2.絶対に交わらない神様の世界のお話(お礼の小話)
今後も本編と交わる予定はありません。
ここは神界と呼ばれる区域。
ここでは大勢の神たちが、創造神という主の下で、世界の管理のために働いている。
「おや?」
ある時、私は下界からの珍しい奏上に、首を傾げた。
これは私一人では決められない案件だと判断した私は、直ぐに創造神の元に向かい、指示を仰ぐ。
「創造神よ。命の創造と神の祝福を求める奏上が来たようだ」
「ふむ。対価は?」
「十人、いや十二人だ」
「そうか。許可しよう。十二倍だ」
「分かった。しかし、創造神の祝福とは、珍しいな」
「違うな。寵愛だ」
「そうなのか?いや、そうか。十二倍では、祝福には収まらないな」
「あぁ。それで場所は?」
「西大陸の大森林だ」
「そうか。では、お前に見守りを任せよう。報告もだ」
「分かった」
創造神が奏上に応えて、寵愛を授けるのを見て、私は頷いた。
これで良いだろう。
ただ、今後の見守りは必要だ。
まぁ、その程度であれば良いか。
それに創造神の寵愛を受けた人間に何かあって困るのは、私たちなのだから。
そうして私は創造神の元を去り、再び下界からの奏上の処理を続けたのだった。
奏上とは、人間たちの間では詠唱や術式などと呼ばれているものだ。
実際には、人間が私たち神々に、こうした効果を持つ魔術を発動させてほしいと奏上し、私たちがそれに応え、魔術が発動する、という仕組みだ。
奏上の仕方は様々で、このサタロナ王国では効率的な文言が使われている。
「我は世界に求める。我が魔力を糧に生み出せ。火球」
この詠唱の言葉を私たちの理解で言い換えると、このような感じだ。
「私は神にお願いします。私の魔力を使って、火球を生み出してください」
私はこのような言い方で良いと思っている。
実際に詠唱ではなく、術式操作をする場合には、私たちがその魔術の意図を汲み取って、発動させているのだから。
それを態々、詠唱として口にするならば、端的で効率的で、簡潔で分かりやすいもので良いと思う。
しかし、他国ではそうはいかないようだ。
それは他国の奏上に応える神の趣味嗜好の話ではなく、人間が勝手にそのような文言の奏上にしているだけだ。
例えば神聖国と呼ばれる、信仰心が篤い国では、このような文言の詠唱をする。
「聖なる力の片鱗は凍えを凌ぐ、慈悲深き灯火。ここに奇跡を現す、火球」
これを私たちの理解している文言に言い換えると、こうなる。
「神様の偉大なるお力は、とても素晴らしく、そのお力の一端だけでも、我々は凍えを凌ぐことができます。とても慈悲深く、奇跡のようなお力です。どうか、その奇跡のようなお力を、灯火だけでも良いので、現してください。火球をお願いいたします」
神聖国の詠唱はとても長ったらしくて、媚び諂っている感じに思えてしまう。
そんなに下手に出て、持ち上げなくとも、こちらはきちんと対価の魔力に見合った火球を出現させるのに。
何だか、逆に信じられていないのでは?と思えてしまう。
そして実際に、神聖国は長ったらしい詠唱の割に、対価として用意して来る魔力量が少ない。
それは詠唱を、つまり奏上を、丁寧に謙ってお願いすれば、魔力消費が少なくなるとでも、思っているのか?神はそんな不公平なことはしないぞ?
少しなめられているようにも感じるので、神聖国の奏上を処理する職位は不人気だ。
今、神聖国に就いているのは、そんな長ったらしい文言に左右されない、冷徹で、残酷なほどに厳格で公平な神だ。
もはや、奏上にはあまり目を通さず、発動したい魔術と捧げられた魔力量しか、見ていないと思う。
そして、もう一つは帝国という、高圧的な奏上をする国も不人気だ。
帝国の詠唱はこのような感じだ。
「基礎魔術、火球、出現せよ」
これを私たちの言葉に言い換えるとこうなる。
「火球を出せ」
これは一番端的で分かりやすいのだが、これもこれで何だか、見下されているようで嫌だ。
というか、何様のつもりなのだろうか。
更に対価の魔力も少なめなので、こちらもそれ相応の火球しか出せない。
この帝国についている神は、とても効率を求める神だ。
神聖国のような長ったらしい奏上にうんざりしていて、帝国の奏上も良いとは言えないが、まだマシ、とのことだ。
つまり、サタロナ王国の奏上を処理する神が一番、羨ましがられる。
必要な礼儀は弁えているし、無駄に媚び諂ってもいないし、高圧的でもない。普通って素晴らしい。
ただ一つ難点があるとすれば、魔術に熱心な者が多い所為で、奏上の数が半端なく多い。
そして時折、対処に困る案件が出て来る。今回の奏上もそうだし、魔術の発見が多いのも、この王国だ。
王国へつくことを求める神が多い一方で、簡単には任せられないのは、そういった部分が理由だ。
だからこそ、王国を担当する神々は、新米と熟練の組み合わせで配置される。
今回の奏上も、また王国の人間が変なことをやっているな、という感じだ。
うーん、何もなければ良いのだが…………
神様視点の裏話でした。
オデットの召喚事件は、実は異世界でも、召喚でもありません。
同一世界での、魔術的な神(創造神)との物々交換、という認識です。
本編である「私の大切な人は魔術の師匠」が累計2,000pvを達成しました。
お読み頂いている皆様、ありがとうございます。
2,000という数字には関係がありませんが、小話を書いてみました。




