14 魔法大学校の設立
王に無事帰った報告をしてこいとスタントンに言われ、キラは今王様の前にいる。
王は、キラをじっと見てから、徐に頭を垂れた。
側近達は黙ってそれを見て居た。誰も止めようとしていない。異常な事態だ。
キラだけが慌てて、王の前に跪いて王に頭を上げてくれるように懇願していた。
「いや、これは私の落ち度だ。しっかり謝らせてくれ。神殿長が先王と遣っていたことは君に聞いて、察しは付いたが罰せずにいたのだ。先王のことを手伝っていた家臣を総て罰していては我が国には魔法使いが半減してしまう。だが、あれは根っからの悪心だった。神殿にいながら、心は悪に染まっていたようだ。君を神殿へ預けた私の失策だ。」
「王様。物は考えようです。僕が神殿へ行ったから、彼の悪行が明るみに出たのです。これは良かったと考えましょう。総ては、成るようになったのですから。」
「ありがとう、キラ。まあ、謝罪は終わった。これからのことを話し合おう。」
これからの事?キラは何かあったかと首をひねった。
「賢者から聞いていないか?ああ、今は神殿に居たなキラは。実は賢者の敷地を魔法大学校にしたいと賢者に言われたのだ。あそこは広大な敷地だ。王都の外れではあるが学校としては理想的だ。」
確かにそれは良い考えだ。この街を学園都市にすればこの大陸から、魔法使いが集まってくるだろう。それも一つの生き残りだ。
「それはとても良いと思います。でも、何故それが私に関係するのでしょうか?」
「君は・・・。まあ良い、あそこは君の相続する予定だった物だ。それを反故にして仕舞って申し訳なく思っている。その代わり君には別の土地を与えようと思う。どこか良い場所は無いか今探しているところだ。希望はあるか?」
「僕は何も必要ありません。第一土地を貰ってもそこに居ることは殆ど無いでしょう。これからはあちこち行かなければなりませんから。」
「あちこち?どこかに行って仕舞うのか?この国を出て行ってしまうのか!」
「いえ、王様お忘れではありませんか?僕は転移で何処でも行けてしまうのです。僕はサミアにもドランにもその他の国へも行きたい。じっと同じ処にいることは当分しないつもりです。只ここに小さな拠点は作ります。それを許して下さい。」
王は、ぶすっとした納得がいかない顔をした。年相応の顔だった。
周りの家臣達は笑うに笑えず顔がおかしな殊に成っている。
其の侭、キラは王の下を辞したのだった。
キラはその足で賢者のところへ行った。
「キラ、聞いたか?王は何処でも好きな土地を与えて下さる。何処にした?まだ決まらんのか?」
「僕は何処も入りませんと答えました。自分の土地を買うお金は持っています。」
「そうか、ならそうしなさい。私はもう何も言わない。君の好きなように生きて行けば良い。処で相談なのだが、君の拠点はここにも置いてくれないか?そうすれば心配が少し減るのでな。」
「勿論です。もし良ければ、僕の以前の部屋を使わせていただけませんか?」
「ああ、良いとも、良いとも。いつでも待っているから。必ず帰ってくるのだぞ。」
「はい、師匠。」
【おい、へたれ弟子!お前の異界の門はどうした。まだ出来ておらんのか。】
「は、それはもう少し魔石を集めてからで無いとダメな様でして・・・」
【馬鹿たれ!だからあれほど言ったでは無いか。もっと竜を狩れと!】
「竜の素材が足りないのですか?だったら僕が持っています。使って下さい。」
異界の門予定地(以前の異界の門跡地)に来てキラは竜を少し出して見せた。
大量の竜を見て賢者は遠い目をしていた。
「おい、キラ。お前こんなに倒しても魔力が持ったのか?賢者様は竜を一頭倒して魔力切れを起こして仕舞われたのだ。それで諦めて帰ってきてしまったのだ。」ボブがコッソリ教えてくれた。
キラも賢者に劣らず遠い目をして、
「あの時は闇に捕らわれていたので魔力が尽きなかったのだと思います。」
「闇に捕らわれると魔力が途絶えないのか?不思議だな魔王みたいだ。」
正に魔王になる一歩手前だったのでは無いか。キラはゾッとした。
キラの傍らに、ガイヤが現れてそっと耳打ちした。
【貴方は魔王になっていましたよ】




