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プロローグ

以前帰った時、師匠は言っていた。

「いつでも帰ってきなさい。転移が使えるなら直接君の部屋に転移すれば良い。誰もそこには近付けないようにして置くから。」

そう言われていたので、魔石持ちの隠れ里から、恐る恐る以前の自室へ転移してみた。確かに誰も居ないが、転移した途端にボブが部屋に入ってきた。

「おお、やっぱりキラだ。帰ってきたんだな。よく帰った。今師匠に知らせてくる。ここに居ろよ。何処にも行くなよ!」

と言われてしまった。椅子に腰掛けて待っていると、師匠が部屋に入ってきた。

「よく帰ってきてくれた。君に話す事が沢山あるのだ。食事をしながらゆっくり聞かせてあげよう。」

ボブはキラの部屋を毎日訪れて偶に掃除をしていたらしい。メイドは近づけないようにして居てくれていた。

食事の給仕もボブがしてくれている。念の入った徹底ぶりだった。

「キラよ。もうここに帰ってきなさい。大丈夫になったのだ。王は辺境で隔離されてしまった。死ぬまで出てくることはないだろう。誰も助けたいとも思っていない。王は替わったのだ。今は皇太子が戴冠した。彼はこの国始まって以来の魔法使いの王様だ。この国は変わって行くだろう。君に教えて貰った魔石の雑味を消す作業もその内に可能になるだろう。どうだ、帰って来たくなったか?いや、無理にとは言わない、以前のように君を閉じ込めるようなことはしない。約束するから。」

師匠の必死さに何と言って断ろうかと悩むキラだった。

【キラ、ここに偶に帰ることは、問題ないだろう。余りに頑なになる物では無いぞ。儂のように闇に飲まれてしまうぞ。】

ゼロに言われて、キラはハッとした。

『そうだ、何もここにじっとしている必要は無かった。好きなときに自由に何処へでも行けるのだった。』

「分かりました。帰ってきます。でも僕にはサミア国に友達が出来ました。サミアには気に掛けている子供もいます。多分、度々居なくなりますが、必ず帰ってきます。」

「そうか。良かった。」

師匠はホッとして、微笑んだ。ボブもそれを見て身体の力を抜いた。

 師匠の神殿に久し振りに入った。

【おお、これは久方ぶりの神殿だ。儂には祈ることが許されるのだろうか。・・ダメじゃ。眩しすぎる。キラよ、儂を収納してはくれぬか。】

闇に落ちてしまった賢者の残滓は、神殿の清浄さが辛いのか。

ゼロを無限収納に入れて、祭壇の前に跪くと、直ぐに無心になって、これからのキラの生き方を考えるとも無く感じる。

「僕は、間違った選択をするところだった。過去に自分が奪われた自由を、知らずにまた違う子供に強要するところだった。オイリーには、きちんと選ばせよう。魔法を教えるのは、彼女が選んだ後にする。」

魔法は万能だが、心が付いてこなければ簡単に闇に落ちる。キラにもその可能性があるのだ。


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