無事に転生!そして実感するチート能力の片鱗!
僕の名前はチェルト。年は3歳。
所謂転生者。自分が転生者という記憶が戻ったのはつい先日。家で躓いて、頭を強打した時に記憶が戻った。前世では交通事故で亡くなり、神様のご慈悲でこの世界に転生した。もちろんチェルトの記憶が無くなった訳ではなく、なんなら主人格はチェルトである僕になる。頭を打ったときはお母さんとお父さんに酷く心配された。
さて、話は僕の今いる村について話そう。僕のいる村は村にしては規模が大きいと思う。まず、村の主な収入源は農作物と狩り、そして、冒険者や旅人、商人たちへの宿や飲食の提供となっている。そのため、施設が充実しており、道具屋や宿屋、酒場はもちろん、鍛冶屋や教会、ギルドの出張所や警備兵の駐屯地、銭湯みたいな大浴場なんかもある。村民はだいたい800人ほど。農地は村全体の三分の二を使っており大きさはよく挙げられる東京ドーム計算だとだいたい300個分とめちゃくちゃ大きい。よく分からない?だいたい4km×3.5kmの大きさだと思ってくれるといいよ。その農地では主に小麦と大麦を育てて一部分では季節の野菜などを育てている。これ程大きいと管理はともかく収穫が大変だが、そこは村人総出で収穫作業をしている。それでも大変なので収穫時期になると冒険者や近くの村(近くでも歩きだと1日かかるくらい離れている)ところから人を借りて収穫しているほどだ。ちなみに村で作られた小麦の総量はだいたいで約4万人分の1年間の小麦消費量を収穫している。いや、改めてまじですごいなうちの村。そのおかげか村ながら結構裕福な家庭が多いのが村の特徴なのだが、これには村の領主様の力が大きい。
村の領主様はここの村の他に何ヶ所か村を納めている辺境伯様で村はその息子のひとりが管理している。辺境伯様は統治している村それぞれに村の近辺や村の中を警備する兵士や魔物が入って来れないようにする魔法壁を発生する魔道具を設置している。そのおかげでここまで大きな農地を作ることが出来たのだろう。ちなみにここまでの規模だともはや街じゃねぇか言うかもしれないが父さんと一緒に1度辺境伯様がいる街に行ったことがあった。大きさは村の2倍の大きさぐらいなのに村と比べ物にならない人と建物の多さ、そして街を囲む街壁はめちゃくちゃ高かった。人の多さを父さんに言ったら街にはだいたい5万人ぐらいいるそうだ。その差約63倍。そりゃあ多いわ。
そんなカルチャーショックを受けた僕だけど現在、ちょっとした事で悩んでいた。それは自分のステータスを確認出来ないってことだ。父さんにそのことを聞いたら、自分のステータスを確認できるようになるには5歳になって教会で神様に祈りを捧げ、加護を受けると見れるようになるらしい。神様、そんなこと言ってなかったぞ…。ということで現在、自分がどんなステータスでどんなスキルを使えるか分からない状態なんですよねぇ〜…。後、なんでステータスのこと知ってるのか驚かれたけど、適当に近所で5歳の所謂ワルガキが「俺は5歳だけど片手剣スキルレベル3なんだぜ〜」って威張っていたと言ったら納得した。
「やっぱり5歳になるまで大人しくしていた方がいいのかなぁ。」
「ん?何がだ?」
「あ、なんでもないよお父さん!」
僕は誤魔化すように笑顔で父さんに返す。現在、僕は父さんと一緒に物置とかしていた家の小屋の片付けをしていた。なんでも父さんの妹、僕の叔母さんが近々村に帰ってくるらしく、そのため、この小屋を叔母の部屋にするとのこと。聞いた話だと叔母さんは冒険者で王都に住んでたらしいけど、冒険者をやめて戻ってくるそうだ。ちなみに母さんは晩御飯の準備中だ。
「ねぇ、お父さん。」
「ん?なんだ、チェルト?」
「叔母さん、冒険者ってことは剣とか使えるの?」
「んや、あいつは剣とかは使えない。でも、魔法の才能は同い歳の奴らよりあったからな、たまたま村に王都から来てた冒険者パーティに誘われて村出てったんだ。」
「へー。」
冒険者パーティにスカウト、しかも王都の冒険者ってなると相当強かったんだな、叔母さん。
「やっぱりどうにかして魔法の適性ぐらい分かるようにならないかなぁ…」
「なんで魔法の適性知りたいんだよ…。」
