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第十八話 馬鹿

「収穫祭への出資をする…が、俺は忙しい。マリア、お前が担当してくれ。」

「私に王国まで行けと?そんなに暇じゃないんだけど。」

「ついでにルディアの様子を覗いてきて欲しい。頼んだぞ。」

「聞く耳持ってないわけ?」


ギル兄様とそんなやりとりをして、私は王国まで来る羽目になった。

出資云々の協議、人員の手配、他の商会への牽制、その他諸々…。

このマリアベルを散々使い倒してくれたんだ。

帰ったら兄様を殴ろう。


「にしても…まさかあの女と会うとは思ってもなかったわ…。」


さっきようやく終わった最終調整の協議…王国側の担当者があのミア・ファジェナとかいう女だった。

確かアイリ曰く、ルディア兄様と結婚したらしい。

あのルディア兄様と結婚…考えるだけで笑えてくる。


「物好きな奴…。あれのどこがいいんだか。」


独り言を呟きながら役所を出る。

ようやくギル兄様から押し付けられた仕事が終わったんだ。

しばらくゆっくりしよう。


「ま、マリアちゃん…!」

「あら、アイリじゃない。待ってたの?」


役所の出口のすぐ近くに、私と瓜二つの女の子…アイリがいた。

いつものことながら、アイリは可愛い。

だから私も可愛い。


「マリアちゃんもそろそろお仕事終わるかと思って…。」

「ちょうど終わったところ。それで、そっちはどうだったの?」

「え、えっと…その…」


また始まった。

アイリは自分の本音や考えを表に出すことを躊躇う。

その結果こんな風にしどろもどろになることがよくある。


「別に何を言われたって、怒ったりしないわよ。」

「ほ、ほんと…?」

「ええ。だから言ってみて。」


しばらくアイリはもじもじしていたが、意を決したようにこちらを見た。


「や、やっぱり…マリアちゃんもルディア兄さんに会った方がいいんじゃないかな…」


驚いた。

アイリがそんなことを言うとは、微塵も考えていなかった。


「それじゃ、あなたに任せた意味がないじゃない。」

「で、でも…」


またアイリが俯いてしまった。

ギル兄様にルディア兄様の様子を除けと言われたものの、それを私はアイリに変わってもらった。

アイリのことだから、ルディア兄様とわざわざ話したのだろう。

別に遠くから一目見るだけでよかったのに。


「に、兄さんと会えるのも最後かもしれないんだよ…?」

「どうせ私が行っても、兄様は嫌がるわ。」

「そ、それでも…」


アイリがここまで食い下がるのは珍しい。

これでもっと堂々としていればよかったのに。


「…絶対後悔すると思う。だから会いに…行こう?」

「お断りね。時間の無駄よ。」


何を言われようとルディア兄様に会うつもりはない。

突っぱねられたアイリの肩がわなわなと震えている。

怒らせてしまったかもしれない。


「マリアちゃん…もう一回だけ言うね。ルディア兄様に会って。」

「…私に命令する気?」


アイリの声から威圧感が滲んでいる。

私はこの声をよく知ってる。

彼女が剣を抜く時の声だ。


「何を言われても、私は行かない。これで話は終わり。」

「…マリアの分からず屋。」


いつのまにかアイリの手に剣が握られている。

どこから出したのかは知らない…けど確実なのは、彼女がやる気ってことだ。


「へぇ…私とやろうっての?」

「私の方が強い。絶対に連れていく。」


アイリが完全に戦闘体制に入った。

剣を抜いて私に切っ先を突き付けている。


「…あははっ!言ってくれるじゃない。」

「怪我しないうちに言うこと聞いて。」

「何言ってんだか…怪我するのはそっちでしょ。」


こっちも魔力を全開にする。

アイリが相手なら手を抜く必要もない。

今日はいろいろと気が立ってる…ここで発散させてもらおう。


「言っとくけどね、殺すつもりでやるから。」

「馬鹿マリア…!」


アイリが地面を蹴るのと同時に、私も術式を起動させる。

この時私もアイリも、周りのことなんて見えてなかった。

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