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少女戦士は、やめられない

作者: 黒坂 志貴
掲載日:2022/12/21

変身して戦う少女を書いてみたかったので、比較的ベタな設定にしてみました。

登場する少女三人は、自分や身近な人たちが、モデルだったり理想だったり想像だったりします。

楽しんでいただければ、幸いです。


2025.12.15カクヨムさんにも投稿しています。

大きく肥大した、煙のような黒い影。

中心には赤い目が妖しく光り、鋭く長い爪のついた腕を振り回しながら、苦しそうにもがいている。

ダーク・コーガイン。

宇宙からの侵略者が蒔いた種、それが人間のマイナスエネルギーを受けて育つ、私たちナチュラル・ビューティーの敵。

夕暮れが迫り、人影もまばらな湖のほとりにある公園に、誘導は成功した。

驚いて逃げ出す人々の遠ざかる悲鳴に安堵しながら、その怪物に向き直る三人の少女。


「さあ、覚悟はいい?」

ピンクの長いツインテールに、同じくピンクを基調とした、大きな襟がついたワンピースのような戦闘服。

裾の白いフリルが揺れて、少し血の滲む太ももが見えた。

ビューティ・ピンク。

得意技は、コサージュのような小花の飾りが付いたショートブーツで繰り出す、マジカル・パワー・キック。

接近戦で叩き込まれるその威力も侮れないが、三人のパワーを結集して放出する必殺技の要にもなる、正義感溢れるチームのリーダーである。


「危ない、ピンク!」

振り下ろされた腕を避けて、足元に矢を放つ。

黄色を基調とした大きな襟のノースリーブに、膝上丈のキュロットスカートを翻し、ムーンライト・アローを華麗に決めたのは、ビューティ・イエロー。

ハーフアップを光沢のある大きなリボンで飾り、緩やかなウェーブの金髪が風に舞う。

大きな影はよろめいて、伸ばした腕が後ろからイエローを掠める。


「イエロー、後ろ!」

ピンクの叫びに、反応したのはビューティー・ホワイトだ。

白が基調の大きな襟がついた半袖シャツに、ハーフパンツ型の戦闘服で輿にはベルトに下げた一振りの剣。

高い位置で一つにまとめられた長い銀の髪を風になびかせ、すらりと抜かれた剣が、次の瞬間には納められている。

遅れてボトリと落ちた影の腕は、指先が少しうごめいて止まった。


「ありがとう、ホワイト!」

影の動きが衰え、明らかに弱っている今がチャンスだ。

イエローの礼に微笑んで返し、態勢を整えた三人はピンクが持つ花を模ったロッドに集中、息を合わせて唱える。


「ナチュラル・ビューティ・シャイン!」

一斉に放たれた無数の光が影を包み、一つの塊になって解けるように消えた。

後には、何も残らない。


「やったわね」

ピンクが安堵の息を漏らすと、息を整えながら、二人も同意する。

「じゃあ、またね」

イエローが言うと、

「もう、お終いにして欲しいですけれど」

ホワイトの言葉に激しく頷きながらも、諦めムードが漂う。

三人はそれぞれ辺りに人気ひとけが無いのを確認すると、ブレスレット内臓の通信機に帰還要請をする。

そうして次の瞬間、公園から三人とも姿を消した。



地方都市の駅から徒歩五分、三十路を過ぎて買った1LDKのマンション。

まだまだ、ローン返済中。

十一階建ての七階にあるリビングからは、線路の向こうに沈みかけた夕日が見える。

ずいぶんと日が長くなってきたおかげで、夜まで余裕が出来た気がする季節だ。

私、森宮雪乃もりみや ゆきの。四十五歳独身、そこそこ大手メーカー勤務の会社員。

変身がとけると、白髪染めでダークブラウンにしたストレートのセミロングを首の後ろで一つに束ね、地味な白ブラウスにベージュのパンツ、仕事帰りの一戦明けとくれば、全身で疲れを表現できる。

