第十二話 隠れたあなたに
「私、ルディアのこと好きだよ。」
毎度のことだけれど、ミアには驚かされてばかりだ。
こんな時に何を言い出すのかと思えば。
冗談なら後して欲しいところだ。
「あー!信じてないでしょ!」
「いや…信じてないというより、突然すぎるから…。」
「はぁ…これだからルディアはダメダメなんだよ。乙女心をわかってない。」
仕方ないだろう。
他人から好意なんて寄せられたことがないんだから。
こういう時、なんで言えばいいのか分からない。
どうするのが正解なのだろう。
「ミア、気持ちは嬉しいけど…僕はあと2年で死ぬんだ。その感情を向けるのにもっと相応しい人が…」
「いないよ。私にはルディアしかいないから。」
ミアが窓を開ける。
いつのまにか雨が降り出していた。
今思えば、ミアと出会った時も雨が降っていた。
僕らは雨に縁があるのだろうか。
「私はね、ルディアと出会う前はぐちゃぐちゃだったんだ。」
「ぐちゃぐちゃ?」
「そう。誰も私のことを見てくれなくてさ、もう死んじゃえばいいやってなってたの。」
ああ、そうか。
あの時か。
初めて会った時、ミアの顔は酷くやつれていた記憶がある。
そんなミアを放っておかなくて、あの日ミアと話をしたんだった。
「でもルディアと出会ってからはずっと幸せだった。だからルディアは私の恩人。私の人生に意味をくれた人だよ。」
「別に僕は君とただ喋っていただけなんだけどな…。」
「はいそこ、口答えしない。それだけで私は救われたの。」
ミアがここまで素直に話すのは珍しい。
ああ見えてミアは自分の本心をほとんど表に出さない。
でもいざ本心を聞いてみると、なんだかくすぐったいような感じだ。
「私はルディアが好き。でもルディアには私なんかのために時間を使って欲しくない。」
「…。」
「だからこれまで言わなかったの。でも…我慢って意外とすぐに限界が来るんだねぇ…。」
どうやら、僕は本格的に無能らしい。
ずっと一緒にいて、ミアの本心に気づいてあげられなかった。
…いや、そうじゃないな。
考えたことがない訳じゃない。
ただ僕は日常が壊れるのが怖かった。
だから気づかないふりをしたんだ。
「大丈夫、私だって今の日常が好きだから。今のままでも十分幸せだよ。」
「ミア。」
立ち上がって彼女の目を見る。
僕がすべき事、やりたい事、それは一つだけだ。
「2日待って欲しい。明後日に今日の返事をするよ。」
「…ふぇ!?」
「準備をさせて欲しいんだ。必ず2日で間に合せる。」
「は、はい…わかりました…?」
するべき事は一つだけ。
あと二日で人生が変わる。
いや、変える。
もう自分のことなんてどうでもいい。
どうせ元々大したものじゃないんだから。




