4.元最高位と現最高位(お礼の小話)
ふと、ある時、実感したこと。
元最高位。
私はあの日、この国で魔術階位が最高位、という立場を失った。
その時に感じたのは、憐れみと恐怖だった。
最高位の座を新たに得た彼女には、強い憐れみと初めての畏怖を。
最高位の座を失った自分には、強い恐怖にも似た不安を。
私は生まれながらに最高位であり、今後もそれは変わることなく、このように生き、このように恐れられ、このような扱いを受け続けるのだと、それが当たり前の常識になっていた。
他人とは異なり、世界の見方も違うのだと、何度も痛感させられた。
そして、その差異に何の期待も落胆もしなくなった頃には、私の心はとても静かで穏やかになっていた。
そんな世界を、常識を、まさに天地がひっくり返ったように、一変させたのが、オデット様だった。
その存在は、どこか、心の奥底で渇望していたものだったのかもしれない。
案外、あっさりとその存在を受け入れた私は、むしろ、オデット様に縋るように執着していた。
しかし、そのことにも、引け目を感じることもなく、やはり、むしろもっと近くに、と望んでしまう自分がいる。
最高位という肩書を惜しんでいる訳ではない。
それは生まれながら、常に私の傍にあったもので、その大きさは身をもって知っている。
皆はまず、私の肩書を見て、私の色を見て、私の顔色を窺うのだ。
だから、今後、そのような扱いを受けるであろうオデット様に、寄り添いたいと思った。
それができるのが、私だけだから、という理由は、私にとって都合が良い言い訳でしかなかった。
だって、オデット様は私の大切な人なのだから。
大切な人の傍に居られる理由がある。それは喜ばしいことだ。
現最高位。
私はこの国で一番、魔術階位が高いらしい。
最初にそれを告げられた時は、へぇそうなのか、という程度にしか思っていなかった。
まぁそれも一つの特徴だろう、と。
けれど、この世界のことを知る度に、魔術のことを知る度に、私は自身の異質さと、その肩書きの大きさを知ることになった。
協会はとてもいい場所だ。皆が優しくて、穏やかで、居心地が良くて。
だから、ディグセを作るまでの間に、協会ですれ違った人たちの反応や、ナントカ子爵に本来の姿を見せた時の反応を見て、知って、私は納得することができた。
あぁ。彼らではない。私がおかしいのだ、と。
だからこそ、以前まで最高位という肩書きを背負っていたルクスには、親近感どころではない親しみや尊敬、憐みのようなものを感じている。
少し、他人にそのような反応をされただけで、こんなにも寂しい気持ちになるのだ。
それをずっと抱えて生きていたルクスの、寂しさや悲しさはどれ程のものだろう。
そして、私もこれからは、同じような思いをすることになるのだろうか。
そんな不安からなのかもしれない。私はルクスに縋るように、甘えるように、執着していた。
ルクスだけだ。ルクス以外にはいない。ルクスだけがいい。
どんどんと思いは積み重なり、大きくなっていく。
とても私の手には負えないような感情だ。
人生初心者にこの思いは、難易度が高いだろう。
そう思った。けれど、それさえも、幸福な悩みなのだ。
ルクスがこれまでに、一人ぼっちで歩いて来た道のりを思えば、何と幸せな悩みだろう。
だから、私はルクスを大切にしたいと思う。
差異を知っているルクスに付け込むようなやり方だが、実際に現実的に考えて、お互いに一番、適した相手なのだ。
ならば、そう思われても、いや、そうであっても、私はそれすらも利用して、ルクスを大切にしよう。
全ては、自分の未来を守るためだ。
私は、我が儘に、自己中心的に、ルクスのことを好いている。
前半はルクス視点、後半はオデット視点です。
本編である「私の大切な人は魔術の師匠」が累計3,000pvを達成しました。
お読み頂いている皆様、ありがとうございます。
3,000という数字には関係がありませんが、小話を書いてみました。