「お帰り、雪乃~」

冷蔵庫を開けて冷えたビールを片手にソファに座ると、膝に飛び乗ってくるウサギに似たこの生き物は、名をハクトと言う。

通信要請に応えて帰還魔法を使い、自宅に戻してくれた長年の相棒。

白シャツに濃紺のベスト、シマ模様のパンツを履いて喋るコイツはその昔、私に魔法戦士になれと言った。

宇宙から来たらしいが、自分たちとは別の宇宙生命体がこの地球を狙っているから、仲間と共に戦って欲しいと。

当時は若くて正義感溢れる中学生、選ばれるだの魔法だの、バカにしつつも憧れマックス世代だったから、うっかり引き受けてしまったのよね。

「ホントに疲れました、重いからどいてくれませんか?」

ため息交じりに雪乃が言うと、ハクトは無言で膝から降りた。

そのままキッチンへ消えたかと思ったら、トレイに鯖缶とチーズ入り魚肉ソーセージ、漬け盛に取り皿と缶ビールまで乗せて帰ってくる。

今度は隣に座って、プシっといい音させながらビールを開けたと思ったら、笑顔で差し出してくる。

「カンパ~イ」

勢いよく飲んでプハーっと口の端を拭くと、ソーセージを剥いてかぶりつく。

昔は健気で可愛かったし、小さくて華奢なくらいだったのに、今ではたぷんとした腹肉がズボンベルトに乗っかり、顎も二重になっている。

「いやあ、長年よくやってくれて、ボクは心の底から感謝してるよ?ホワイト!」

すっかりオッサンと化したかつてのマスコットを、げんなりしながら見つめた。

缶ビール片手に肩をバンバン叩くとか、今時職場の上司ですらやらないのに。

「はいはい、それで後継者はまだ見つからないの?」

酔っ払いウサギを上から威圧してやると、すぐさましょんぼりと肩を落とす。

「スミマセン、まだです」

「ソレ、聞き飽きましたね」

こんなやりとりを、もうどのくらい繰り返したか分からない。


敵は、ダーク・コーガイン。

敵方ボスが戦力増強を狙って蒔いた種が、主に化学汚染された物質や生き物のマイナス・エネルギーを受けて発芽し、黒い影のような物体になって現れては暴れるのだ。

手間はかかるが戦って負けるような相手では無かったので、出たと聞いては潰しに行ったが、いくら倒しても所詮は手駒なだけの怪物。

キリが無いので、当時はそのボスに勝負をかけようと三人で手分けして探し、戦士になって約一年で決戦の時が来た。

この街にあった化学メーカーの工場長が黒幕だと判明し、ナチュラル・ビューティー三人と、それぞれの補佐をするマスコット三匹で乗り込んだのだ。

激闘の末、なんとかボスを倒して勝利を掴み、地球は平和を取り戻した。そうして私たちは普通の中学生に戻った……ハズだった。

いや、確かに戻った。

忘れもしない、ちょうど中学三年に進級したばかりの放課後に、桜舞い散る公園の丘で、マスコットたちと涙ながらのお別れをしたのよ。

それからも戦士だった三人は、友達として仲良くはしていたけど、やがて受験で進学先もバラバラになり、それぞれの進路を歩んでいった。


なのに成人式が迫った頃、急遽呼び出されたのよね。

「大変だよ、ホワイト!すぐに来てくれ!」

もう使うことも無いと思いながら、机の引き出しにしまってあった、すっかり青春と思い出の遺物と化したブレスレットから聞こえる、懐かしいハクトの声。

たった一年の魔法戦士としての活動が、あんなに深く心に刻まれていたなんて。

咄嗟とっさに理解出来ない頭とは裏腹に、身体は反射的に反応していた。

変身して急行し、見たのは紛れもないダーク・コーガインの種から育った怪物。

集結した三人で久しぶりに戦い、ブランクも感じさせず勝利した後。

「ゴメン、まだどっかに種が残ってたみたい」

って言ったのが、ピンクの相棒で見た目が小鳥のフラウ。

「これだけじゃないと思うんだ。たまに呼んじゃうけど、また協力してくれる?」

って続けたのが、イエローの相棒で見た目小さなオオカミのディア。

「この通り、頼む!」

って駄目押しに土下座したのが、ホワイトの相棒ハクトだった。

いくつになってもカワイイに弱いのが女子、こんな見た目愛らしいマスコットたちが、うるうるしながら上目遣いでお願いしてきたら、ついうっかり承諾してしまうのよ。

それにあの時は、まさかこんな長期間だとは思わなかったし。


結局、復帰当時に大学生だった私は、多くて年に数回のダーク・コーガイン討伐に協力してきた。

最終決戦のような強敵でも無かったし、たまに三人集まるのも同窓会みたいで楽しかったから。

それでも社会人ともなれば、やらなければならないことは増える一方で、減ることはまず無い。

仕事は実家から通っていたが、兄が結婚して敷地内同居すると決まったので、家を出た。

初めての一人暮らしで正直ニガテな家事にも時間を取られ、仕事との両立に悪戦苦闘の連続。

実家から徒歩十分のアパートだったので、残業続きの時は実家で食事をさせてもらったり、まだそれほどネットも普及していなかったから、振り込みや予約商品の受け取りに行ってもらったりと、独立しきれず何かと世話になった。

その残業中に呼び出された時は、寝不足の上に納期に追い詰められていたから、本当にキツかった。

それが落ち着いて仕事のスケジュール管理もマシになってきた頃には、結婚五年目の兄夫婦に三人目の子供が生まれていて、たまに子守とゆー役目を負う機会が出てきた。

恋愛に興味も持てないし自分が結婚するとか考えられなくて、通勤に便利だからと思い切って駅近のマンションを買ったのは、それからしばらく経っていただろうか。

それでも同じ市内だし、実家や兄一家との付き合いは続いていた。

実家の庭でかくれんぼ中に呼び出された時は、帰ってきたらオニが探しにきてくれないと甥が泣いてたっけ。

一番上でしっかり者の幼稚園児だった姪はよく懐いて、休みの日には二人で水族館や遊園地に、遊びに行ったりもしたものだ。

水族館で呼び出し食らったときは、トイレに行くから待っててと姪を館内のレストランで待たせていたから、その後ずうっと「雪ちゃん、う〇こ長すぎ」って、親族が集まる度に言われ続けたのよ。

