イチ章イチ話 『水入りバケツと空のバケツ』
「あーー!!学校なんか行ってられっかっ!!!」
──今思えば、あのひと言が引きこもりの始まりだった。
俺、波塚レイ(はづか れい)は中3の頃から学校に行かなくなった。
原因はあまり自分でも考えたくない…教室の匂いや、机にびっしり書かれていた文字、全部吐き気がする。
成績は悪かったけど、運動神経はかなり良かったし、ゲームが上手かったからネッ友だって出来た。
今だって俺にとってはかなり幸せだ。
「おーい、おいレイ?聞こえてんのか?」
「あぁごめんリョータ、ぼーっとしてた…」
この如何にもザ・ネッ友みたいなやつはリョータ、結構長い付き合いだが下の名前しか知らない
「そんな感じだと次の大会勝てねぇぞ?まぁ俺の類稀なる天賦の才でー」
「ごめんもう眠いし、前にリョータに勧められたアニメでも見ながら寝るわ」
「おい話きいてるのかよ!まぁお前が高貴なる異世界ものに触れてくれるのは、異世界もの評論家の俺としては、とてつもぬわーく嬉しいからまぁ許してやるよ!」
「やかましい!切るぞ」
俺は素早く通話を切断しモニターの電源を落とす。
モニターの光が消え、部屋は一気に暗さを増す。
スマホで前にリョータから勧められた異世界モノを再生しながら俺はゆっくりと眠りにつく
────「………い!」
朝からやかましい…リョータか?
────「おい!こんなとこで寝てんじゃねぇよ!」
「っんん…」
カーテンは閉めて寝たはずなのに視界が眩しい…
「いい加減起きやがれ!!!!」
バケツいっぱいの水が全身にかかり、俺は飛び起きる
「うわぁ!!!」
全身びしょ濡れで俺は最悪の目覚めを迎えた。
「ったく、城の門の前で寝るとは怖いもの知らずもいいところだよ全く!ほら早くどっか行け!」
「え…?え…?!え?!!!」
「と、トカゲが喋ってる…」
人型のトカゲが嫌ーな顔をしてこちらを見つめている
周りを見渡せば、昨日見てたアニメのような世界に来ている。
「これって…リョータが言ってた………!!!!」
「異世界転移ってやつ…?!!?!」
「…なわけないな夢に決まってる、よし!もっかい寝よう!」
「アホかお前は!!!!」
空のバケツで思いっきり殴られ、俺の最悪の異世界暮らしが始まってしまった…