「え、だって適性あれば魔法使えるようになるんでしょ?」
「あのなぁ…。適性があっても基礎しっかりしないと使えるわけないだろう?」
「え?そなの?」
「あぁ。なんだったら父さんだって風の魔法適性あるんだぞ?だけど、父さんは魔法を使えない。それは魔法を使うための基礎が分からないからだ。」
えぇ…そんなこと神様言ってなかったような…適性がなくても修行次第で使えるとか言ってたけど…。
「魔法適性あってもその基礎ってやつを覚えないといけないのかぁ…。魔法って大変なんだなぁ…」
「お前、そんなに魔法使いたいのか?」
「そりゃあ、使えるなら使えたいよ。魔法使えたらもしかしたら父さん達の手伝いに使えるかもしれないじゃん。」
「ほー。よし!ちょっと待ってろ。」
そう言うと父さんは小屋の奥の方の本が積み重なったところに行って何かを探し始めた。
「お父さん、何してるのー?」
「えっとだなぁ、たしかここら辺にあったと思うんだけどなー…あ、あったあった!」
父さんは1冊の本をを持ってきた。
「一応聞くが、お前、文字読めるよな?」
「一人で本読めるくらいには文字読めるよ?」
「よし!ならこれをやろう!」
そう言って渡してきたのは表紙に〈炎魔法の基礎〉とこの世界の文字で書かれた本だった。
「えっ!?これってまさか…!」
「炎魔法を使うための基礎と初心者用の魔法が何個か乗ってるやつだ。お前の叔母さんが使ってたやつでもう使わないだろうからお前が読んでも大丈夫だろ。」
「ほんと!?!?やったァァー!」
僕は父さんから本を受け取り、はしゃぎ喜んだ。僕に炎の魔法適性があるかは置いといて、これで魔法の基礎が学べるはず!ゆくゆくは魔法使えるように慣れれば万々歳だ!
「ほら、まずは小屋の片付けからなー?」
「はーい!!」
その後の片付けの間でもウキウキ状態だった僕は思いのほか片付けが長引き、晩御飯の時間だったので御飯を食べて、大衆浴場でお風呂に入ったら、眠気に襲われそのまま寝てしまった。
◆◇◆◇
翌日
僕は家の前で魔法書を読んでいた。さすがに家の中で読んでいて誤作動して家が火事になったらお笑いものだからだ。
「えっとなになに?〈魔力の感知〉?」
『魔法は自身の魔力を感じ取り、その魔力を使いたい属性のイメージし、その通りに魔力を練り上げ、イメージを放出することで使うことが出来ます。』
『まずは、自分の身体に流れる魔力を感じ取るところから始めましょう。』
『魔力を感じ取るには楽な姿勢でいることが大事です。自然体や自分が楽になれる姿勢を見つけて、身体の力を抜きリラックスしましょう。』
『リラックスしたら、ゆっくり大きく息を吸ってください。その時、自身の足の爪先から頭のてっぺんまでなにかの力が流れるような感覚をイメージしましょう。』
『息を吸ったら、少し息を止める。この時、力が頭のてっぺんで立ち止まるイメージを持ちましょう』
『止めたあと、吸った息をゆっくり吐いてください。その時、頭のてっぺんから足の爪先まで力が流れるイメージをしましょう。』
『これを繰り返し、身体の中に力が巡り巡る感覚を感じ取ってください。その力が魔力です。』
「…………」
なんか…よく見る健康法とかのインチキ臭いやり方みたいな感じなんだけど…。
「と、とりあえずやってみよう。」
えーっと、まずは自然体の姿勢…。あとはゆっくり息を吸いながら魔力を爪先から頭に巡るようにイメージ…少し息を止めて、息を吐きながら頭から足先まで魔力が巡るようにイメージ…これを何回も続けた。
何回かやってると変化を感じた。最初は曖昧だった魔力のイメージが徐々に鮮明になってきた。そして、魔力が身体中に巡るのを感じた時、身体に違和感を感じた。
「なんか、身体がぽかぽかする…?」
僕は急いで本の続きを読んだ。
『魔力が身体中に巡る感覚を感じ取ると身体の中から心地よい熱さを感じると思います。それは魔力があなたの身体を包み込んでいるからです。』
『この状態はあなたの魔力が見えない服を常に着ている状態と言ってもいいでしょう。』
『この状態のあなたは他の人より長く健康的で若々しさを保てることでしょう。』
やっぱりインチキ臭い健康法とかの類だこれぇ?!?!いや、実際にそう感じているから正しい事なんだろうけどさ?!