オマケにその後、動物園でも似たような言い訳使ったから、きっと物凄い便秘とでも思われてるかもね。


その後くらいに、異動で別部署に行き、係長に昇進。

今度は出張が多くて海外にも何度か行ったけど、そこでの呼び出しもキツかったのよ。

距離は移動魔法でなんとでもなったけど、時差はカバー不可能だったのよね。

夜中に呼び出されて、ほんの十分くらいとはいえ全力で戦った後に、またすぐぐっすり眠れるほど神経図太くは無かったから、仕方なく視察レポート書いたりプレゼン資料見直したりして、翌日起きられずに遅刻したのも一回じゃないし。

取引先との商談中に呼び出された時は、最速の三分で片付けたものの、その週末は起き上がる体力が残っていなかった。

再開した時、魔法戦士の契約で新たに追加された、変身すれば常に十六歳の身体という年齢維持と、変身の有無に関わらず常時発動される怪我や病気の軽減魔法は、正直今となっては有難いものでもある。

しかしそれでも、老化を完全カバーなんて出来るものじゃないんだから、アラフォーとか呼ばれだした頃に、いい加減に遅すぎる代替わりを希望したのよ。

そう、たいてい任期は一年じゃないの?ボランティアなんだし、ボス倒したら次のシリーズですよね?リーダーもメンバーも、舞台すらサックリ別物になるんじゃないの?

中には無印からRとかSとか確か最後はスターズだったかで長く続いたのもあった気がするけど、それでも五年そこそこだったじゃない?

なのに、三十年ってどうなの?会社だったら、永年勤続表彰で休暇と金一封出てるトコよ!


ここまでくると、すっかり出来上がった酔っ払い。

テーブルにはビールにチューハイ、ハイボールの空き缶がそれぞれ数本と、ワインのハーフボトルが二本転がり、つまみも数切れ残るのみ。

最初はお調子者上司と生真面目な部下に見えるやりとりが、アルコールの蓄積で、最後は閉店過ぎに酔いつぶれた客とバーのマスターみたいになっている。

何を言われてもひたすら肯定と相槌を絶やさず、キッチンとリビングを往復するハクトは、引きつりながらも笑顔を絶やさない。

これもダーク・コーガイン討伐後のほぼお約束で、酔いつぶれるまで付き合って寝かせ、部屋を片付けるまでがセットなのだ。

ハクトも後継者は考えていた。何人かこっそりスカウトしてみたけど、全部見事なまでの空振りで終わっている。

希望を繋いだ雪乃の姪も、中学生になった頃にスカウトしてみたが、部活と勉強両立したいからムリ、と、アッサリ断られてしまった。

実際、部活は中学で県のベスト4まで行き、スポーツ推薦で入った私立高校では全国大会に進んだ。副部長を務める傍ら勉学にも励み、国立大に合格してみせた。

面倒だから断ったのではなく、しっかり将来を考えた選択だったのだ。

断られた相手の記憶を操作する度、感心すると共に自分の無力さを突きつけられる気がした。

勉強ニガテなドジっ子が世界平和のために、悪に立ち向かう世の中じゃ無くなったんだなと実感する。

もう残りの種は、かなり少なくなっている。

全て発芽するのか分からないが、自分自身が変身して立ち向かえたら良かったのになと、ハクトは思う。

空き缶を片付けて皿を洗い、テーブルを拭く。さすがに運べないので、ソファで沈没した雪乃に寝室から持ってきた布団をかけてやる。

窓の外は、すっかり暗くなっていた。交差して遠ざかる電車の光を眼下に見送りながら、カーテンを閉めて部屋の電気を消す。

「とりあえず明日、ビールはケースで発注しておこうかな」

独り言を残して、お気に入りクッションの上に丸くなった。



雨の季節が過ぎて本格的な暑さにうだる夏、呼び出されて敵と対峙するのは、ごみ処理施設の駐車場。

熱気に揺れる空気に眩暈を覚えながら、ちょこまかと逃げ回る数体に分裂したダーク・コーガインをキックとアローで一か所に集め、ナチュラル・ビューティ・シャインを放った。

