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10 キラの扱い

キラはカマドランの神殿へ入る事になった。賢者は複雑な心境だった。

確かにキラには、聖者を目指せと言ったが、こんなに早く自分の手から離れて行って仕舞うとは考えていなかった。

「賢者様。寂しくなりましたね。」

ボブがそう言っているが、賢者は、寂しいのだろうかと疑問に思った。

我が子のように考えて大切に囲いすぎて逃げられてしまったこともあったのだ。折角また手元に戻ってきたのに神殿に獲られてしまった。

「悔しさもある。ボブよ、私のこの気持ちは執着という醜い物だろうか?」

「賢者様。それは、親の愛情です。それを執着というのは、余りにも悲しいです。親が子を思うことが執着なら、この世は闇です。」

そうだな、親になったことが無い私にとって、キラは本当の子のような者だった。これが親の愛ならば、親という者はなんと切ない者だろう。子が育ってしまえば、親は只の五月蠅い邪魔者だろう。静かに見守るというのは難しい物だ。


 キラの入ったカマドラン大神殿には、神殿長が仕切っている。

ドランの神殿とは少し趣が違っていて、キラは一介の神官に過ぎない。

だけどここにはスタントンがいた。キラは、これはこれで愉しいかも知れないと思った。

スタントンとはよく一緒に神殿の浄化をしたり、魔石の雑味を抜いたりと作業を共にしていた。

「スタントン、なんだか学生時代に戻ったみたいで、愉しいよ。」

「何言ってんだか。聖者様に教えを請うことはあっても、教えられる物はもう何も無いだろ。」

こんな感じで気安く話せる仲間が居るのは、本当に気持ちが安らぐ。

二人でふざけ会っていると、厳しい顔で睨み付けてくる先輩の神官達がいる。

彼等は光の属性が無い神官達だ。今までは彼等は高い地位を約束されていた貴族出身の神官達だったが、キラの真理のせいで立場が低くなってしまったのだ。さぞかしキラを恨んでいることだろう。

キラはそんな彼等に何か新しい術式を探していた。

「一度埋め込んだ魔石は変えることは難しいのだろうか。もしもそれが出来れば、質の悪い魔石を埋めた人達にも希望が持てるかも知れない。」

だが、人体実験は良くない。何か違う方法で試してみたい物だ。

キラは自分の身体を使えば良いのではと考えて、その事をスタントンに相談したら凄い剣幕で叱られてしまった。

「お前は!馬鹿じゃ無いのか。お前の魔石は、特別なんだ。獲ってしまえば、最悪死ぬぞ。試すのなら、俺に遣ってくれ。」

何を言い出すのか、スタントンを実験に使えるはずが無いでは無いか。

そんなことがあったある日、騎士の怪我人が運ばれてきた。

彼の両手両足は、魔物によって食いちぎられていて内臓にも損傷が見られた。

それを治癒で治しながら、キラはぼーっと考えていた。以前にも遣ったことがあった。ダイダロスの領主の子に魔石を埋めたでは無いか。なんて簡単な事だ。一度切り取った物にも有効ならば、出来る技術だった。

キラは無限収納から、魔石を取り出して再生した腕に直ぐに魔石を同化してしまった。そして魔力の呼び水で、魔力を通しておいた。

騎士が、回復して気がついたときに、魔法を試して貰ったが、今まで通り使えているとのことだった。だが属性が変わってしまい、今まで火だったものが光になって仕舞った。当たり前だキラが持っていたのは光の属性ばかりなのだから。騎士はそれでも喜んで、

「これからは騎士の治癒隊に部署替えになって仕舞う。」

と言っていた。神官には成りたくないようだ。

キラはそっと騎士の魔石に、火の属性を入れてみた。

「後付けでもいけそうだ。これは大発見では無いだろうか。」

魔石の質が良ければ出来る手技だ。

「スタントン。君の魔石には余計な闇が結構入っている。それを除けばもっと力が付くかも知れない。遣ってみても良いか?」

「ああ、遣ってみろ。俺はお前のモルモットだ。」

スタントンを眠らせ、目に埋め込まれた魔石から闇の雑味を抜き光を目一杯入れた。

「もう、終わったのか?なんだか、力がどんどん入ってくる!」

二人は喜び勇んで、この実験の結果を神殿長に知らせる。

だが、彼は怒り狂った。

「私の神殿で勝手なことをするな!お前は聖者と言われていい気になっているようだが、ここでは只の神官だ。お前を監視するためにここに押し込めているのだ。出過ぎた真似をすれば、お前を水に沈めて命を狩る事も辞さない覚悟で、ここに預かったのだ。お前は化け物だ。気味の悪い魔物だ!」

と言われてしまった。

どう言うことだ?スタントンは何か知っているのか?

スタントンは何も聞かされていないという。キラは、思い出した。

去年の魔物討伐の時の騎士達の目を。あれからずっとキラは化け物扱いだったのか。だから、他国へ行ったキラを連れ戻したのだ。

他国で力を使えば、カマドランは危ないと危惧したのだ。かといってこの国にいても危険人物に変わりは無かった。神殿で監視することにしたのか。

キラの目から光が消えて黒い闇がくるくると渦巻いた。

「スタントン、僕はここでは厄介者みたいだ。もう出て行く。何処の国へも行かないから、安心してくれと王様に言ってくれ。じゃあ、さよなら。」

キラは転移して神殿から居なくなってしまった。





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