった。

 ただ、こんなに需要があるならば産後はマナー講師として生きていくのもいいかもしれない。そんな風に考えていた。




 私の子供は、予定日を過ぎてもなかなか生まれなかった。不安もあったが、早くこの子に会いたかった。


 お腹の中のこの子が私の希望だ。


 そんなある日、いつも通りにメアリーとお茶をしながら言葉の勉強をしていたら……陣痛が始まった。


 聞いていたように、痛みが引いたり、もう生まれるんじゃないのかと叫びたくなる程の痛みが来たりした。

 波の様に痛みが来ては消えを繰り返し、一晩中痛みで苦しんだ。

 そうして夜明け頃に、可愛い可愛い娘が生まれた。


 出産自体は、こんなに大変モノなのかと心底思ったけれど、乳母さんや産婆さんに言わせるとものすごい安産だったらしい。

 普段から身体を鍛えていたからなのか、辺境の女は強いと昔から言われていたから、そのせいかなぁと呑気に思った。


 それにしても、驚く程に大変だったが……これで安産なのか。



 その後は、もう乳母さん達とばあやさんにおんぶに抱っこ状態で完全にお世話になってしまっていた。

 騎士として働いていたけれど、私はやっぱり貴族令嬢で一人で生み育てる事なんて出来なかった。いや、いざとなったらどうだろう。今は考えてもしょうがないが、この幸運に感謝した。

 一月は床上げせずにいた方がいいと言われて、甘えさせてもらっている。


 出産を控えたメアリーと旦那様が毎日私の子供を見に来ては、楽しそうにしているのもしあわせだ。


 私自身も剣を握らない生活は初めてだったが、子供と過ごすかけがえのない時間だった。


 生まれた赤ちゃんは本当に可愛いらしい。いい匂いがして、ふにゃふにゃしていて、私が守ってあげなくていけないと毎日、毎秒に思う。




 出産するまでは……夜中に、そして日中に、ふと彼を思い出しては涙がでた。


 今はこの子がいるから平気だ。


 ずっと顔を見ていられる。可愛い。天使の様だと思う。


 娘は、彼にそっくりだった。髪も甘いミルクティー色で、蜂蜜のような甘く可愛らしい瞳だ。顔立ちは私に似ているが、色は完全に彼の色だ。


 隣国で、彼に会うことはないから見つからないと思う……しかし、一目みたらわかってしまうほどに彼の色だった。



 ……彼の色でよかった。

 私の髪色は生国でも珍しかったが、居ない訳でもなかった。しかし、この国ではほとんど見ない。

 だから目立ちすぎるために、魔法で染めている。本来は魔法をかけて貰うのに料金がかなりかかるが、私は自分でかけられるし、妊娠中や授乳中に染め粉は子供に何かあったら危険だと聞いて、ずっと魔法で染めていた。

 デメリットは高位魔法師には魔法染色だとバレてしまうため、身分を偽っていると誤解されたり、犯罪者だと疑われる点だ。


 まぁ、私は前者だが屋敷内からでなければバレない。


 この子の為に出来る事を今のうちに考えておこうと、また決意した。




 メアリーの子供は少し早めに生まれたためにほとんど同時期に生まれた。私の娘と半月も違わない。

 そのため、同じ乳母さん達に一緒に面倒を見てもらいとても助けて貰っている。



 メアリーの息子が生まれて少ししてから、旦那様が私の部屋に一人でやってきた。


 旦那様が一人でくるのは、珍しいので少し緊張してしまう。





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