番外編 戦姫アイラは恋がしたい
私の人生には『恋』なんてものが存在しない。
傭兵なんて物騒な職をしているからなんだろうけど。
生きるために殺す。
こんな血に塗れた女に近づく人なんていない。
そんな私…アイラ・フォードは最近では、「戦姫」なんて呼ばれるようになってしまった。
なんなら、「四大英傑」の一人とか言われている。
多分もう普通の女の子に戻ることなんて出来ない。
別に好きな人とかいないから、それでもいいんだけど。
でもあの2人を見ていると、少しだけ恋をしてみたくなった。
「ミア。何度も言うけど、いい加減仕事に戻るべきだよ。」
「嫌ですぅ〜!ルディアはお客さんを追い返す人なの?」
稀に行く道具屋の日常。
店主さんと入り浸っているミア。
私は二人の関係性を羨ましく思う。
だって二人とも、本当に幸せそうだから。
「久しぶり、店主さん。元気だった?」
「やあ、アイラさん。こっちは相変わらずさ。」
「それは良かった。ところでミア、それで隠れてるつもり?」
「うぐっ…なんでバレてるのぉ?」
私が店に行くと、いつも二人がいた。
いつでも笑って迎え入れてくれる店主さんと、毎回私から隠れようとするミア。
なんで結婚しないんだろう。
そう思って、ミアに一度聞いてみたことがある。
「け、結婚!?わ、私とルディアはそんな関係じゃないよぅ!」
何を言っているんだろうか。
側から見れば、完全に両思いなのに。
でもまあ本人がそう言うのなら、別に口出しする気もないんだけど。
「アイラはどうなの?好きな人とかいないの?」
「別にいないよ。知り合う人は大体敵だし。」
「へぇ〜。白馬に乗った王子様が好き、なんて言い出すのかと思ってた。」
「今すぐ斬り刻んであげてもいいんだけど?」
こうやって軽口を叩くミアだけど、彼女の店主さんを見る目はまさしく恋する乙女だ。
本当に幸せそうで、羨ましい。
私がどれだけ望んでも得られなかった幸せ…それを持っている。
「傭兵なんて辞めちゃえば?そしたら誰かを好きになれるかもしれないしさ。」
そうミアに言われた。
正直考えたことがないわけじゃない。
でも私は誰かを殺すことでしか生きていけない。
今更誰かを愛す、なんてことは出来ない。
人を殺しすぎたのかもしれない。
もう愛し方が分からない。
「たとえ叶わない事でもさ、夢見るだけなら許されると思わない?」
サボり魔のミアにしては、随分立派なことを言われた。
立派だけど、夢は夢に過ぎない。
そんなことをしたって虚しいだけだ。
でもまあ夢見ることは自由だというのなら…。
私はいつかミアみたいな恋をしてみたい。
誰かを好きになって、その人と一緒に過ごして、一生その人と添い遂げる。
まるで純粋無垢な少女みたいだ。
私らしくない。
まあ、夢見ることは自由なんでしょ?
なら素敵で、壮大な夢を見てやろうじゃん。
いつか叶うかもしれないしね。