光に包まれて消える敵を見送り、

「終わったわね。さあて、帰って洗濯しますか」

ピンクが言うと、

「ホント、朝から暑いってモンじゃないよね。けど、大物もスッキリ乾きそうよ」

イエローが続ける。

「みんなも大変ね。私、今日は休日出勤です。」

ホワイトが盛大なため息をつく。

「たまにはゆっくりしたけど、難しいね。じゃあ、また!」

イエローが少し名残惜しそうに呟くと、二人も同調しながら帰還した。


郊外にある築十五年、木造二階建ての4LDK。

小さな庭と、車2台がギリギリ入る駐車場付きで、ローンの残りも十五年。

二人目の妊娠が分かった時に購入した、当時の新築建売物件だ。

私、伊庭桃花いばももか、旧姓御園みその。四十五歳、既婚で高校生男子二人の母。

最近、思いの外増えてきた白髪が気になり、明るめの栗色に染めた髪は、肩の上あたりで切りそろえられ、裾は軽く内側に巻いてある。

着古した長袖Tシャツにゆったりしたスウェットパンツと、気合ゼロの自宅くつろぎウェア姿。

「お帰り、桃花」

夫は六年前から単身赴任中で、一か月に一、二回だけ週末に帰宅する。

「外、暑かっただろ?」

上は受験、下は部活と忙しく、夫もいない週末は一人で気楽なものだ。

「一休みした方が、いいんじゃない?」

一度落ち着いて座ってしまうと動けないので、帰宅の勢いで洗濯機を回し、朝食の片付けをする。

「なぁ、桃花ってば」

誰もいない家の中、ストーカーのようについて回るこのおしゃべりな鳥が、ピンクの相棒フラウ。

ハトをスリムにしたくらいの大きさで、けっこう派手なピンクに、目の周りと羽の外側につれて、尾の端へ向かって、黄色と黄緑のグラデーションになっている。

頭の飾り羽だけが白で、先が少しだけ濃いピンクという、さすがに宇宙生物というか、図鑑でも見ない色調だ。

「はいはい、おしゃべりは用事が終わってからね」

各部屋に掃除機をかけて、風呂とトイレを軽く磨くと、洗濯が終わっている。

二階のベランダへ行って干し終えると、お気に入りの紅茶をアイスで淹れてリビングに座り、テレビをつけた。


軽いノリの情報番組で流れた視聴者映像に、飲んでいた紅茶を吹き出す。

どこから撮られたのか、今朝のナチュラル・ビューティの映像だ。

たまに現れては、怪物をやっつける美少女たち。その昔は全国ニュースで騒がれたりもしたけど、今では謎多き存在が普通になって、なんとなくスルーされている。

と言うか、メディアでは騒がれなくなっただけで、ネット上だと案外、盛り上がっていたりもするらしい。

まぁSNSも苦手だし、スマホはたまに調べものを検索するか、町内やPTAの役員グループラインでチェックや返信くらいしか使ってないから、よく知らないんだけど。

「桃花、これ食べたいから開けて」

フラウがストック棚から目ざとく見つけたミックスナッツを手に取る頃には、全く違うコーナーが始まって流行りのグルメ試食で盛り上がっていた。

呆れつつも安心して、テレビに向かって話しかける。

「この切り替えの早さったら、ついていけないわね。イヤだわ、年のせいかしら」

「何言ってんの、桃花は可愛くてしっかり者だよ。昔とちっとも変わらない」

小皿に出してもらったクルミをついばみながら、フラウは真顔で答える。

「変わるわよ、疲れは寝ても取れないし、うっかり物忘れも増えるしね」

「いやいや、しっかりリーダーやってくれて助かってますよ、私も地球も。もうこのまま定年退職迎えたらどうかと、いや、なんなら状況次第で再雇用なんてのも全然アリかと」

半ばヤケクソ感を醸し出すフラウの主張は、今に始まったことでもない。

正直、私もこのまま還暦過ぎても戦ってたりするんじゃない?なんて、割と現実的に将来が見え隠れしているトコロ。

再開してしばらくは良かったけど、ぶっちゃけ子育て期間は死ぬかと思いながら魔法戦士やっていたわ。

妊娠期間は呼び出しが少なかったのも幸いだったけど、さすがに欠席したから二人には迷惑かけたわよ。

でも、本気で辛かったのは二人目出産後。当時は専業主婦だったけど、慢性寝不足の中、パワー漲る幼児の相手と乳児の世話、そして終わらない家事。

当時、長期出張の多かった旦那は全く当てにならなくて、寝かしつけ最中の呼び出しには、遅刻していったこともあったっけ。

子供が幼稚園、小学校と成長しても、今度は行事だのPTA役員だのと、保護者の負担は想像以上だった。

さらに家を買えば、近所付き合いに町内会行事もプラスされ、独身時代とは人間関係が大きく変わる。

学校と部活、仕事と家事だった生活は、母に妻、二人分の保護者に自治体の末端員としての、細かな役割が際限なく追加されていく。

さらにローン支払いと塾費用捻出が厳しいとなれば、パートやアルバイトもやってきた。

そんな中でのダーク・コーガイン討伐は、むしろストレス発散と息抜きだったかもしれない。

ママ友関係がこじれた時も、役員のめんどくさい先輩にウザ絡みされた時も、パートで上司だった社員に失敗を連続で擦り付けられた時も、マジカル・パワー・キックはいつもより華麗に決まっていた気がする。

