4話
アベルは騎士学校を首席で合格したという、王都でもすでに名の知れた魔法騎士様だった。
向かい合って、剣を構えた時点でわかる。
──この人は強いと。
向かい合った瞬間、一瞬だけ動揺が見えたが……それもすぐに消え、騎士として向かい合い剣を構えてくれたのを感じた。
良い騎士だ。
それでも、魔獣相手に剣を振るってきた私は首席騎士様相手にも互角に戦った。
攻撃魔法も身体強化も……実戦で使ってきたのだ。私の辺境騎士団での経験が、強敵相手でも生かされた瞬間だった。
それでも、連戦による疲労の蓄積と体力の違いだろうか……いや、試合形式の対人戦の経験不足か、少しずつ押されている気がしていた。
この人は、本当に強い。
思ったより長期戦になり試合規定の上限時間となった為、試験のルールである判定に持ち込まれた。
結果……判定負けを貰ったが、まずまずの戦果だろう。先程まで私を見下していた同期達や見学者達が、尊敬の眼差しで見てくるのでよしとしよう。
ふぅと、一つ息を吐いてから、高く結んでいた髪と緊張を解いた。早く隊服も脱いで、お風呂に入ってしまいたい。
一人一人にわからせる必要が無くなったのはラッキーだった。もう今日は寮に帰れそう。
そう思い頷いていると、先程の首席様がこちらに歩いてくる。
なんだろう?
「素晴らしい戦いだった。ありがとう。まさか、試験でこんなに心躍る試合が出来るなんて思いもしなかった。私はアベル・マクラーレンだ。同期だし、アベルと呼んで欲しい」
そう言って、輝くばかりの笑顔で手を差し出す。おお、都会の騎士様は違うなぁ、なんて関係ない事を考えながら、私も握手に応えた。
「ありがとうございます。私は辺境騎士団から来ました。ミシェル・フォレスターです。どうぞミシェルと」
「ああ、ミシェルよろしくね」
こんな美形に微笑まれてしまうと、いままでになく……なんだかときめいてしまう。
辺境の騎士団とは人種が違うのか?
王都の騎士団は本当にすごいな、と思ったのが印象的だった。
こうして働き始めた王立騎士団には、女性騎士の数が限りなく少ないという事実に最初はかなり驚いた。
都会の女性は、騎士を目指したりあまりしないらしい。現在在籍しているのは騎士家系の数人がいるだけだった。同期は一人しかいない。
そして騎士団首席入団者と同等の力を持つような女性騎士は、私しか存在しなかった。
そのため私は、近衛騎士の中でも重要ポストにいきなり就く事となり、忙しくなった。
王妃様や王女様達の護衛だ。
基本的に護衛任務で城内から出ないが、私の見目を気に入ってくれた王妃様や姫様達からそれぞれ専属の打診も受けていた。
辺境領ではたまに見られる色合いだが、王都では珍しい……ローズピンクの髪に、ペリドット色の瞳で、見られる容姿というか、美しいと見られている……らしい。
まぁ……だからこそ、私も姉も自分の身を守れる様に、幼い頃から辺境の養成所に通い鍛えたのも理由の一つでもあった。
話しがそれたが、色合いの珍しさもあり強さもあって、護衛としておいて置きたいと殿下方に強く希望されている。ありがたい。
とりあえず喧嘩にならない様に、大きなイベントや式典に出席する殿下を優先して護衛するという方針で決まったようだ。
更には私専用の騎士服や、式典用の騎士服まで作成しているらしい。
姫様達が楽しそうならば、私は何でもいい。騎士服はたくさんあっても困らないし、辺境でもビアンカ様が私の騎士服を決めていたので良くある事だと思った。
アベルはその実力で第一騎士団に入り、たまに合同練習等で会えば話したり、また王城で会えば向こうから会いに来てくれたりする……そんな仲だった。




