第四話:「気になるあの子」
「幻君、写真の件一緒に来てくれてありがとうね!」
「うん、僕も結構楽しかったよ。」
授業後のHR終了後の教室。
クラスの中で仲良くなれた一人の巴ちゃんが
僕に写真の入った資料を返す。
新聞部の情報収集の時に使ったやつだ。
「本当に助かったよ。
あの時は写真一緒に集めてくれて・・・」
巴ちゃんが少々照れくさそうにしている。
高校生活が始まって3週間が経った。
今ではクラスに馴染むことが出来た僕だが、
友人は別に多い方という訳ではなく、
最近は巴ちゃんとの距離が少々不安定だ。
・・・流石に男女の仲だし、
自己防衛的な意味もあるのだろうか。
「親しき中にも礼儀あり」とはいうものの、
距離感が遠くなったり近くなったりとを繰り返している。
今の所、人間関係で問題が発生したり、
クラスで孤立しているわけではないのだが、
変な噂が流れる事だけは防いでいきたい。
・・・特にウェンディ先輩の事に関しては。
「じゃあ、先に部室で待ってるからね。
打ち合わせ絶対来てね!」
巴ちゃんに手を振る僕。
「・・・おやおや~・・・?
幻くぅん・・・好きな子ですかぁ・・・???」
背後に突然現れるウェンディ先輩。
・・・彼女のストーカー癖にも正直慣れてしまった。
(流石に嫌な事には変わりは無いが・・・)
「・・・先輩こそ、
多少は空気読めるようになってきましたね。」
皮肉っぽく返す僕。
クラスメイトや新聞部員の前に突然現れる事が
無くなった事だけは流石に認めておこうと思った。
・・・それでもビックリする事には変わりない。
「幻クン・・・幻クンにはぁ、
お姉ちゃんがいるじゃあないですか・・・」
・・・うっわ。また始まった。
この変態は僕の事になると顔を赤らめるトマト女なのだ。
「おね・・・ウェンディ先輩は、
先輩自身の事を集中してやった方がいいと思いますよ?
僕ばっかりにベタ付いていて大丈夫なんですか?」
「お姉ちゃんはぁ・・・
幻くんと一緒ならどうなっても良いんですぅ。」
何て女だ・・・自身の事すら蔑ろにする様な先輩に、
好かれるという事実にゾッとした。
とにかく早く彼女から離れたいので、
適当な理由つけで部室に行かなければ・・・
「あ、あの。ウェンディ先輩。
僕これから部活の打ち合わせがあるので、
そろそろ失礼します。」
そういって荷物を持ち、教室を出ようとするものの、
よりによって先輩は僕の腕を掴んできやがった。
「幻クン、私、幻クンといたいぃぃぃぃ・・・」
ごねやがった。
うっわ~流石にきっしょいなぁ・・・
なんで後輩を弟扱いして甘えんだよ・・・
こんな現場を巴ちゃんに見られたくないなぁ・・・
「先輩、こんな事言いたくないんですが、
今は甘えちゃいけませんよ。僕にも用事があるので、
申し訳ないですが、行かせていただきます。」
こういう時はやはり毅然とした態度を示すべきなのだ。
いくら先輩とはいえ、互いに依存するわけにはいかない。
(向こうから一方的に依存しているようにも見えるが・・・)
「うぅ~・・・分かりましたよぉ。」
何とか言いくるめられたようなので、
足早に新聞部の部室に向かった・・・
・・・・・
新聞部は毎週水曜日に
職員室の隣の視聴覚室で活動している。
今日もいつもの3人の女子と僕が部室で
机を囲み、次の学内新聞の編集や会議をするのだ。
中学時代は勉強するのに必死で
部活なんてほとんどできなかったが、
高校生活の幕開けからしばらく経った今は、
以前からずっと活動していたように錯覚する。
「はい、今日は副部長決めていきましょうね。」
沙苗先輩がホワイトボードを引きずり出し、
黒いマーカーで上品な文字を描く。
副部長としての心構えや、その際の注意点、
候補の名前(僕含め3人しかいないが・・・)を
分かり易く、几帳面に書き出していく。
「前までやってくれていた副部長が辞めちゃって・・・
幻君と巴ちゃんとみりあさんの中から、
新しく副部長を選ばなきゃいけないのよ。」
凛々しい、神妙な面持ちの沙苗先輩。
流石エリート校の3年の先輩。優雅だなぁと思う。
「さて、早速本題に入りますが、
副部長やりたいって人いますか?」
「「「・・・・・・」」」
・・・・・・・・・・
「あっあっ・・・幻くんが良いと思いますぅ・・・」
!?
ウェンディ先輩だ。
遂に突然部室の中に現れやがった!
「あ、あの、ウェンディさん。
流石に突然アポ得ないで部室入るのは、
申し訳ないんだけど止めていただけるかしら?」
戸惑う沙苗先輩。
「うっお!!!幻くんのねーちゃんじゃんけ!!
相変わらずでっかいっすね~!
何喰ってんすか~?ラーメンとか好きっすか??」
テンションが上がっているみりあ先輩。
先輩にその態度は大丈夫なのだろうか・・・?
「ウェンディ先輩、こんにちは。
今日もお疲れ様です!」
巴ちゃんも挨拶しているが、当然、僕は気まずい。
咄嗟に反応する事も出来なかった・・・
ウェンディ先輩はでかい体格の割に、何て素早い女性だ。
まるで忍者だ。
「幻クンはぁ・・・先輩の私にもぉ、
しっかり毅然とした対応してくれるのでぇ・・・
この部の副部長任せても大丈夫だと思うんですぅ。」
勝手に憶測すんな!僕はただのしがない少年なんだ・・・
「・・・そうね。幻君は1年生だけど、
意外としっかりしてる子だから
副部長任せても大丈夫かもね。」
しかも話が勝手に進んでいる!!!!
何でぇ~???
「幻君、突然で本当に申し訳ないんだけれど、
しばらくの間お願いできないかしら・・・?
副部長と言っても、いきなりものすごい
ハードな役割なわけじゃないから・・・」
「あーしの方からも頼むよ!
幻くんなら何とかなりそーだし。」
「幻君、本当にごめんね・・・
私からもお願いしたいな。」
申し訳なさそうな3人。(みりあ先輩だけ適当そうだが。)
「ほらほらぁ。皆こう言ってますよぉ。」
ウェンディ先輩が煽る・・・
・・・仕方ない。
ここは男・朧塚幻、腹を括るしかあるまい。
しかも気になるあの子・・・巴ちゃんの前だ!
今、男を見せずしてどうする!?
「わ、・・・分かりました。やります。副部長。」
イエ~イ!!!!!
かくして、僕の新聞部ライフ、副部長編が始まる!




