いれぶん
ヴィオレットが思考から浮上した頃には周りには誰もいなかった。
慌てた彼女は、急いで魔力の反応や流れを探る。
____確か小さいけど魔力を持ってる子が2、3人いたはず…。
意識を集中して小さな魔力の反応を探す。
すると一つはヴィオレットのすぐそばに。
2つは移動している最中だった。
近くに反応を見つけたヴィオレットは振り返ると
地面に倒れ込んで___眠ってる?人がいた。
まばゆい金髪に華奢な手足が生えていることをジャージーの上からでも認識できる。
「ちょっと!え?!死んでないよね?!
おーい!起きてよ!」
ヴィオレットは素早く心音と呼吸を確認し、寝息を立ててるのを確認してから揺すぶった。
「んぅ…朝?」
「朝どころじゃないよ!よくこんなところで眠れるね。」
ふわふわとした髪がぴょこぴょことゆれた。
「あ!ヴィオレットちゃんだっけ〜?
僕、ノアっていうの。よろしくね〜」
「よろしく!ノア!ボクのことはヴィオって呼んでいいよ!
って!それどころじゃないよ!
みんないなくなっちゃったんだ!多分干渉値測定だよ!
今魔力を追ってみたら場所わかったから一緒に行こ!」
「あ〜そうなんだ。
じゃぁ一緒に行こ!ヴィオちゃん!」
ノアは呑気にあくびをこぼし、伸びをした。
立ち上がるとヴィオレットを見下ろし手を差し出した。
「じゃ、いこっか。」
「うん!って!!子供扱いしないでよ!
ボクこんな見た目だけどみんなと同じ15歳なんだから!」
「あはは〜そーだった!
ほーんとにヴィオちゃんかわいい。
ほっぺぷくぷくして美味しそう。ふふ。」
ノアはもう一度しゃがみ込みヴィオレットのほっぺたをツンツンした。
「よく言われるけど美味しそうは言われたことないや。
もーーー!だから早く行かなきゃなんだってば!
行くよ!」
ヴィオレットはノアの手を掴んで、瞬間移動を発動させた。
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「わ〜すごいねぇ。ヴィオちゃん!」
「ふっふーん!このくらい朝飯前なんだから!!」
ヴィオレットが胸を張っているとどよめく声が聞こえてきた。
「さすが、王族だな。」
「干渉値はずば抜けていいな。」
「でも干渉値だけってね。」
クスクスと笑い蔑む声が聞こえた。
なんでもこの国の第二王子は干渉値だけらしい。
勉学は、王族にしてはいまひとつ。
素行は悪く、王族一の問題児と呼ばれてる。
干渉値はいいから廃嫡されなんだなんだと影で揶揄されている。
「え?!このクラスに人間の王族いるの?!」
「え、ヴィオちゃん知らないの?
あんなに仲良さげだったのに。」
ノアはニコニコの顔を崩さずヴィオレットを指摘した。
「仲良さげ?ボクにそんな人いたっけ」
ヴィオレットが首を捻ってると、目の前にラウルがやってきた。
「おい、あとはお前らだけだ。」
「あ、ラウル!ありがとう!
ボーッとしてたら置いてかれちゃって。」
「ふん。」
ラウルは鼻で笑うとその場に座った。
「ノア!ボク先行くね!」
「ヴィオちゃん行ってらっしゃい〜。」
ノアとヴィオレットが仲良くなっていることにラウルが目を見開くも、ヴィオレットは気にせずに前へ向かった。
「嫉妬した?」
「誰が誰にだよ。」
「君が僕に。」
「はっ、わけわかんねー。」
「それで、王子サマ。
ヴィオちゃんに言ってないの?」
「うっせぇ。王子なんて肩書きいらねーんだよ。
それに、わざわざ言ったところでどうなんだ。
俺に跪くか?ふん。笑えねぇ。」
__どいつもこいつも俺のことを見下してやがんだ。
ラウルはその言葉を飲み込み、ヴィオレットに目を向けた
「そうだねぇ。」
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「これに触れればいいの?」
「はい。ヴィオレットさん。」
ハルファに確認を取ったヴィオレットが、そっと壊さないように優しく触れた。
すると眩い光が部屋を包み、ハルファの叫ぶ声が聞こえた。
「ヴィオレットさん!!!!!!手、手を離してください!!!」
何が起こったかわからないヴィオレットはハルファの指示通り手を離した。
徐々に光は収まり、目の前には大きな数字が表示された。
“0”
その数字を見たものは、王子の測定の時よりも一際大きな声でさざめき出した。
「ぜ、ろ??」
ハルファは目の前の数字にポカンとした。
一部の聖教会派の人々は鼻で笑い
周りの生徒たちは目が点になっていた。
「え?0??ボク干渉値0?!
ええええ!そんなことあるの?ボクには魔力があるからなのかなぁ?」
うんうんと考えたヴィオレットがたどり着いた答えは…
「まいっか!!」
「そ、そうですね!ヴィオレットさんは他の成績が良いので特に、これが、大きく関わることは…ない、です。」
ハルファは目を泳がした。
何せ今まで干渉値0の子供を見たことがなかったからだ。
この学園はお金かを払うか試験で良い成績を取れれば誰でも入れるが、干渉値が0にもかかわらず、この学園にくる人はいなかった。
だからこれがどのような成績をつけられるのかわからなかった。
だが、希望はある。
「ゔぃ、ヴィオレットさん!それに干渉値は伸ばすことができます!だから、あんまり深く考えなくていいですよ!はい!」
「じゃ、王子サマ。僕もさっさと終わらせてくるね〜」
ノアはヴィオレットの数値を見てひたすらゲラゲラ笑ったあとラウルに声をかけて立ち上がった。
「おう。」
「ヴィオちゃんすごいね〜僕あんな数字初めて見た。」
「普通ってどのくらいなの?いまいちわかんなくて。」
ヴィオレットは頬をかいて恥ずかしそうに笑った。
「んー、大体は2,500前後ってところかな?
うちの王子は9万くらいだったと思うよ。」
「へぇ!すごいなぁ。」
ヴィオレットはちょっと悔しかった。
「じゃ、僕も終わらしてくるね。」
「うん!」