何度か後継者問題が持ち上がったこともあったけど、息子に継がせるような役目でも無いし、契約更新時に追加された追加魔法は有難かったし。

だって、常時発動の病気・怪我の軽減よ?あれこれやることばかりが増える体が資本の生活だから、健康の心配が無いってのは大きいじゃない。

体力の衰えはあるし、昔より回復も遅くはなっているけど、今辞めたら一気にガタがきそうで怖いって言うか……。

近所の小さな事務所で、週四日の事務パート。たまに公園や町内での、清掃ボランティア活動。

子育ても落ち着いてきた今となっては、こんな風にお茶飲みながらフラウとおしゃべりするのも、楽しいのよね。

「ふふふ」

思わず笑ってしまう。

「何か、変な事考えてない?」

フラウが疑いの目で覗き込んできたから、

「違うの、フラウといると楽しいな、って思ってたの」

言いながらほっぺをつっつくと、照れるのもカワイイ。

単に身体だけじゃくて、いくつになっても、少女気分に戻れるのがいいのかな?

あ、そうだ。今度の物産展のついでに紅茶専門店に寄って、限定茶葉買ってみようっと。



あの暑さが嘘のように、秋はどんどん深まっていき、ハロウィンが終わったらクリスマスにお正月と、行事好きな日本はバタバタと街の様相を変えていく。

鬼に豆をぶつけると同時に、新作チョコレートのチェックをする頃、まだ薄暗い早朝に呼び出されたのは、改修工事中のスーパーだった。

商品は置かれていないが、陳列棚が並び、死角が多い。

賑わいのない無人のスーパーは気温通りの寒さなのに、どちらかと言うと見た目夏仕様のこの戦闘服は、不思議と寒さは感じない。

それもマスコットたちの防御魔法なのか、吐く息の白さだけが季節を感じさせる。

今日のダーク・コーガインは、いくつもの分身体を作り出しては消して、こちらを攪乱してくる。

本体を狙ってイエローがムーンライト・アローを放つが、早すぎて上手く狙えない。

長引くと体力が厳しいので、ホワイトが剣の回転で強風をコントロールするサイレント・ストームを繰り出し、時短決戦を仕掛ける。

巻き上げられた風に吸い出されるようにして本体が姿を現すと、ピンクがすかさずロッドをかざし、三人でナチュラル・ビューティ・シャインを決めた。

光に包まれて消える敵を見送りながら、乱れまくる息を整える。

戦っている最中は敵に必死だが、終わって安心するとどっと疲れがやってくる。

通常では考えられない跳躍や移動を繰り返すのだから、いくら魔法でも生身にかかる負担はゼロでは無い。

「は~っ、まだ、しばらく、、心拍、戻り、そう、に、ない」

ピンクが荒い呼吸をしながら言うと、

「…確かに、昔より、キツ…、なったと、思うわ……」

同じように肩を上下しながら、イエローが同意する。

「私も……どう…感……です」

ホワイトは建物にもたれ掛かって、座り込んでいる。

「ホワイト、この後、仕事?」

イエローが問うと、

「ええ、今日、から、…三日、間、……の出…張……イエローは?」

「ハード、だね…私、は、母の通院、付き添いと、夕方、娘の……レッスン、送迎よ」

「続けてる、んだ…ダン、ス……好き、なんだ…ね」

ピンクが微笑むが、まだ呼吸は苦しそうだ。

「みんな、忙しい…よね…今年、こそは……お花見、したい…なぁ」

何年越しかのイエローの希望に、そうだねと頷き合い、帰還魔法でそれぞれの生活へと戻って行った。


表通りから一本入った、静かな住宅街の角地にある、年季の入った木造三階建。

一階は三代続く定食屋で、弁当や総菜も販売する、地元の隠れた名店と言われている、らしい。

通りから入ると十席くらいの客席、弁当と総菜を販売するカウンターがあり、その奥は左手が厨房、右手は手前にトイレと奥に小さな和室が一つで、端にはやや急な階段がある。

二階と三階は住居、厨房の奥には裏庭に出る扉があり、表から想像するよりは広い生垣に囲まれた庭へ続いていた。

私、空賀美月くがみづき。離婚当時に三歳だった娘と母のいる実家に戻った、四十五歳のバツイチよ。

天パでまとまらない髪を編みこんで割烹着を身にまとい、私の母校に通う中二になった娘を育てながら、母と食堂を切り盛り中。

「美月、お疲れ!」

同じく割烹着を着こなす柴犬サイズのオオカミが、毛を朝日で金色に輝かせながら、店内を雑巾がけしている。

「お帰り。ああディアちゃん、拭き掃除終わったら、裏の野菜を運んでくれるかい?」

厨房で仕込みをする母は、最初こそ驚いていたが即対応し、宇宙生物の扱いにもすっかり慣れた。

「はーい、あと五分くらいで終わるので、運びますね」

驚いたと言っても、食堂に動物は衛生上あり得ない!とゆー方向の驚きだったので、普通のケモノと違って話せるほど知能が高く働き者で、見た目に反して毛が散ったり病原菌も保持しないのが気に入ったそうだ。

