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ローゼンカヴァリエの見えない傷と結晶  作者: 木村 巴


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3/13

3話




 辺境の春はまだ遠く、吐き出す息で私の髪が凍る。

 突き抜ける様に吹く風は、雪解け間近とは思えない程に冷たく痛みを感じるものであった。


 私は住み慣れた部屋から早めに出て、厩舎の愛馬達や遊びまわった裏庭などにも別れの挨拶をしていた。

 そして、早番の使用人達やすれ違う人達にも軽く挨拶を交わしていく。


 すでに激励会という名の送別会も盛大にしてもらい、荷物だけでなく心の整理もついているはずなのに……故郷を出るさみしさなのか、なんだか落ち着かずにいた。


 それでも、見上げる程に大きい辺境の城を見上げて、大きく深呼吸をした後、城に向って深く一礼した。



 ここで生まれて、ここで育った。



 ──私はここで生きていくのだと、そう、思っていた。








 出立の朝は早朝にも関わらず、家族や辺境伯一家それに騎士団の仲間までが見送ってくれた。涙はなく、皆に笑顔で「王都で、辺境騎士団を代表して私の実力を見せつけてやってきます!」と宣言してから、馬車に乗り込んだ。


 寒さにかじかむ指先で、強く荷物を持ち私は前を向いた。




 遠くなっていく故郷(ふるさと)の景色を眺めながら、ぼんやりと最近の出来事を思い出す。


 辺境伯夫婦にも両親にも、そしてヘクター様やビアンカ様にもかなり謝られた。


 けれど私は、別にヘクター様が恋愛として好きだったわけでもないし、王都の騎士団にも興味があったから「そんなに謝らないで」と笑顔で返事をしていた。


 ヘクター様とビアンカ様は、なぜか複雑なお顔をしていたのが気になるけれど……私達は兄弟みたいに育ってきたから心配してくれているのだろう。


 王都のような都会で、田舎者の私が上手くやっていけるのかという不安は拭えないけれど……辺境伯様から騎士団入団の紹介状も貰ったし、私は気持ちも新たに王都に向かったのだった。



 辺境に住む私達には、王都は遠い。数日間かけて到着した王都は、人の多さばかりではなく匂いや風までも違う気がした。

 花は満開に咲き乱れ、道は美しく整備されていて街並みも美しい。

 ただ……こんなに人が多いのに、私は一人だった。


 まったく知り合いもいない王都の生活に、不安がない訳ではなかった。

 けれどある種、王家の都合によるものなので、騎士団の転勤という扱いにしてくれてあった。

 そのため騎士団の所属試験の前から騎士団女子寮という名の屋敷に住むことが許され、衣食住に困る事がなかったので助かった。寮には誰も住んでおらず、使用人は私の専属の様だ。



 今回は異動の扱いだったが、そもそも王都の騎士団と辺境の騎士団で異動などない。特例だ。

 だから実力を示す為にも、今年度の入団試験を受けると伝えておいた。その方が不正や贔屓での入団と侮られる事もないだろうからだ。



 入団試験で、まず驚いたのは私が最年少だという事だった。

 王都では騎士学校があり、そこを卒業して入団試験を受ける資格を貰えるらしい。なので、同期はみな十七歳かそれ以上だった。


 辺境騎士団では、騎士団の養成所で鍛錬とともに実戦もあるので幼少期から所属できる。そして、実力いかんで正式所属となるのだ。そのため十三歳頃から正式に騎士として働いていた私は、決勝まで余裕で勝ち進んだ。

 もちろん辺境伯騎士団からの異動だし、紹介状付きなのでシード権を持っていたが相手は年上で手練れだ。

 最初は相手が、女で十五歳だと私を侮っていたので、そこを利用して楽に勝ち進んだが……さすがに決勝戦は厳しい戦いだった。


 そしてその決勝の相手こそが、彼──アベルだった。








やっとヒーローきました(*´ω`*)

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