わん
「なんだ…この子は?!」
「まぁ…瞳が真っ赤じゃありませんか?!」
「嘘だろう?」
その赤ん坊が生まれたのは聖教会の敬虔なる信徒の家。
教会に一番近くに構える医者を呼び立て、
待ちに待った赤子を取り上げた。
喜びも束の間。
産声を上げた子の瞳は、“忌み子"と呼ばれる血のように紅い瞳だったのだ。
「神よ…なぜこのような仕打ちを…」
「あな、あなた、、、こ、この子は、うちの子じゃないわ。
そうよね?!」
やっと大仕事を終えたと思った母親は狼狽えた。
「お前、まさか!!!」
父親も気が動転しあらぬ方向へ誤解が進む。
「ちがうわ!なぜ、そのような?!」
父親はお産を終えたばかりの女の頬を叩き、
赤子を取り上げた。
「こんなやつは!うちの子であるはずがない!」
そう憤慨して行った父親は乱暴に赤子を抱き、足音を立てて外へ向かった。
「家紋のついておらぬ馬車を裏口に出せ。」
「は。」
「魔の森へ向かえ。」
「…かしこまりました。」
御者は、男が抱く赤子をチラリと見やり。悟った。
(この赤子は捨てられる。聖教会の教えでは、忌み子は魔王の眷属。魔に属するものは教会の敵。だったか。)
「このことは他言無用だ。今月の給料ははずむ。」
「…御意。」
権力には逆らえない。しょうがない。
御者は自らを言い聞かせ、魔の森へ馬車を走らせた。
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