「よく気が付くし、働き者で助かるわ~」

もちろん、人前には出せないので接客はNGだが、厨房と裏方でも立派な戦力である。

母は自慢のもつ煮込みの味見をしながら、自らの鼻歌をBGMに楽しそうに手際よく、下ごしらえを終えていく。

「結月は?もう朝練行ったの?」

「ああ、ちょうどあんたと入れ違いになったのかな。試合が近いから、気合入ってるんじゃない?」

どこまでも平和で、ごく普通の日常な我が家。魔法戦士やってるのも既に日常化しているこの家では、ダーク・コーガイン討伐も、スーパーに買い物に行くのと扱いは大差ない。

私がナチュラル・ビューティだと母にバレたのは、離婚してこの実家に帰ってすぐだった。

この家から初めての呼び出しに応じた日、帰宅すると娘が昼寝している横で母がディアを膝にのせて、その毛並みを撫でていたのだ。

そもそも中二で初めて変身して戦った時から何かに気づいてはいたらしく、時々いなくなるのとダーク・コーガインのニュースが、やたらタイミング合うなと疑っていたと言うから驚いた。

確信したのは実家に戻ってからで、緊迫した様子で誰かと会話しているのが、襖越しに聞こえたんだって。

何事かと襖を開けてみたら、その相手がディアで、ちょうど私が移動魔法で消えた瞬間を見たらしく、残ったディアの首根っこ捕まえて、物凄い形相で問いただされたらしい。

その勢いに押されたものの、ディアの説明に納得したらしく、すっかり打ち解けて帰りを待っていたんだからビックリよね。

バレたら魔法戦士とかって契約解除だの宇宙に帰るだの言われるかと思ったのに、まさかのスルーで続行。

それまでと同じように、呼ばれたら討伐に行きましたよ。

ぶっちゃけ、幼児を抱えて食堂やりながら、同居の母に内緒で続けるなんてムリよね。

ましてやこの、長期間。トイレだの買い出しだの言って、誤魔化せるほどユルい付き合いじゃ済まないもの。

それに女は鋭いのか、娘も小学生くらいになると気づいていたし、ヘタな言い訳も関係悪化しそうだったらバラしちゃったのよね。

そうしたら普通に、

「ママ、頑張って!」

だもんね。こっちが拍子抜けしちゃう。

けど、やっぱり身近に理解者がいるのは有難くて、ちょっとした愚痴とか理不尽とか吐き出す場所があるのと無いのとでは、心の負担が全然違ったもの。


全く状況が正反対だったのが、別れた夫と家族やってた頃ね。

私も生真面目に秘密は隠すものだと努力したけど、今から思えば完全に方向を見失っていたんだと理解できるわ。

魔法戦士としての自分を隠したい一心で、嘘ついたり誤魔化したり。あの人も優しいけど真面目だったから口論も増えたし、私も感情が昂って泣き叫んだりもしたっけ。

私が素直になれていたら受け入れてくれたかもしれないし、あの人が距離を詰めすぎないように遠巻きに見守るタイプだったら結果は違ったかもしれない。

残念だけど、それ以上の人生を共にするのは、私たちには無理だった。

今ならまた違った対応も出来て、もしかするとやり直せるかも?なんて考えてしまったけど、少し前に風の噂で元旦那が再婚したと聞いて、涙が出たのは内緒にしておく。

そんなしんみりモードだって言うのに、ディアは「姓が悪かったから仕方ない」、だもんね。

なんなのよ、それ!

「美月は『月』だから、『空』がなくちゃダメ。元の『空賀』はいいけど、前夫の『本条』には月の居場所が無いでしょう」

「そういう問題だったの?」

朝食の片付けをして、そのまま惣菜用の下ごしらえにかかりながら、ディアの意見に衝撃を受けた。

「そうよ。ピンクは御園から伊庭だから、どちらも庭園の桃の花でしょ?」

「あ、ホントだ」

そこまで分かってたなら、結婚する前に教えてくれてもよくない?って、恨めしくディアの顔を覗き込んでみたけど、あの時は確信なかったもん、で、終了。

まぁ、あの時点で言われても、私は素直に聞けなかっただろうけどね。

そんな言い合いの間もデキパキと仕事をこなし、惣菜とランチ用メインの仕込みも終了。

「ホラ、後の片付けはやっておくから病院行っておいで」

ディアに急かされるように、美月は母を車に乗せて、いつもの医院へ向かった。

早めに行って受付しないと、ランチ営業時間までに帰れない。自覚症状は特に無いらしいけど、持病の通院は欠かせないし薬も必要だ。

自分は忙しくても、常時魔法のおかげでそういった心配をしなくても良いのは、年齢を重ねるごとに有難みを増す。

診察を終えて薬局に寄り、薬をもらって帰宅すると、ディアがいつもの開店準備をしてくれている。

私たちは休む間も無く惣菜の仕上げに取り掛かり、近所のお得意先への配達弁当を作った。

テーブルのチェックをして暖簾を出せば、今日も「お食事処 満月亭」の開店だ。


慌ただしく過ぎる時間が毎日のように繰り返される中、魔法戦士を続けるのは辛いときもあったけど、今はなんとなくスパイス的なやりがいと思えなくもない。

正直もう勘弁と思ってしまう日もあれば、悪く無いなと思う日もある。引退を願う気持ちもありながら、今更誰かに引き継ぐなんてのも、あまりピンとこないのよね。

ダーク・コーガインと戦った後は疲れもあって、毎回と言っていいほど「もう勘弁」としか思えないんだけど、こうして日常に戻ってみるとなんとなく吹っ切れてるし、また呼び出されたら何の躊躇も無く変身して駆けつけちゃうんだわ。

ピンクやホワイトは、ホントに辞めたいのかな?

