13 闇を使って
「師匠只今帰りました。あれ、師匠はボブ?」
「お前。無事だったか。賢者様は今伏せっている。」
キラは賢者を見舞った。目覚めた賢者はキラの目じっとを見て、安心したように微笑んだ。
「大丈夫だったようだな。キラが闇に飲まれてしまったか、と気が気では無かった。本当に無事で帰ってきて良かった。」
キラには師匠の心が見えた。住んだ清らかな愛情がひしひしと伝わってきて、キラの心を満たして行く。
「済みませんでした。一時は闇に飲まれそうになりましたが、ガイヤと言う聖者に助けられたようです。」
「ガイヤとな。大地母神の名前だな。キラは神に助けられたのか?そりゃ大層なことだ。」
『師匠は信じて居ないようだけど、あれは神様だったのか。ありがとうございましたガイヤ。』
神殿へ帰ったキラは驚いた。
何と神殿長にスタントンが成っていたのだ。
「神殿長は、以前の神殿長はどうした?スタントン。」
「おっほん、神殿長と呼びたまえ。聖者様。」
「おい、いい加減にしろよ。教えろよ早く。」
「クソッ。本当にキラには格好よくなった姿を見せようとしたのにさ。まあ、いいや。前神殿長は投獄された。あと数人の神官もだ。以前のドラン国の手技を遣っていた神官達だ。光の属性が無い物達ばかりだ。神殿長が態と遣らせていたみたいだ。先王の言いつけに沿って居たと言っていたが、他にも余罪があって、俺には助けられなかった。」
そうか、あの神官達が。魔法使いである事には変わりは無かったが、神殿では必要の無い属性ばかりだった。キラの発見した新しい、魔石に属性を足す手技をしてやりたかったが。
「スタントン。僕の新しい手技を、光の属性の無い神官にしてやりたいけど、許可をしてくれるかい?」
「もちろんさ。あと、質の悪い魔石の方はどうする?そっちの方はもっと大変そうだろう?」
「それがそうでも無さそうなんだ。よく考えたら、何も一個だけしか魔石を植え付けられないと決まっていない。その事に気がついたんだ。もう一つを植えてみて、確かめたいんだけど。自分でも遣ってみたんだけど僕の場合効果が分からなかった。」
「お前の場合魔力が多すぎて効果が検証出来ないものな。また俺に実験台になれってか?まあ、良いよ。俺は神殿長だからな。みんなの手本になってやらねばな。」
「一つだけ言っておくけど、これは絶対に秘密だ。スタントン。」
「何だかおっかねぇ。一体何だよ秘密って。」
「もう一つの魔石を加えるときは、闇の属性を後から入れなければダメだ。光と闇は対になっている。光だけだと効果は変わらない。意味が無くなって仕舞う。二つ目を入れた後に、闇を魔石に加える。この順序は絶対だからな。間違えたら死んで仕舞う。闇の属性は吸収だ。魔力を周りから吸収してくれる。そうすれば光の魔法の威力が上がるんだ。」
キラはスタントンの手に魔石を同化した。光以外の総ての属性を抜いている妖精の魔石だ。
キラは空いた隙間に闇をを加えていった。
「これで、スタントンも再生が使える様になるはずさ。」
「ありがとうキラ。若しかして聖者と呼ばれるかもな俺も。」
「そうだな、君が他の神官にこれをしてやれば、確実にそう呼ばれるはずだ。ここの神殿長の秘技にすれば良い。」
これならば持って生れた魔石持ちと同じくらいに力が付くだろう。
カマドランが生き残れる為の、手助けになれば良い。
これからは魔法使いが簡単に増えて行くのだ。キラの見付けた方法は、瞬く間に広がって行くだろう。その中でも優れた物をここの神殿に与えておこう。
後はこの国の問題だ、キラにはこれ以上する必要はない。
キラは自分が小さな一人の人間だと認めることで、『助けてあげる』という傲慢な気持ちを克服したのかも知れない。




