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5.この世界の虫事情(お礼の小話)

少しだけ、虫に注意です。



カルメの授業を終えて、そろそろ休憩だなと思い、席を立つ。


先導するカルメについて行き、彼女が扉を開けようとした時、ふと向こう側の部屋が騒がしいことに気付いた。


どうしたのだろうと思いつつも、カルメがドアノブに手を掛けた時、扉がノックされた。


「はい」

「カルメ殿。執務室で虫が出た。暫く、この扉は開けぬようにして欲しい。オデット様には、そちらで待機して頂きたい」

「畏まりました」


扉越しに伝えられたのは、そんなことだった。

カルメは何かに納得したように頷いて、私を席に誘導した。


私は何となく、椅子に座って、カルメを見上げる。


「カルメ。虫、って昆虫のこと?」

「はい」

「何か、危ないの?」

「いえ、えぇと、そうですね。虫という存在は、外の世界にはありふれたものです。危険な毒を持つものから、か弱い存在まで、様々な虫がいます」

「うん」

「ですが、この協会の建物には結界があります。この結界は、内部に虫が入らないようにする効果も含んでいます。ですので、そんな協会内に、虫が出た、ということは、意図的に持ち込まれたものになります」

「うん……」

「更に、ルクス様の執務室に出た、ということは、お手紙や贈り物に入れられていた可能性が高いです。そしてそのような場合は嫌がらせや、悪意によることが多く、毒を持つ虫を持ち込ませた可能性が高いのです」

「その虫の対処をしないといけないから、扉は開けてはいけないの?」

「はい。虫は小さく、見失いやすく、紛れ込みやすいのです。余所に被害が出てしまってはいけませんから、まずは虫のいる範囲を固定し、それを狭めていき、捕えるという対処が必要になります」

「ふーん。虫って、そんなに大変なんだね」

「それは虫によりますね。虫にも階位がありますから、魔力の総量で優位であっても、階位がこちらの方が低ければ、毒の影響を受けることになります」

「そうか。階位は、魔力の濃度、のようなものだから」

「はい」


そんな話をしていると、扉が再びノックされた。

応対に出たカルメによると、無事に虫を捕まえられたらしい。


私たちはルクスの執務室に入って、休憩をすることになった。


そこには疲労困憊、といった様子の皆が、椅子に座って項垂れていた。

机の上には、結界の箱のようなものがある。


「ルクス、大丈夫?」

「…………あ、オデット様。はい、大丈夫、です」

「うん、大丈夫じゃないね」

「いえ、まぁ、はい。中々に大変でした」

「これが虫?」

「はい。蜂という虫で、毒針を持ち、攻撃性の高い虫です」

「へぇ。そう言えば、どうやって持ち込むの?」

「贈り物の箱の中に眠らせた虫を入れておくのが、よくある手でしょうか。協会の結界は飛んだり、跳ねたりと活動している虫を弾くものですから、眠らされていると弾けません」

「ふーん。この結界の箱は?」

「この蜂は階位が高く、結界を張っても破られてしまうのです。ですので、私が魔力を込めた強固な結界を発動させました」

「殺さないの?」

「はい。まぁ物証として。あとは色々と活用方法もありますから」

「へー」

「ですがそのために、生かして捕えるのに苦労しましたね。ははは…………はぁ」

「あーうん、お疲れ様」


力なく笑みを零して、溜息を吐いているルクスに、私は何だか憐れみのような視線を向けてしまう。




それにしても、虫とは危ないものなのだな。それに大変なことでもあるらしい。


そんなに危険なものが協会の外には普通にいるのだろうか。


そう思ってルクスに聞いてみると、彼は苦笑して、首を横に振った。


「人間や動物、植物と同じように、危険なものもあれば、か弱いものもあります。注意するべき毒を持つ虫もいれば、簡単に死んでしまうものもいます」

「そうなの?」

「はい。例えば、羽虫のようなものは、高階位のものに触れただけで死んでしまいます。逆に毒を持ち、自分よりも大きな生物にも害を齎すものもいます。また触れるだけでかぶれるものもいます」

「かぶれる、って何?」

「え?えぇと、表面の皮膚が爛れたり、赤くなったり、痒くなったり、という症状のことですね」

「へぇー」

「ですが、オデット様より階位の高い虫は、ほぼこの世には存在しませんので、安心してください」

「ほぼ?」

「はい。幻の存在として、魔術相反ではない白い虫がいたとされています。現在では確認されていませんが、遥か昔に記録上でのみ、存在しています」

「その虫は毒を持つの?」

「いいえ。どのような毒でも解毒できる、万能な毒消しの薬の材料になる、という伝説が残されているだけですね」

「虫が薬に?」

「はい。虫の活用方法は主にその毒です。虫自体を扱うのは難しいですから。動物や植物でも、部位によって効能が変化します。それは虫も同様で、その一部分だけを集め、用いる、ということは手間を考えれば、効率的ではありません」

「確かに」

「オデット様は虫を見ることすら、あまりないと思います。本能的に高階位の生物は避けますから」

「魔力を制御していても分かるの?」

「はい。虫には特殊な器官があるようで、魔力の濃度、階位を感知できるのだとか」

「え、凄いね」

「はい。その代わり、魔力量を測ることはできないとされています」

「へぇ」


階位が測れて、魔力量が測れない。不思議なことだ。


私が感心したように頷いていると、ルクスは苦笑した。


「我々人間は、別の方法で階位を知ることができますからね」

「そうだね」


別に虫のことを羨ましいと思った訳ではない。ただ不思議なこともあるのだな、と思っただけだ。



そうして、とある日の休憩は過ぎていった。


そう言えば、あの蜂、何に使うのだろう。



本編である「私の大切な人は魔術の師匠」が累計4,000pvを達成しました。

お読み頂いている皆様、誠にありがとうございます。

4,000という数字には関係がありませんが、小話を書いてみました。

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