会っても毎回討伐じゃあじっくり話す機会も無いから、思えば長い間、近況も本音もまともに聞いたことないわ。

なんでも分かってるつもりだったけど、毎日のように会って話して、一緒に泣いたり笑ったりしてたのって、中学の三年間だけだったんだよね……。



まだ肌寒いものの、吹く風が少し春めいてきた頃、ダーク・コーガイン討伐の招集がかかった。

前回からひと月足らず、こう詰めて発芽するのは、最近では珍しい。

今回は住宅街を離れて田畑が目立つ市の外れ、耕作放棄地になった荒れ地の隅だった。

そんな手つかずの場所でも、枯れた色の隙間に若い緑が芽吹いている。

人の背丈より少し大きい黒い影、上部に妖しく光る二つの赤い目。ホワイトの剣が煌めき、イエローの矢が敵を追い詰める。

ピンクのキックで弱らせ、最後は三人揃って、お約束のシャインで決めた。

敵は光に包まれて消える。後には何も、残らない。

「ふぅ、今日はアッサリ片付いたね」

ピンクが余裕の笑顔を見せると、

「前回からひと月足らずで発芽とは、最近にしては早かったですけれど」

ホワイトが敵の消えた後を見つめながら、つぶやくように言う。

「活性化してたら危険だし、しばらく警戒かな?」

首を捻るイエローに、ピンクが引き締めた。

「そうね。油断しないようするわ」

早春の昼下がり、ピンクはネット配信ドラマ視聴の途中だった。

ホワイトは会議前で資料の点検中、イエローはランチタイム終了で皿洗いしているところ。

早く片付いた事もあって、今日は体力もそれほど削がれていないし、暇では無かったが一分一秒を争うほど余裕のない状態でも無かった。

そのせいか、いつもは愚痴っぽくその場を去るのに、今はなんだか雰囲気が違う。

「ねえ、今度うちの食堂に来ない?一緒にゴハン食べようよ」

ずっと変身した姿でしか会っていないし、たまにはダーク・コーガイン抜きで話もしたい。

そう思っていたのはイエローだけでは無かったので、来月あたりで調整しようと決めて、それぞれ職場や自宅に帰還した。

その日のうちに連絡を取り合い、季節がらランチの後はお花見散歩もいいわねと、あっさり日にちが決まってしまった。

あまりにスピーディな展開に拍子抜けする反面、毎日それぞれが日々に追われているものの、その気になりさえすれば簡単な事だったのかもしれない。


約束の日は晴れて暖かく、ちょうど桜も見ごろと花粉さえ飛ばなければ、最高のコンディション。

お食事処「満月亭」は本日貸し切り、昼は常連さんの弁当配達のみで、夕方から通常営業の予定。

ビューティー・イエローこと美月は、部活のある娘を送り出し、母と準備を進める。

「桃花ちゃんに雪乃ちゃんなんて、まあ懐かしいねぇ。昔はうちの天ぷらを気に入ってくれてたけど、また食べてくれるかね」

母は嬉しそうに、野菜や魚介の下ごしらえをする。山盛りになっていくバットを見ながら、

「それ、夜の営業分よね?」

思わず、確認してしまう。昔の好物が今も同じかは分からないし、何よりアラフィフ女子に揚げ物祭はヘヴィ過ぎる。

「あら、あんたたち人知れず頑張ってるんだから、心配しないで全部食べてもいいんだよ?」

あっはっはと大笑いされても、大食い女王決定戦じゃないんだから、材料を無駄にはしないでね?