『この状態になれば、魔法を使うのは簡単です。』
『魔法はイメージの具現化を放出することです。身体の魔力が巡るイメージをできたあなたならきっと魔法を使えるでしょう。』
「なんか、急にめっちゃ褒めてくるじゃん…」
『この本は炎魔法の基礎についての本なので、炎のイメージを具現化しましょう。』
炎のイメージ…
『まずは手のひらに魔力を集中させます。』
手のひらに魔力を集中…
『その魔力を炎に変えるイメージ、例えば手のひらサイズの焚き火やロウソクの火をイメージしてください。』
手のひらサイズの焚き火のイメージ…
『イメージが固まったら、そのイメージに魔力を練り上げていきます。』
魔力をそのイメージに練り上げる…
『練り上げたら、そのイメージを放出!』
イメージを放出!!
ボォッ!!
「うわっ?!」
本の通りにやってみたら、僕の手のひらに炎が現れた。ほんとにこの本の書かれていることって正しいことだったんだ…
「って、あちちちちち!!」
僕は手を振って自分の手のひらの炎を消す。めちゃくちゃ熱かった〜。え、炎出す度にこんな熱い思いしなきゃなの?
「えっと、本はなんか書いてないのかな…?」
『炎をイメージして放出出来たらあなたは炎の魔法の基礎は完璧です。もし、出した炎が暑かった場合は自分の手のひらから少し浮かせるイメージを持ってやってみると熱くないかもしれません。』
そういうのは最初に言っておくもんだぞ…。
えっと、自分の手のひらから少し浮かせるイメージ…。
そのイメージ通りに炎を出してみたら熱くなかった。しかし、炎の熱は感じる。どうやらこれも僕の考える炎イメージのような感じがする。ともあれ、だ。
「僕、魔法使える…!」
全身から喜びを感じる。僕はたまらず、家にいる父さんと母さんの元に向かった。
「お父さん!お母さん!僕魔法使えた!!」
「えぇ?!」
「ホントなの?!」
「うん!ほら!!」
そう言って手のひらに炎を作り出す。それを見た父さんも母さんも一瞬目を丸くしていて、そして二人はお互いに興奮気味で抱き合った。
「母さん!!うちの息子は天才だ!」
「そうね!!今日はお祝いにしなきゃ!!」
「あの、二人とも…?」
「こうしちゃいられないわ!私、お祝い用の料理の材料買ってくる!」
「俺も一緒に行くぞ、母さん!」
「あ、ちょっと二人ともぉ?!」
あっという間に二人は買い出しに出ていってしまった。…二人の行動力の高さには開いた口も塞がらない。
その夜、いつもより豪華な食事と買い物中に近所さんたちに言ったのか近所の人達がぞろぞろと集まってきてみんなに天才だーって言われてよいしょされました。
…こんなおおごとになるとは思ってもみなかったなぁ…
途中の魔力の概念は某ハンター漫画を参考にさせていただいてます。
次回は叔母さん登場。しかし、何やらわけあり?
乞うご期待