第二話 手紙
「おじゃま〜!」
大きな音と共に扉が開く。
まだ開店してないはずなんだけどな。
「お客様、まだ開店前ですよ。」
「別にいいじゃん。ルディアのケチ。」
「ミア、そもそも君仕事は?」
「えへ⭐︎」
えへ、では済まされない気がする。
文官辞めた方がいいんじゃないかな。
こっちは色々と忙しいというのに。
「おやおや、それはなんだいルディアくん。私に見せたまえ!」
「ただの手紙だよ。家族から送られてきたんだ。」
「なおさら見せたまえ!読みたい読みたい読みたい!」
まるで子供だな。
まあこれぐらい読ませても問題ないだろう。
「はい。別に面白くもないよ。」
「やったぁ!えっと、なになに…」
満面の笑みを浮かべながら、ミアは手紙に目を通す。
が、どんどん表情が抜けていった。
やっぱり見せない方が良かったかもしれない。
「…なにこれ。」
「別にどうもこうもない。書かれている通りの意味だよ。」
「死ぬならせめて妹たちにある程度お金を残せって…それしか書いてないじゃん!」
ミアが怒りを込めた声で叫ぶ。
まあ気持ちは分かる。
母親から死ぬ前に金をよこせという手紙が来たら、普通は激怒するものだろう。
でも母は僕を毛嫌いしているし、僕もそれに慣れている。
そもそも僕から余命のことを報告した時点で、こうなることは想定していた。
母はそういう人間だ。
「こんなのおかしいでしょ!私殴って…」
「ミア、その必要はないよ。元々お金は妹たちに渡すつもりだったんだ。」
「そういう問題じゃない!」
困った。
ミアがここまで怒り浸透なのは見たことがない。
どうすればいいのだろう。
「家族なら普通心配するのが先でしょ!」
「…母にそんなものを求めてないよ。」
「ふん!ルディアの分からず屋!」
そっぽを向いてしまった…。
どうしてここまで怒るのか全くわからない。
「ま、まあ僕の家族のことは気にしないでいい。そんなことよりも今日の支度だ。」
「はぁ…ほんとルディアって馬鹿だよねぇ…」
「馬鹿で結構だよ。ところでミア、こんなにも早い時間に押しかけてきたんだから、わかってるよね?」
「え、なになに?」
とりあえず箒を差し出す。
するとあからさまに、ミアの顔が曇った。
「手伝ってもらおうか。まずは掃除から。」
「わ、私お仕事が…」
「何か言ったかい?」
「なんでもないですよぉ…!やりますやりますぅ!」
僕に向かってべーっと舌を突き出してから箒をぶん取り、ミアは掃除を始める。
小さな道具屋で文官が掃き掃除…なかなか傑作だ。
まあ本当はそんなことよりも仕事に行くべきだろうけど。
「掃除しなくたって綺麗じゃん!なんでわざわざ…」
「お客様が来るから、常に最高の状態にしないとね。それが僕のモットー。」
「ねぇ、私もお客様なんだけど。」
「今は開店前だから、ミアはただの侵入者だよ。」
「はぁ〜?一番の顧客に向かってそんなこといいますぅ〜?」
ぶつぶつと文句を言ってはいるものの、しっかり掃除している。
流石は文官様だ。
さて、僕もそもそも開店の支度をしよう。




