記憶喪失の少女②
こんにちは、横須賀蒼です。
今回はメモはどのような少女なのか、そんな感じの話です。
チュンチュンチュン
早朝、小鳥のさえずりが響く。
冬の朝、まだ太陽も昇っていない寒い時間、小さな宿屋の一部屋で少女は目を覚ました。
寝起きの彼女は、肩にかかるくらいのきれいな黒色の髪はぼさぼさで、宿屋の寝間着をだらしなく身に着けたまま、まだ薄暗い外の景色をぼーっと眺めていた。
「ここ……どこ?私、は……?」
彼女は小さな声で呟いた。
少しして、太陽が昇ってくる。少女はそれを合図のようにベッドから出た。
寝ていた宿屋の部屋は、お世辞にも広いとは言えない部屋で、ベッドと机が置いてあるだけの簡素なものであった。
目をこすりながら、少女は机の前へとたどり着く。
そこには、一冊の魔導書が置いてあった。
表紙には、『メモワール・オビリビッシ・アムネジア』と書かれている。
誰の名前だろうか。少女は心の中で質問を投げかけた。
答えを知るべく、表紙をめくった。
『おはよう、今日の私。目覚めはどう?まあこんなこと聞いても今これを書いている自分はその答えを聞けないし覚えておけないんだけどね……。
いきなりだけど本題に入ろうか。
あなた、てか私の名前は、メモワール・オビリビッシ・アムネジア。何かを求めて旅をしているみたい。確証はないけどね?それには理由があるんだよ。。
メモワール、つまり私は記憶喪失、というより一日で記憶を失っちゃうみたい。そんなわけで、今この魔導書に文字を書き込んでいる私も、詳しいことは知らないの。
もしかしたら、身なりや読み書きができるから、貴族出身だったのかもしれないし。
ちなみに、これを魔導書に書いている時間は、夜の日付が変わる二時間ほど前。昨日の私が試したみたいで、記憶は深夜零時ピッタリにリセットされることが分かったの。
あと、紙の書物より、魔導書に書くことを選択した理由は丈夫だからかな。燃えたりしたら困るし。これがなくなると、メモワールは事実上死んでしまうからね。
今そこにいる私は、死ねば楽になれると思っているかもしれないけど、そういうわけには行かないの。過去の私には自殺しようとした私もいたみたいで、血がついたナイフが一本荷物の中にあったの。血は調べてみたところ自分のだったから、何を血迷ったか自殺を試みた私もいたみたい。でも、私は今ここに文字を書いているわけだ。つまり、死ねなかったわけだ。ということは何かあるんだろうけど、今日以前の記憶がないから何も分からないの。
だから、記録を付けることにした。それがこの魔導書ってわけ。この魔導書に、毎日の記録を付けてほしいな。例えば、街の風景や食べたものについて。覚えてられなくても、また感じられるように……。
まあまずはお風呂に入りましょうよ。どうせ、髪がぼさぼさになってるんでしょうし。』
そういわれ、ハッと我に戻る。ついつい読み込んでしまっていた。
気づけば、太陽ももうすぐ全身が見えるというところまで来ていた。
窓から机の上においてある鏡に目をやると、寝起きの状態のまま変わっていない自分の姿が写った。
お風呂に行こうかと考えたが、自然に魔導書に視線が行ってしまう。
私は、また一ページ、ページをめくった。魔導書に書かれていた『記録』は、実に一年ほど続いていた。
あとでゆっくり確認するつもりで閉じようとするが、一ページ目の最初に目が行った。
『最後にアドバイス。前の日の記録が見たいなら、一番新しいページを見てね。私、メモワールのことをまた知りたかったら、一ページ目を見てね。それじゃ、よい旅を』
そして、そこから、『私』の記録が始まっていた。
「さて、とりあえずお風呂お風呂……」
顔を洗ってお湯で身体を流して、そのあとは街に出てみよう。
彼女は、そう決めて宿屋の浴場へと向かった。
そして今日も、「私」の全く違う一日目が始まるのだ。
とりあえず、書いてみたけど、メモちゃんこれで行けるかな?
導入は多分これで終わりなんで、次からようやく本編です。
ブックマーク等してくださると嬉しいです。
それでは、また。