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ローゼンカヴァリエの見えない傷と結晶  作者: 木村 巴


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1話

短めで終わります!楽しんで頂けます様に(*´ω`*)




「うそ……」




 ああ……私って本当に男運がないのかも。

 ざわめく街の雑音も全てかき消え、私は信じられない思いで…………その光景を、ただひたすら見つめ続けた。 






 ずっと憧れてた彼とのあの一夜だけで、どうやら妊娠してしまったと気がついたのは、つい先日の夜。


 きちんと彼にも話をしないといけないとは、思ったんだけど……



 そもそも、なぜあの日あんな事になってしまったのか……

 合意だった?

 あの人に私への気持ちはあったのだろうか?

 そして子供が出来たと伝えて、一瞬でも迷惑そうな表情をしたら……



 そう考えると、どうしても勇気がでなくて……こんなの私らしくないって思うのに、ずるずると日にちだけが過ぎて行く。


 言おう言おう、話そう話そうと思う程、彼の顔を見ただけで怖気づいてしまう。

 彼の声が、遠くから聞こえてきた時点で逃げ出してしまっていた。


 よし! 彼も私も非番の今日こそ、ちゃんと話そうと意気込んで家を出たのに……


 今、目の前に広がる光景を見て愕然とした。




 彼が……任務でもあまり女性に話しかけたり微笑んだりしない、その人が。

 そんな彼が……優しい笑顔を見せて女性をエスコートしているなんて…………


 それはまるで、お芝居のワンシーンを見ている様だった。


 ふわっと吹いた風を受けて、サラリと舞い上がる髪を抑えている。いつもは剣を持つその力強くも繊細な指で、髪をなでつけると、美しい容貌がよりいっそう際立った。


 彼はミルクティー色の少し長めの髪を風に遊ばせて……蜂蜜色の瞳で彼女を見ている。

 騎士らしい引き締まった体躯を、いつもより簡素な服に押し込めてプライベートな装いだ。

 それでも彼の魅力は簡素な服に押し込められておらず、周囲の視線を独り占めしている。



 彼女の手をとり、微笑み合う。その適切すぎる距離が、彼女を大切にしている証拠の様に感じた。

 周囲の人たちはそれぞれにため息をこぼし、感嘆の声をあげる。私もその一人だ。


 このワンシーンの……ただの景色。

 私は背景の一人なんだ、と急激に理解した。


 まるで王子様の様に整ったその容姿で、王立騎士団の中でも彼は一際輝く存在だった。

 そんな彼が入団以来、仲よくする異性は私だけ……よく周囲から付き合っているのか、と聞かれたっけ。


 そんな事実はなかったけれど、この三年間仲よくしてきて…………



 私は彼が好きだった。




 でも…………


 ああ、やっぱりあの日の事は間違いだったんだなって。


 どんなに悲しくても……ここで涙を流す事だけはしたくなかった。



 私はきつく唇をかみしめて、静かに何もなかった様に……王都の街並みを背に、自分の家へ急いだ。





 ────これは作戦の五番で行くしかない。




 そう覚悟を決めて、私は昨日いくつか立てた作戦の中から、一つを速やかに実行に移しにかかり…………


 一年後、無事に可愛い女の子を密かに出産する事に成功したのだった。





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