内容の本腰
蛙化現象
好きな人の萎える部分を見て好意的な気持ちが冷めてしまう現象
壁ドン
壁際に追い詰め、壁に片手に突く行為
「明日は土曜だからなぁー」
先生はそう言い残し、帰りのホームルームが終わった。
「(今日は帰ってアニメでも見るか…)」
厳密には今日はではなく今日もなのだが。
バックパックを背負い、さあ帰ろうというときに、右肩に小さな衝撃が届いた。それが人間から肩を叩かれている行為だと察するのに3秒要した。それからその人物を特定するのに要した時間は0.2秒である。
「(この匂い。間違いない。)」
「ねえ、この後暇?ちょっと付き合ってほしいんだけど…外国語準備室に来てくれる?」
八咫愛華である。クラスのネームドが僕に何の用だ。カツアゲか?援〇交際か?もしかして、告白か?
「来てくれるよね?」
「あ、はははははいいい」
良し。返事は上出来だ。
◇外国語準備室で待つこと10分
間違いない。告白だ。
きっと群れをしない一匹狼の僕に一目ぼれしたのだろう。きっと七瀬の嫌な部分を見つけてしまい、噂の蛙化現象ってやつだ。いや、でも待てよ…僕の使命は負けヒロインをカゲから支え、負けヒロインを勝たせること…でも彼女ほしいし…
と、田中春道は憶測に憶測を重ね、アリもしない事実を作り出し、絶望してしまう。
(まずい、僕を暗殺しに来るんじゃないのか…)
「おじゃましまーす」
八咫のさんが入ってきた。一人である。
八咫のさんはニコニコ近づいてくる。
止まらない。
(ち、近い…)
僕はじりじりと引き下がり、背中は壁と密着する。
八咫さんは留まることを知らない。
「ねえ、春道君」
「ちょ、近…」
八咫さんの右手は僕の背中の壁に張り手をついている。
つまるところ、『壁ドン』である。
僕は腰が抜け、尻もちをついてしまう。
念のためもう一度言うが、抜けたのは腰だそ。
「あのさぁ、一緒に華蓮落とさない?」
「は、はい…?」