何故かテンション高い母を横目にディアが準備した弁当を仕上げて、

「私たちも、そんな若くないから」

言い残して、弁当の配達に出る。近所ばかりだから、二人が来るまでには戻れるだろう。

いそいで車に積み込み、出発しようとしたところに、キャリアウーマン風の女性が見えた。

スマホを片手に店に近づき、画面を見ながら何か確認しているよう。

ふと目が合って、

「すみません、こちら『満月亭』さんですよね?」

声をかけられたので、

「はい。でも今日は貸し切りで……って、もしかして雪乃?」

一瞬、固まる二人。お互いに見つめ合う事数秒、見慣れた少女と重なる印象、一足飛びに過ぎ去った三十年の現実を前に、思わず抱き合って爆笑。

積もる話で今すぐ盛り上がりたい衝動を抑え、雪乃を店内に案内して美月は配達に出る。

得意先を回って帰ると、到着済みの桃花と一緒に迎えられた。

普段はあり得ないテンションに爆上がりしてしまうのは、中二病仲間だからだろうか。

堰を切ったように暴露される赤裸々な互いの半生に、同調したり突っ込んだり羨んだりと、忙しく目まぐるしく展開する話は、終わりが見えない。

のんびりランチの予定が、天ぷらをつまみながらのマシンガトークと化し、美月の母は、そんな三人を微笑ましく見守りながら、次々と天ぷらを揚げていた。

出来立てのアツアツをテーブルに運んできた、いつもの割烹着姿のディアを見て、雪乃と桃花は可愛いと絶賛しつつ、ズルイ!と怒り出す。

魔法戦士オープンな空間が、二人には新鮮で想像以上に居心地がよかったらしく、どうせならと二人のマスコットたちに逆招集をかける始末。

これまた久しぶりの再会に、驚きを隠せなかったのが変貌し過ぎのでっぷりウサギ、ハクトだった。

その指摘にハクトは腹肉を鷲掴みながら、雪乃との晩酌一部始終を語りだす。

こちらもけっこうなストレスを抱えていたので、酒も入っていないのに、秘めていた想いがダダ洩れにあふれ出て止まらない。

桃花の相棒、ピンクの鳥のフラウも、この雰囲気に乗じて、過去の不安や不満をぶちまけた。

現状はそれほど不満でもないので、「今更だけど」を付け足しながらの発言だったけれど、聞けば長年積もりに積もっていたのだ。


「いいよね~、美月ん家」

言いたいことが一周して、落ち着いたように桃花が言った。

「ホント、仕事終わりに通っちゃいそう」

雪乃がスッキリとした顔で笑う。

「あっはっは、おいでおいで。なんなら二階に特別席を用意するよ」

美月の母が、デザートの白玉団子を持ってきてくれた。

「なんでも続けるのは大変だ。応援させとくれ!」

バチンと音が鳴りそうなウインクをして、一緒に席に着く。

「ディアも掃除は後でやろう。あんたたちも、おいで」

ハクトにフラウも揃ったテーブルに、美月が人数分のお茶を配る。

長年のうちに溜め込んだものは、消化しているつもりで無くなった訳じゃない。

後継者が課題だったけれど、それぞれの話を総合すると、積極的に辞めたいという意見は皆無で、むしろ続けるためにどうあるべきか?が中盤以降の課題だった。

終わりが見えればまだ良いのだが、肝心の種の残数が分からない。

やはり発芽してダーク・コーガインになってから討伐するだけではなく、種自体を見付けて排除するのが効率的だ。

「やっぱり、種探査機の開発を急ぐよ」

ハクトがしおらしく言うと、

「出来たら便利だけど、私の勘ではもう残り少ないと見た!」

フラウが自信たっぷりに、ふんぞり返る。

「ママも協力してくれるから、大丈夫よ。疲れたら天ぷら食べて、また頑張ろ?」

満開の桜も負けそうな、こぼれんばかりの笑顔のディア。

「そりゃあ、いいね。いつでも旬野菜で提供するよ」

上機嫌なのは、美月の母。当事者以外で盛り上がる様は、励まされているのか上手く丸め込まれているのか判断は難しい。

「なんだか、良いように乗せられているのかしら?私たち」

雪乃が三匹と一人をジト目で見据えながら言うと、

「そうね、後任探しとか卒業って雰囲気じゃないよね」

桃花が盛大なため息をつく。

「ボランティアっぽいけど、今となってはギブ・アンド・テイクじゃない?」

美月の意見に、

「確かに、保険より安心かもしれません」

「健康は買えないしね」

二人も賛同と取って差し支え無さそうだ。


楽しくて有意義な時間を過ごし、ハクトとフラウは悪目立ちを避けて帰還魔法でそれぞれ先に帰宅したが、美月は二人を送るために出て、三人で少し歩いてみる。

しばらく行くと、懐かしい三人で通った中学校。校庭の桜も満開で、風が吹くと花吹雪が舞う。

「あの時も、こんな風に花吹雪でしたね」

「そうそう、もう二度と会えないと思って号泣したわよ」

「あはは。それがもう三十年、ここまできたら人生の副業よね」

「言えてますね」

「確かに!」

大通りに出ると、すぐにバス停がある。

「駅まで車で送らなくて、良かった?」

美月が問うと、

「大丈夫よ。お店の準備もあるでしょ?」

「私も駅前で買い物して、帰りはパパに迎えに来てもらうわ」

バスを待つ少しの時間も、他愛のない会話が楽しかった。次の具体的な約束はしていないけれど、すぐに会えるだろうなと確信している。

乗り込む二人を見送って、美月は店に帰っていった。


それぞれの、想いはひとつ。

まだまだ、魔法戦士はやめられない。

最後まで読んでいただき、ありがとうございました。

少女戦士ですが、実際はおばちゃん三人のお話でした。

詐欺だと思われた方、熟女の魅力が伝わりましたでしょうか?


1か月に1作は投稿していきたいと考えていますので、よろしければまた、お付き合い下さいませ。

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