第八話 ワタシノココロ
そっくりな二人の女の子。
ルディアと同じ黒い髪の毛。
目もそっくり。
思わず見とれてしまうほど顔が良かった。
「紹介するよ。二人が道中話した、僕の妹だ。」
「い、妹さんたち…?会わないって言ってなかった…?」
「そのつもりだったんだけどね。兄さんにやられたな。」
どうやらルディアのお兄さん…ギルヴァーンさんがわざと呼んだらしい。
やっぱり兄弟で仲良くしてほしいのかな…。
「二人とも、元気だったかい?」
「はっ、ルディア兄様はまだ生きてたのね。とっくに死んだものだと思ってた。」
「ま、マリア…兄さんにそんなこと言っちゃだめだよ…」
確か気の強い方がマリアちゃんで、おとなしい方がアイリちゃん…だっけ。
マリアちゃんの方はさっきからルディアをずっと睨んでいる。
ルディアはというと、どこか居心地の悪そうな表情を浮かべていた。
私はどうすればいいんだろう。
「今日は何しに来たわけ?今更商会に、ルディア兄様の席はないのだけれど。」
「大丈夫だよ。まったくそんなつもりはないから。」
「ならさっさと死んでもらえる?目に入れるのもおぞましいから。」
何この子…さっきからずっとこんな感じだ。
ルディアはなんで言い返さないんだろう。
こんなこと言われて黙っていられるの?
「あと2年も待てない。早く死んでくれた方が助かるわ。」
「…そうだね。」
「さっきから何言って…」
食ってかかろうとした瞬間、ルディアの肩を掴まれた。
ふと見上げると、目線だけこちらに向けている。
黙ってろってことらしい。
「で、その人は?まさかルディア兄様の恋人?」
「いいや、違うよ。」
「まあそうよね。こんな畜生を好きになる人なんていないもの。」
なんだろう。
すごく腹が立つ。
これが家族の口から出る言葉だなんて、信じられるわけがない。
ここまで他人を殴りたくなったのは初めてだ。
「僕らはもう帰るよ。長居するのも悪いしね。」
「もう二度と来ないでよ。カーペットが汚れるわ。」
「ああ。心配しなくてもこれで最後だ。ミア、帰ろう。」
「…うん。」
マリアを殴り倒したいという衝動を精一杯抑えて、ルディアの後に続く。
仮にもイデア商会の令嬢だ。
殴れば私の首が飛ぶ。
多分ルディアだってそんなこと望んでない。
「マリアベル、それにアイリーン。元気にするんだよ。」
「ふん、さっさと行きなさいよ。目に毒だって何回言えばわかるの?」
ルディアが踵をくるっと返した。
もうこれ以上長居する気はないのだろう。
私もさっさとここから出たい。
とにかく居心地が悪い…いや、胸糞悪い。
「ルディア、悪かった。」
ギルヴァーンの声が聞こえた。
来た時とは違って、声に力がこもっていない。
感じ取れるのは悲しみだけだ。
「謝る必要なんてないよ。死ぬ前に家族に会えてよかった。」
そう言って歩いていくルディアに続く。
歩きながら、私の中にある怒りと葛藤に目を向ける。
なんで私はこんなにも怒っているんだろう。
私のことを侮辱されたわけじゃないのに。
私とは関係ない家族の問題のはずなのに。
なんでこんな気持ちに…。
「…ミア?」
その声ではっと我に帰った。
そのままルディアの顔を見る。
あぁ、そういうことかぁ。
「ごめん、なんでもない。早く行こ?」
「ああ。今日はどこかで宿でも取ろう。」
やっと理解した。
いや、ずっと分かってた。
これまで抑えてきた気持ちがどんどん出てくる。
人の我慢っていうのは、案外簡単に限界が来てしまうらしい。
好きな人を侮辱された。
だから私は怒ってるんだ。




