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第三話 馴れ初め

 ヒースメイル侯爵家の一人娘であった私と、ストライナ公爵家の三男であるアストル様との婚約が結ばれたのは、私が八歳、アストル様が十歳となった年だった。


 侯爵家の入り婿という立場は、継ぐ爵位のない貴族令息達にとっては喉から手が出るほど手に入れたいものだったようで、私の婚約者争いは、それはもう熾烈を極めたのだとか。


 私が三歳になった辺りから毎日のように山のような釣書が届き、茶会などへのお誘いもひっきりなし。


 最初のうちは「今後跡を継いでくれる息子が産まれないとも限りませんし」と言って、両親は婚約の申し込みを受け流していたそうだ。けれど私が五歳になる頃には母が年齢的に子供を諦め、私をヒースメイル侯爵家の跡継ぎとすることを大々的に発表した。


 それからは本腰入れて、私の婚約者探しを始めたそうなのだが──申し込んでくる人数があまりにも多過ぎて、両親は早々に参ってしまったらしい。


 そこで、先ずは侯爵家以上の家柄のご子息に限るという条件を付け、その次に年齢、見た目、評判といった様々な規制を設け、それによって選ばれた数人を、最終選考ともいえる私との初顔合わせ兼茶会の場へ招き、

一番大切な選択を私へと委ねた。


 その結果、見事私の婚約者に選ばれたのが、ストライナ公爵家三男のアストル様だった、というわけだった。


 正直なことを言ってしまうと、私はアストル様を顔で選んだ。


 もちろん、皆様最終選考に残られたぐらいなのだから、それはもう美形揃いではあったのだけれど。


 第二王子殿下はキラキラし過ぎて目がやられそうだったし、クレイトン公爵家の次男の方は筋骨隆々で、私好みの体型ではなかった。全員美形といえば美形ではあったのだけれど、一概に美形といっても様々な種類があるのね……などと、つい悟りを開きそうになってしまったほど、個性に溢れた面々が勢揃いされていて。


 茶会に来ている人の中からであれば、誰を選んでも構わないと両親から言われていたから、私は自分の好みど真ん中のアストル様を迷わず選ばせてもらった。


 さすがに一目惚れというほどのものではなかったけれど、この人だったら好きになれるかも? なんてことは薄ら思ったような気がする。


 それから見事、理想の婚約者を完璧に演じ続けたアストル様にすっかり騙され、骨抜きになった私は幸せいっぱいで彼との結婚式を挙げた──までは良かった。


 問題なのは、その後。そして、これから。


 これから私はどうしたら良いの?


 初夜直前に予想外の問題が勃発したせいで、私は途方に暮れてしまった。


 取り敢えず結論から言うと、夫婦の務めとしての初夜は無事に終えた。


 始める前にアストル様が突然おかしなことを言い出した時はどうなることかと思ったけれど、その後の巻き返しで初夜自体はなんとかなった。それは良かった。


 いや、あれは良かったと言っていいの? 


 確かに初夜は済ませたけれど、正直もの凄く辛かった。だって、あり得ない程に痛かったんだもの。


 初めては痛いと聞いてはいたけれど、本当にこれでやり方合ってる? などと疑問に思ってしまう程に痛かった。


 最初さえ乗り切ってしまえば、後はどうとでもなるとお母様から聞いたけど……これって本当にどうにかなるの? と、声を大にして言いたいし、聞きたい。


 次の日の昼を過ぎた今になっても、身体中が痛むのに。


 子供を授かるまで、これから何度もしなければならないのだと思うと、もう恐怖しかない。出来れば二度と致したくない。


 しかも、目が覚めた時には既にアストル様は隣にいなくて、侯爵家の仕事を教わる為、朝食の後で私の実家へ出掛けて行ったとメイドに教えてもらった。


 使用人達は一応、結婚式の次の日だからと引き留めてはくれたみたいだけど、「初夜は無事に終えたし、ゆっくり休ませてあげたいから」と言われてしまえば、頷くことしかできなかったとか。


 それはまぁ仕方ないわね。


 私だって自分がいつ目覚めるかなんて分からなかったし、実際に目が覚めた後の今でも、ベッドから起き上がることすらできないわけだし。


 男は初夜の後でも普通に動けて、女だけがこんな辛い思いをするなんて、どう考えても不公平よ!


 そう叫んだところで、何がどう改善されるわけでもないけれど。


 







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